グンマー2100~群像の精器(マギウス)

奈楼小雪

第116話 米国とグンマー校 前編


 ――2100年5月5日09時00分 ロナルド・レーガン・ワシントン国際空港
 バージア州アーリントン、ロナルド・レーガン大統領に因んだ名称になっている。 国際と名前はついているが、短中距離専用の国内とカナダ向けの空港である。
 「おはようージョニー」
 「おはようケニー」
 互いに朝の挨拶を交わすのは、管制塔の男達。 コーヒーにドーナツを持ちながら何時もの様に椅子に座る。 座った席から見えるのは、多数のレーダが送ってくる映像。 映像には空を飛んでいる旅客機や戦闘機、ビーストが点で示されている。
 「ジョニー、今日は引き継ぎで何かあったけ?」
 「ああ、今日はミャンマーから飛行機が一機くるらしいぞ!」
 「ミャンマー?何でまた此処に来るんだい?国際線ならダレスに行くべきだろう」
 アジアや日本を含め世界中の国際便がワシントン・ダレス国際空港に着陸する。 ケニーからしてみれば、それが理解出来ない様だ。
 「ジョニー、飛行フライトプランは、どうなっている?」
 「確か、日本のミャンマーから飛んで北極ルートで来るらしいぞ」
 そう言いながら、ジョニーはケニーに飛行フライトプランの書類を渡す。 ケニーはジョニーの言葉に首を傾げながら書類を眺める。 パラパラと書類を捲った後、両手をプルプルと震わせる。
 「どうしたケニー?飛行フライトプランに問題でも?」
 「ジョニー!!ミャンマーじゃなくてグンマーじゃないか!!」
 「同じアジアの国だろ?対して変わらんだろ?」
 「違うぞジョニー、前に大統領が言われた【人外魔境アウトオブヒューマン】の地域だぞ」
 ケニーに言われたジョニーは慌てて書類を見直す。 よく見るとグンマーと書かれていた。 米国ではグンマーより人外魔境アウトオブヒューマンの方が馴染んでいる。 これは議会公聴会で、グンマーがどの様な物かと聞かれた際に大統領がいった言葉である。
 当時の日本とグンマー校、首都圏校、南関東校の分裂が議会では良く理解されていなかった。 そこで議員が大統領に質問をした事がある。
 議員  「大統領、日本は内戦後に四カ国に分かれたのですか?」 大統領 「イヤ、日本である事には変わりが無い」 議員  「では、日本のトップは首相だけですか?」 大統領 「イヤ、違う。グンマー校と首都圏校はその地域のトップである」 議員  「日本国内には首相の他にトップがいるというのですか?」 大統領 「グンマー校と首都圏校は日本でありながら日本で無い」 議員  「何を言っているのですか?大統領閣下?」 大統領 「私も良く分からないが、人外魔境アウトオブヒューマン】の地域だと思ってほしい」 議員  「つまり、人とは次元が違う生き物が住む地域という事ですか?」 大統領 「そうだが、ヴァチカンは彼等を人間として祝福している」 議員  「おぅ……閣下の混乱もわかりますが、極東地域のバランスは我が国の国益に……」
 この時の事で、米国民はようやくグンマーと首都圏という言葉を知ったのである。
 「分かったよ、ケニー!でグンマーは何処に居るんだい?」
 「ジョニー!予定だと完璧なステレスで来る。管制塔からの連絡をして欲しいらしいぞ」
 「書いてあったっけ?」
 「ああ、書いて有る米国時間午前5時に【コードGNM48】を打ち込こめば良いそうだ」
 「忘れてた!ケニー入力したぞ!」
 ジョニーが打ち込むと画面にピコンと表示がされる。 表示がされた場所は、バージニア州上空。 周りには多数の旅客機で表示されている。 同時に周りの旅客機から報告が上がってくる。
 「こちらアメリカエア112便、突然レーダーに映ったぞ」 「こちら空軍所属、レーダーに突然機体が映ったが姿が見えない」 「オリエント空港113便、レーダーに突然機体が映ったが姿が見えない」
 バンバンっと報告が上がってくる。 ケニーは呆れた顔をしながら、マイクを付けて全周波数で連絡を入れる。
 「こちらナショナル空港、GNM48応答せよ」
 『こちらGNM48、待っていました』
 画面が展開され、猫耳少女が姿を見せる。 その姿に驚きながらもケニーは通話を始める。
 「GNM48、姿が見えない様だ」
 『現在、本機は物理的にもステレスです』
 「光学迷彩かい?危険なので解除して貰えるかな?」
 『機体は秘密事項ですが、解除はします』
 「ありがとう、現在滑走路は空いている。A滑走路へどうぞ」
 『了解しました』
 会話を終えるとケニーは書類を再び確認する。 GNM48機と連絡が取れた場合と書いてあり、シールで覆われていた。 ピリピリとシールを剥がすと、国務省に連絡を入れると書いて有った ケニーが急いで連絡を入れている間に、ジョニーが双眼鏡で滑走路を見る。
 「ケニー凄いぞ見てみろ」
 思わず電話を取り落としそうになる。 針の様な細い胴体、大型のデルタ翼、高出力の精神伝導メンタルトランスエンジン4機搭載が光る。 その機体は着陸時には、独特の長い鼻が曲がる。 長い鼻は金色に塗られ、機体全体は黒で淵が金で塗られている。
 「コンコルド……イヤ、ダークガルーダだな」
 この機体は、97年前の2003年11月26日に退役したコンコルドをベースにした機体である。 名前は……航空科の生徒の間ではダークコンドルと呼ばれている。
 群馬校は大型の輸送機An-225ムリーヤがある。  ダークコンドルは要人や重要物資の輸送に使われている。 最高速度は、精神伝導メンタルトランスエンジン4機を使ったマッハ5の極超音速。 機体の素材は、ビーストから得た精神鋼アイアンメンタルで【熱の壁の問題】を克服した。 更に環境団体が五月蝿い騒音は、消音の機能が付いた外装武器ペルソナを使っている。
 『GNM48無事に着陸しました、駐機場の指示を請う』
 「Bボラボー滑走路から2番駐機場に入ってくれ」
 『了解しました』
 猫耳少女が敬礼をすると映像が切れ機体が指示された駐機場へ向かう。 空港ラウンジでは、突如として現れた異色の機体に人々がスマホを向ける。
 「はぁージョニー!ちゃんと仕事をしてくれ怒られるのは俺なんだ」
 「おっと俺の仕事時間は、ちょうど終わった所だ!後は任せた」
 流石はアメリカン謝らない、そして余計な仕事をしない。 ジョニーは手を振りながら、ホップステップで管制塔から姿を消す。
 「そんなんだから、何時までたっても上に行けないんだ」
 溜息を吐きながらケニーは自分の仕事を始めた。

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