グンマー2100~群像の精器(マギウス)

奈楼小雪

第110話 スコーク77


 ――2100年4月28日18時14分 相模湾上空
 18時24分35秒、航空史が繰り返される。
 ドーンっという衝撃がエアバスA380を震わせる。 ビー、ビー、ビーっと警報音が突如鳴り出す。
 「一体何があった?」
 「機長!後部尾翼付近からエラー表示です」
 副機長は、スクリーンに表示されたエラー画面を指差す。 機体の後部、尾翼の当たりが赤い表示にされている。
 「後部、映像!」
 「後部、映像チェック」
 機体の上部に付けられたカメラから映像がモニターに映し出される。 車の後部リアミラーにサイドミラーは全体を見るのに役立っている。 では、何故に飛行機にはミラーが無いのだろう?
 多くの飛行機事故でも、機体全体を見ないばかりに墜落した事例が多くある。 新型のエアバスA380では、前後左右にカメラを付けている。
 カメラから映し出されたのは、完全に破壊された尾翼。
 「なんて事だ!油圧系、チェック」
 「機長、油圧系は異常は有りませんが操縦が難しいです」
 最近の機体は機体異常時に、油圧系の一部が壊れると自動的に別回路に切り替える。 昔の機体は、機体が破損すると油圧系を失い墜落する事が多々あった。 だが、現在のエアバスA380はその様な事は無い
 「分かった、スコーク77を発動する」
 スコーク77というのは、民間機が何らかの要撃の対象とされた場合の緊急コール。 発信した民間航空機は、自衛隊機の指示・誘導に従う事を定められている。
 「了解しました!機、機長!」
 「どうした?」
 「空から男が!」
 「非常時に何を……ッツ」
 機長は目を疑った。 それもそうだ、機体の上部に男が現れたのだ。 さらに、信じられない事にもう一人、少年が機体に飛び降りたのだ。
 「一体何なんだ!こいつらは」
 ガタンっと機体が揺れ、機長と副機長は操縦桿を握る。 再び、画面を見たときは更なる驚きがモニターに映る。
 「機長!男が少女に変わりました?」
 「酸欠か?気圧は異常無し、んんん?」
 思わず機長は首を傾げた。 先程までいた男の姿が消え、ツインテールの少女が居たのだ。 しかも、少女は銃を構えている。 銃が光り、少女は機体から溢れ落ちるにして落ちていった。
 「少女が空に落ちて行ったぞ」
 モニターには、少年のみが立っている。
 「機、機長!!油圧系に異常!!」
 「なんだと!!」
 ブー、ブーブーっと油圧系の異常を知らせる警報音が鳴る。
 「管制塔!こちらJANAL123便、機体に異常発生!スコーク77」
 『こちら管制塔!スコーク77了解した。機体のトラブルか?』
 「そうだ!尾翼が破損し、油圧系にも異常有り」
 『羽田へ帰還を望むか?』
 「無理だ、機体を回頭させるのが難しい、NEO埼玉基地は着陸可能か?」
 『管制塔、米軍の管理地域だが応援を要請する』
 「良い返事を期待している」
 通信を終えながら、バランスを崩した機体を機長と副機長は立て直す。 何故に油圧系が消失したのか?
 それは、少女が放った銃弾の行方を追い掛ける事から始めよう。 少女が放った銃弾は、普通の弾では無くメンタルギアである。 その弾は機体の内部を通り、油圧系や機会を破壊しながらある人物へ向かった。 その人物はというと……。
 「おっと揺れたかね?」
 「博士、後ろから衝撃がしましたが、大丈夫でしょうか?」
 「分からんよ、儂の専門は生物工学だよ」
 「確かにそうですね」
 「まぁ、気楽に行こうjy……」
 パシュッと音と共に、その人物の頭が弾け飛ぶ。 そう、小保方春男である。 頭が吹き飛び、首からは血が吹き出す。
 「い、いったい何が起きたナリ……」
 ペタンっと床に腰を落とすと頭を失った躰が伸し掛かる。 大量の血と匂いにショックで、一般人男性は倒れる。 男性からは、アンモニアと鼻を付く臭い匂いが発生した。 どうやら、失禁と脱糞をした様で有る。 周りの護衛官達も騒ぎ出す。
 一方、弾を放った少女はというと……。
 「GPU本部へ、GGは任務完了、これより帰投します」
 「こちらGPU本部、GGへ、草から報告。ターゲットの死亡を確認。帰投を許可します」
 高度24,000ft(7200m)から自由降下しながら報告を終える。 暫くして、高度10,000ft(3000m)でランドセル型飛行装置を駆動させグンマーへ飛んでいった。 残された彼にはこれから一世一代のイベントが残された。

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