グンマー2100~群像の精器(マギウス)

奈楼小雪

第56話 医務室にて


 銀髪の少女は、赤い瞳を開け周りを見渡す。
 「此処は……医務室」
 『乙姫首席、その通りだよ』
 「私は……っつ」
 乙姫は、自分の唇に左手で触る。
 『ウン、ディープキスして倒れた』
 「それ以上言うな」
 頬を赤く染め布団に顔を埋める。 彼女は、自分の服が病院服に変わっている事に気がつく。
 「まさか……私の服を変えたのは?」
 『銃子ちゃんだよーー』
 「AAカップで無く、AAAでした」
 色素が薄い紫色の髪を撫で、賢治の横に立つ銃子は言う。
 「適合者フィッターは……」
 『十代で、成長が止まる』
 乙姫は自分の胸を撫でて、絶望に染まる顔をする。
 「フフン、私は第二次成長期に入りました」
 銃子は、嬉しそうな笑みを浮かべる。 光彩を無くした乙姫を賢治は優しく撫でる。
 『別に胸が無くても、君の価値は変わらないだろう?』
 「賢治首席!ッツ」
 乙姫の瞳に光彩が戻り、嬉しそうな顔に変わる。
 「ちょろインですね」
 銃子は呟くが、乙姫は今は気にしていない。 そんな、ぽわぽわした雰囲気を乱される。 3人の優れた聴覚は、人が激しく移動する音を聞く。
 『一体何が有ったのかな?』
 賢治は病室のドアを開け、覗き込む。 ドタドタと人が走り、誰かを担架に乗せ移動させている。 躰のあちこちに、火傷の後が見られる。
 「誰だ?」
 乙姫が、賢治の後ろから抱きつきながら見る。 どうやら、怖い物見たさに付いて来たらしい。
 『国連事務総長、ダグ・ハマー』
 「本当?あの人、何しに来たんだろう?」
 『多分、この会議に合わせて来たら何かに巻き込まれのかな?』
 賢治は、スマホのニュース欄を確認する。 一般社会欄には、何も書かれていない。 グンマー校の専用掲示板には、ニュースが上がっていた。
 【米軍陸軍が、対空ミサイルを発射。GPU119に空軍機諸共破壊される】 【国連総長機がグンマー機GPU119とニアミス、国連機が炎上】
 綺麗な4K画質の映像が、展開されている。
 地上から2発のミサイルが発射、巨大な機体のGPU119が防御デイフェンス外装武器ペルソナを展開。 ミサイルが当たるが、何もダメージをうけていなかった。 同時に、迎撃げいげきで2機のF-35B戦闘機を撃墜。 パイロット達は、レザーで頭を貫かれ同時に機体は爆散。 地上の対空ミサイル装置は、ガトリングガンで兵士ごと穴あきチーズに変わる。
 国連総長の方は、グンマー機GPU119が滑走路に入った時に国連機が横から入って来た。 管制塔からの指示でグンマー機は、回避を行うが国連機はその儘侵入。 防御デイフェンス外装武器ペルソナを展開と同時に、国連機と右翼部を衝突。 GPU119は被害は無かったが、国連機は右翼部から合成石油が漏れ出し炎上。 滑走路に落ちながら、火を上げ大爆発を起こした。
 「相変わらず、グンマー校は派手だね」
 『乙姫首席、覗きは良くないですよ』
 「まぁ、まぁそう言うな。この映像をどうするのかな?」
 『世界中に、配信します』
 賢治は画面を操作し、とある許可を与える。
 「何をしたの?」
 『軍事的な物は、ランクSに評価されます。首席及び生徒会全員の許可が必要です』
 「っという事は、既に賢治首席以外は許可を出していた?」
 『ええ、全員が許可を出しています』
 この映像は、世界中の映像サイトに流され始めた。
 ある国では、米軍戦闘機の性能を見。 ある地域では、グンマー119機の性能を見る。 まぁ、それは良いとして重要なのは全世界が生の映像を見ると言う事。 マスメディアの都合だけで、意図的に編集されない映像を流す。
 『我々は、自分達の映像に責任を持って自由に放送します』
 「首都圏のマスメディアに、聞かせたいセリフだな」
 何時の時代でもマスメディアは、国民へ情報を流す。 しかも、無責任に流す。 そして、世論という流れを創り反対する物を悪と断定し叩く。
 メディアは、正義の味方。 正義に仇なす者は悪。
 悪にされたくなければ、広告費お布施を払えと脅す。 それが、メディアが持つ巨悪で屑な手段。
 『グンマー校には、G新聞部ジ―メディア部と群馬現代視聴覚部ジ―アニメが有る』
 「グンマーには、新聞者もテレビ局も無いもんな」
 『無能で屑で拝金主義なテレビや新聞共は、生徒こどもに負けるのさ』
 「確かに、グンマーの新聞部と映像部は情報を解説するだけ」
 『その通り、スポンサーが無い自由な集団』
 「ある意味、グンマーにとっても諸刃のつるぎ
 『だからこそ、面白い。グンマーを良くする必要がある』
 グンマーの新聞部と映像部は、基本無報酬。 彼等は、流れてくる映像や情報を解説するのが仕事。 スクープとかは無い、ただ送られてくる情報を解説する。 広く、深く、伝えるのが、彼等の仕事。
 報酬は、ネットの論説で賄っている。 彼等の歯に着せぬ論説は、世界中から購読者を増やしている。
 『10年間も首席をやっていると独裁と言われる』
 「だけど、言いたい事を言わせている独裁者は居ない」
 『反論の論説と大漢民国との関係を書かれ、夕日新聞が発狂してたね』
 夕日新聞とは、旭日旗の位置を左右反対にした新聞社である。 特技は、ブーメランでスポンサーは特定アジアの国々である。
 『さて、もう少し寝たらどうかな?』
 「そうする、なっつ」
 賢治は乙姫をお姫様抱っこし、ベッドに連れて行く。 布団の中にいれ、毛布を被せる。
 『お休み、僕は例の件の所に行ってくる』
 「わかった、いってらっしゃい」
 ライトをパチっと消され、乙姫は目を閉じる。 賢治は、目的の場所に向かった。

「グンマー2100~群像の精器(マギウス)」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「SF」の人気作品

コメント

コメントを書く