グンマー2100~群像の精器(マギウス)

奈楼小雪

第106話 羽田空港狂騒曲 (12)★


 ――2100年4月28日17時00分羽田空港
 空港内で暇そうにボッーとしていた先輩少年が、突如眼光鋭く周りを見渡す。 先程までとは違う先輩の変わり様に、鉄斎少年も驚く。
 「先輩どうしたのですか?」
 『何か、オカシイ』
 そう言いながら持っていたナイフを地面に差す。 暫く目を瞑った後に、目を開け口を開く。
 『鉄斎、地下1階だ!護衛対象が襲われている』
 「分かりました」
 『最短距離は、ここから飛び降りることだ』
 2人は二階のテラスから拭きの抜けに飛び込む。 それを見ていた複数の観光客達が、悲鳴を上げる。 2人はそんな事をお構いなしに地下1階の大地に降り立つ。
 同時に【STAFF ONLY】が開き、扉から覆面の男達と老人が姿を見せる。 覆面の男達は、上から降りて来た2人に銃を向ける。
 『安心しろ!俺達は味方だ援護する』
 先輩少年が大声を上げる。 銃を向けていた男達は、警戒しながら2人に近づく。 扉の奥では、銃撃音が激しく響いている。
 「貴様は、首都圏校の警備隊か?」
 『ああ、そうだ。早く護衛対象を連れて逃げろ、此処は俺たちが何とかする』
 「分かった、感謝する」
 男達は老人を連れて、何処かに走っていく。 見送った後、銃撃音が止んだ。 先輩少年は、多数のナイフを宙に展開させると空いた扉に飛んで行く。 暫くして、ドーンダーンっと音がし煙が扉からモクモクと出て来て警報器が鳴り始める。
 「鉄斎!武器を構えろ、奴らがやってくる」
 『は、はい』
 鉄斎少年がメンタルギアの刀を展開した時。 煙の中を歩く音がする。 足音からして、大人で無く子供の様である。
 煙の中から二つの影が姿を見せる。 何れも黒髪。 一人は、セーラ服を着た右目が蒼の美少女。 もう一人は、ブレザーを着て左目が朱い美男子。
 <a href="//19656.mitemin.net/i237411/" target="_blank"><img src="//19656.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i237411/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a> <a href="//19656.mitemin.net/i237412/" target="_blank"><img src="//19656.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i237412/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>
 何れも黒地に金の刺繍がされている。 胸元には、盾と剣、星と群馬校の紋章が有った。
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 『その紋章は!ゲーペーウー』
 「あら、誰かと思ったら」
 「殺し損ねた、人じゃないですかーー」
 先輩少年と少年少女達が向きあう。 どうやら、知り合いらしい。
 「あらー更に放校処分になった鉄斎くんもいるねー」
 「中等部首席だったのにーねー残念ーー」
 少女は鉄斎少年の方に飛びかかり、鉄斎はメンタルギアの刀で受ける。 バチバチと少女の右手と刀の間で火花が散る。
 「だって君、ここで死ぬんだよ!」
 「ク、ッツ強い!何故、素手で取れる!」
 「私も中等部だけど、君と違って特殊分校だもんでね」
 「どういう事だ!」
 「それは、私達が強すぎるからだよ」
 空いている左手を鉄斎の方に向ける。 手元が光りだし、灰色の球体が姿を見せる。 手の平に収まったそれは、表面がボコボコとクレータの様に穴が空いている。
 「月の裏側ムーン・リバーシブル
 言葉を発すると球体が光り、突如として鉄斎少年の服が破れ肌から血が流れる。 まるで、刀で切られた様で有る。
 「なっつ!」
 「ねぇ、知っている?月の裏側はクレータでボコボコなんだよ?」
 月の裏側ムーン・リバーシブル、これは受けたダメージを変換する技である。 先程の右手で受けたダメージを力に変換したのである。
 「ただし、私も痛くない訳じゃないだけどね」
 血が吹き出し、片手で肩を抑える鉄斎の前で言う。 どうやら、少女の能力は痛みを伴う物らしい。
 「まったく、瑠奈るなちゃんは甘いんだから」
 「でも、太陽さんくんは厳しすぎだよ」
 「太陽が甘いなんて、北風と太陽じゃあるまいし」
 先輩少年と向き合っていた少年の右手には、光る球体がある。 禍々しく光るその球体は、太陽と言いたい所だが毒々しい紫をしている。
 「退屈な太陽アンニュイサン
 手から離れてると先輩少年と鉄斎少年の真上にその球体が止まる。 パチンっと弾ける様な音と共に、紫色の球体が二人を飲みこむ。 ゴウっと音とともに、紫色の閃光が走り2人は飲み込まれ床さえも消滅する。
 「やったの?」
 ガランと穴が空いた地下を少女は見つめる。
 「イヤ、不完全燃焼だ。アレには前に、使ったけどアイツは死ななった」
 「そうね、でも当分の間は動けないじゃないかな?」
 「そうだね、その間に僕達は狩りを継続しようね」
 言い合っていると、上から銃を持った黒服の男達が姿を見せる。 騒ぎを聞きつけて、やって来たようだ。
 「ねぇ、瑠奈ちゃん。アイツ等は派遣だよね?」
 「うん、そうだよ」
 「処する?処する?」
 「うん、処して良いと思うよ」
 二人が振り向くと同時に銃撃音が響く。
 ◆  ◆  ◆
 さて、鉄斎少年と先輩少年は何処に行ったのか? それとも、死体すら残さず消えてしまったのか?
 『痛ててt、アイツ等容赦無いな』
 2人は空港の屋上に移動していたのだ。 先輩少年の能力による物だろうか?
 『避雷針ひらいしんを使って正解だった』
 地面に刺さったナイフを抜き取るとパキット音を立て壊れる。 同時に、先輩少年は口から血を流す。
 『だが、2人分は負荷が重たかったか?』
 「先輩大丈夫ですか?」
 横で倒れていた賢治少年が血を吐く先輩少年に声を掛ける 血を手で拭いながら、先輩少年は立ち上がる。 眼下の空港ラウンジ付近は、煙が上がっている。
 空港内の彼方此方では、銃撃音が響いている。 先輩少年は拭った手で腕時計を眺める。 時間は17時50分を指している。
 滑走路には二機の機体がアイドリング状態で待っている。
 一機は、JANAL123便、最新機体A380で乗客数524名。 18:04分に羽田発で伊丹に向かう予定の機体。
 もう一機は、航空自衛隊所属のC2輸送機である。 ターボファンエンジンで双発、主翼は高翼配置、尾翼はT字タイプが特徴の機体。 こちらも18:04分に羽田発で伊丹に向かう予定の機体である。
 『なぁ、鉄斎?どっちが、本命だと思う?』
 「わかりませんよー」
 『まぁ、そうだろうが俺には分かる。所で、足は用意しておいたか?』
 「は、はい。倉庫内に置いて有ります…あんな物でよかったですか?」
 『まぁ、まだ使える物は使わないといけない』
 っと言いながら、倉庫の方へ躰を向けながらスマホで連絡をする。 倉庫内の壁が開き始め、中から複座の機体が姿を見せる。
 初飛行が1958年で、退役が1996年という100年前の機体。 名前をF-4 ファントムIIっという。

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