グンマー2100~群像の精器(マギウス)

奈楼小雪

第61話 地獄の傀儡師 後編

  ザシュっと音がし、血が飛び散る。 アミーナイフが銃を構えた男の首に刺さったのだ。
 「はぁーやってられねーー」
 隊長は血染めで、染まった階段を眺める。 階段には、多数の兵士達が倒れている。 そして、彼は中央司令部の扉に立った。
 (どうやって、ダグラス副司令を操作した?)
 『何故、我々がクーデータを起こしたか知りたいですか?』
 「知りたいね、ッツ!」
 アーミーナイフを持ち声の主に向ける。
 いつの間にか、中央司令部の扉が開いていた。 其処には、スキンヘッドの男が銃を持ち座っていた。
 「ダグラス副司令……どうして」
 『そうだな?君は5年前の横須賀の悲劇を知っているか?』
 「旗艦バラックオバマと第七艦隊が、撃沈された事だろ?」
 『ああ、そうだ!私はあの時、艦長だった』
 ダグラスの口は、溢れる様に語る。
 『5年前のグンマー首席暗殺、あれは上の指示で行われた。  我が艦から特殊部隊が【海ほたる】に突入した。  作戦は失敗、我が艦隊はグンマー首席と応援部隊に撃滅された。  上は、全てを私の責任に押し付け、左遷させ海から離した。  だから、私は5年の歳月を兼ねて海へ戻る事にした』
 最後にこう宣言した。
 「どうやって、海に戻るんだ?」
 『まずは、グンマーを占領し私がグンマーを支配する』
 「おい、グンマーに海は無いぞ」
 暫くの沈黙の後、ダグラスは困惑の顔を浮かべる。
 『何故?グンマーを?海に戻りたいのに……何故だ』
 「ダグラス副司令、あんたは操られている」
 『私が、操られている訳が無い』
 ダンっと銃声がし、隊長が床に倒れる。 ダグラス副司令の持っている銃から煙が立つ。
 『こ、これは!』
 「そういう事だ!アンタの躰はアンタの物で無い」
 隊長は口と胸から血を流しながら言う。
 『馬鹿な!私が私が何かの間違いだ』
 そう言っている間に、銃口がダグラスの方を向く。 ダン、一発の銃音と共に脳漿が吹き飛び躰が大地に叩き付けられた。 銃が転がり隊長の元へ転がって来た。
 「いるんだろ?地獄の傀儡師ヘルマリオン
 躰を仰向けにしながら、隊長は声を振り絞る。
 カツン、カツンと足音がする。 人影が見えたのと同時に、隊長は銃を拾い撃つ。
 「やった……」
 隊長の言葉は、続かなかった。 彼の額に、穴が空いていたのだ。
 「首席ーーっつ此方が中央司令部の様です」
 「そっちだったか」
 「こっちは、全員潰したよー」
 2人の少女と1人の少年の声がする。
 「うわっつ、何が有ったの?」
 「分からないです。撃たれたので、返しました」
 「賢治首席ーこっちには、ダグラスさんが死んでる」
 乙姫は、顔は驚愕で染まっているスキンヘッドを見る。
 「この人が犯人か……犯人は自殺っ!なわけあるか!犯人はお前だ!」
 右手の大剣で、乙姫は中央司令部の室内をなぎ払う。 ゴゴゴっと音を立て、司令部の分厚い壁が崩落する。
 「わぁ、空綺麗」
 「賢治首席!どういうことかな?」
 「何が?」
 「アレだ!」
 乙姫が指差すのは、兎耳をピョコピョコを動かしている少女。 地獄の傀儡師ヘルマリオンこと前橋宇佐美まえばしうさみである。
 『首席閣下、私の遊戯プレゼンいかがでしたか?』
 「派手好きの君としては、以外に普通だったね」
 『あ、忘れていました。最後の仕上げをどうぞ』
 「させるとでも!」
 大剣を振りかざし、宇佐美に斬りかかる。 が、宇佐美の躰は糸で巻き上げられたかの様に空高く舞う。
 「卑怯な勝負しろ!!」
 『それでは、回収も終わったのでフィナーレ』
 ジッと嫌な音がし、銃子が頭を抑え膝を着く。 賢治と乙姫も不快な顔をする。
 「これが……」
 「対適合者トゥフィッター装置……」
 中央司令部を覆う様に、立方体のシールドが展開される。
 『それでは、皆さん。動けない所で大爆発』
 宇佐美は、空に引きずられる様にして消えていく。 同時に、ドン、ドンと脚元で爆発が起き3人と中央司令部を巻き込み下に落ちて行く。 2100年4月18日17時30分の事であった。 

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