グンマー2100~群像の精器(マギウス)

奈楼小雪

第90話 如何にいます父母★


 ――2100年4月25日13時30分東京某所
 色素が薄い紫髪の少女が、目を閉じ風呂に入っている。 突如、ビクンと躰を動かしアメジスト色の瞳を開く。 少女の名前は、中居屋銃子なかいやじゅうこ
 『やはり、遠隔操縦弾ドローンバレットは躰に負荷が掛かりましたか』
 パックリと割れた両手足を見て呟く。 アッという間に、血で風呂が赤く染まる。
 「そうだよねー私もそう思うよ」
 映像で言うのは、ウサ耳少女。 赤茶色に紅い瞳、前橋宇佐美まえばしうさみである。 映像の向うでは、血の滴るレアステーキを食べている。
 『食事中でしたか?すみませんね』
 「イイエ、人間も動物も大して変わりませんから」
 パクリとフォークに差した肉を喰べる。 画面の隅には、大量の皿が積み重なっている。
 『随分食べていますね』
 「焼肉食べ放題だからねー、頭脳労働の私には必要なのよー」
 『頭脳労働ですか……』
 「因果関係ってホント、難しいのよね」
 ふっと宇佐美は、笑みを見せる。 そう言っている間に、2皿同時に火の中に投下する。
 「ちょ、宇佐美さんハシタナイですよ」
 「姫っちは、大胆さが足りないね」
 銀髪に赤い瞳の少女の声に宇佐美が反論する。。
 「じゃ、最後の任務も宜しくーー」
 「だれと話しているのじゃーー」
 宇佐美は、焼きあがった肉を取り笑顔で画面を切る。 切られる直前には、乙姫に羽交い絞めにされる宇佐美の姿が有った。
 『さて、上がりますか【収束弾】』
 右手にメンタルギアの銃を展開させる。 身体中の避けた肉体が、元に戻る。
 『この弾は、指定されたあらゆる物を収束させる事が可能、怪我で有っても』
 ジャキッと音を立て、猿轡と両手足を縛られた女性へ銃を向ける。 黒髪に黒い瞳、湯気で濡れた髪が妖艶ようえんな姿を見せる。
 『貴女は、私を捨てた。さらに、神に貞操を捧げた神父と繋がり子供を造った』
 「んーーーんーー」
 『貴女の娘だっけ?ちゃんと死んだわよ』
 スマホから映像を投影し見せる。 ナイフが刺さり、ズタズタにされた少女の死体が映る。
 「んーーーーーー」
 『うん、悲しいね辛いね。私も辛かったよお母さん』
 「ん?んんんんーー」
 髪と瞳の色は違うが、少女には女性の面影がある。 どうやら、この少女の母親だった様である。
 『だから、過去の精算●●●●●をしましょうか』
 「んんーーー」
 『私の今までの苦しみ、憎しみ、痛みをこの弾に詰めました』
 トリガーを引く。 タンっと軽い音と共に女性の中に弾が吸い込まれる。
 『では、私の歴史を体験して下さい』
 風呂場から出て、ガラス戸を締める。 洗面台の鏡に映るは、瞳から液体を流す少女の姿。
 <a href="//19656.mitemin.net/i236612/" target="_blank"><img src="//19656.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i236612/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>
 『私、藍野那姫子あいのなきこの人生は終わった』
 ガラス戸に血が吹き飛び、呻き声が響く。
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 『だけど私、中居屋銃子なかいやじゅうこの人生は始った』
 ガラス戸を開けると、両手脚が裂け虚ろな瞳の女性が風呂場の床に倒れていた。 猿轡は外れ口からは、【ごめんなさ】【ごめんなさい】と呟きが聞こえる。 男を惹きつける魔性的な女性の姿は無く、廃人となった女性がいた。
 『だから、お母さん。安心して逝ってね』
 女性の首がガクガクと頷く様に振られ、頭が吹き飛ぶ。 銃子は、頬に付いた血を指ですくい、唇に塗る。 小さい口に塗られた赤い口紅が、丹精な顔を引き立てる。
 『さて、私も準備しますか?模擬弾トレースバレット
 今度は自分の頭に銃を向け、銃を撃つ。 色素が薄い紫髪の少女の姿から、赤茶色に紅い瞳の少女に変わる。
 『ウサ耳少女の宇佐美先輩に変身完了!」
 ウサ耳少女は、銃を死体に向けて撃つ。 今度は巨大な火の弾が、放たれた。 アッという間に、風呂場が火に包まれる。
 ついでとばかりに、周りにも銃を向け火を放つ。 煙により、火災報知器が鳴り始める。
 『さて、次の仕事をしますか』
 炎に包まる家の中から、銃子は姿を消した。

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