10年間修行した反動で好き勝手するけど何か問題ある?

慈桜

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秋定が命を賭して世界を隔離してくれたと言うが、恐らく間に合わなかったのだろう。
なんら変わる事は無く崩壊の波動は神域に差し掛かろうとしている。
恐らく微々たる時間稼ぎ程度にしかならなかったか、もしくら間に合わなかったのか。
詳しい事はわからないが、このままでは俺たちもゲームオーバーだ。
だが、恐らくだが答えは前者だろう。秋定と帝釈天が隔離した世界の壁のおかげで多少の時間稼ぎは出来たはずだ。
何故なら界理術の発動まで後少しだからだ。
対価としてエリミガリアを中心とするベルト状の世界その物を賭けた。
そしてその術式が後少しの所まで来ていると言う事は、つまりそういうことだろう。
そして、遂に界理術の発動条件を満たした。
これで、俺の予測が正しければ…いや、そうなって貰わねば困る。
目に見える範囲で森が地が消失して行く。
時間が無い………。



「師匠!!!!!

助けてぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

バッチシのタイミングで時が止まった。
直後に視界は赤黒く染まり、見慣れたあの人…いや、あの骸骨が浮かんでいた。

「カタカタカタこれはちょっとやらかしたねぇ?愛しいリブラよ」
「師匠…………」
やはり来てくれたのだ。エリミガリアを中心とするベルト状に広がる世界を対価に、英霊島の存在を現実の物にする術式を組んだのだ。
これには脳みそに腫瘍が出来るんじゃないかってぐらい難しい仕掛けだらけだったし、成功する確率はかなり低いと思っていたが、ここに師匠がいると言う事は成功したのだろう。
「止めれますか?師匠」
「カタカタカタおそらく、だけどリブラに返して貰わなければいけないね」
「眼ですか?」
「そうだね、本当のリブラの眼が星持ちかどうかはわからないけどね、まぁ、私が生きてたら返して上げますよ」
返事をしていないのにも関わらず、直後激痛と共に世界が黒く染まった。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
見えない…何も見えない…。
俺はこの先こんな世界で生きていくのか?
嫌だ。
嫌に決まってる。
「主君!!!!」
カルマの声が響くと同時に時が動き始めたのを感じた。
だが何も見えない。
身体から制御出来なくなった魔素が大量に流れ出し気を確かに保つ事が出来ぬままに俺は意識を手放した。

♦♡♠♧

「んっ」
「主君!!気がつきましたか??」
眼を開くとそこにはカルマの姿があった。
「あれ?眼が見えるぞ?」
「カタカタカタおめでとうリブラ」
身体を起こすと集落の自室にカルマとライだけでは無く師匠と英霊島のみんな親父に母ちゃん、グリムさんにチャリクスさん、バグジーさんとジェルスさん、マミさんにエレミア…そしてカイリさんまでいる。
「これでやっと死ねますよリブラ」
「ここは?英霊島?でも集落の家だし…みんなは?」
俺は気付いた、ここに星持ち達が居ない事を。
「みんなとは?」
師匠がカタカタカタと笑うと俺は思わず飛び上がり窓の外を見た。
そこはいつもとなんら変わらない集落で零戦と竜が追いかけっこをしながら飛び回る姿と、枯れたはずの海で人魚と共に貝の投げ合いをする一星達の姿。
俺はそれを見て心底安心した。
これで夢オチとかだったら同じ兵器を作って世界共々心中してくれようかと思ったぐらいだ。
そこで改めて振り向くと師匠がカタカタカタと音を立てながらゆっくりと九芒星の眼を持つ青年へと姿を変えて行った。
「師匠その姿は?」
「崩壊した世界の再生に力のほとんどを使ったのだよ、ここにいるみんなとリブラへの謝罪の為にね」
「謝罪?どういう事ですか?」
師匠の生身の姿は俺が大人になったらなるであろう姿であった。それぐらいにそっくりだったのだ。いや、そんな事ないぞ?なんでそっくりだって感じたんだ?
「私は自身の死を求めるあまりに皆を傷つけたからね、微々たる償いにしかならないのだろうけど」
こんなの師匠らしくないぞ?いきなりなんだってんだ?
あんな狂った世界崩壊止めてしまえるような奴に何しても勝てないだろう。やっと死ねるとかいってるけど。
「鏡を見てごらんリブラ」
師匠に差し出された鏡を見て驚愕した。
「え?誰だこれ」
鏡に写ったのは金髪碧眼の少年、どちらかと言えば父クラウドに似ている少年だ。
「主君?」
「いつものリブラじゃねぇか!何が言いてぇんだよアイザック!」
親父の怒号を流し目に俺に向き直る師匠アイザックは本来の俺の姿でニコッと笑うと衝撃の事実を漏らした。
「リブラ、あなたは私の眼で世界を見ていたから自分の本当の姿を知らなかったんだよ」
「じゃあ、この姿が俺って事はこの眼は」
師匠はうんと頷くと言葉を続ける。
開いて・・・・ごらん」
その言葉に頷きいつも通りに眼に魔力を通わせる。
出来た…出来たけど、なんだこれ。
すげーしっくりくる。
鏡で自分の眼を見て見ると12の角を持つ眼が開かれていた。
十二芒星ドデカグラム…かつて私がこの世界を創造した頃と同じ瞳だ。その力があれば私を殺す事は容易いはずだよ、さぁ」
そう言って師匠は九芒星を開眼する。それに反応するように俺の眼は師匠の力を奪おうと吸収を始める。
「やめろ、やめてくれ!俺は師匠には勝てない!!嫌だ」
「良いんだよリブラ…私はこれ以上生きていたくない」
力を使い果たしたと言う割りに気が狂いそうな程の魔素が身体に流れ込み、果ては師匠は白いローブだけを残し世界から消えた。
『ありがとうリブラ。そして覚えているかな…………?』
師匠の声が頭の中に響き、周りを見渡すと親父達が少し泣きそうになっている。
「やっと消えてくれたぜ!あのクソ野郎」
「ほんとね…散々な目に合わされたけど3000年の付き合いになってくると寂しいわ」
「儂はグリムと散々脅され続けたから清々するがな。」
「まったくだ!あぁまったくだ!あんな魔力制御の下手くそのだだ漏れな奴に会わなくて済むと思うとよぅ…清々するぜ…」
「俺はなんだかんだで寂しいけどな!でもあいつ骨だから俺が何作っても食わねぇからな!ははは…」
「私は彼の前では常に嘔吐する生き恥を晒していたからな、遂には克服できなかったが…」
「何回も殺してやるって思ったけど…無理だとわかっていたからね…これで精霊達も怖がらずにすむよ」
「うわぁぁん!アイザックぅぅぅ」
みんな思い思いに別れの言葉を残しながら目尻に涙を貯めていた。
そしてカイリさんが静かに話す。
「彼は先日私の元にやってきてこう言いました。『私のワガママで長引いたが3000年前の続きを始めてくれ』と、私は彼を許そうと思う。ですが彼はこんな物を渡して来ました。」
カイリが持っているのは小さな小箱。
「もし、私が死んでそれでも皆の心が晴れていなければこれを使って欲しいと、私の記憶を消す為の魔道具だと言っていました。」
それは…駄目だろう。
満場一致でそんなものはいらないと言う意見になった。
「もし、使わないのであれば箱を開けずにリブラにこの言葉を言わせて欲しいと言っていました……」
そしてその言葉をカイリさんに耳打ちされると俺はうんと頷いた。

「親父、母ちゃん、ジェルスさん、チャリクス爺、グリムさん、バグジーさん、マミさん、エレミア、そしてカイリさん」

みんなに向き直り一言。


「ただいまっ!」


その言葉と同時に箱が変色し、プレゼントボックスのような物に変わると突如箱が開く。
そこから閉じ込められた魔素が師匠の形を型どりカタカタカタカタと笑う。
『これを見てると言う事は私を許しやがりましたね!馬鹿どもが!!そんなお人好しだとまた騙されますよ?私のような最強の魔法使いにね!そして馬鹿どもはこれだから困る!リブラを愛してる愛してると言いながら今日が何の日か忘れてしまっている!やはり3000年も生きると頭がおかしくなるのだろうなぁ!おっといけない地が出てしまった……仕方が無いから私が一番に伝えましょう!リブラ!!十一歳の誕生日おめでとう!!そしてみんな…今までありがとう……』
そう、言い残して師匠のメッセージが消えるとみんなはボロボロと泣き始めた。


これ、全部ばれたら荒れるぞぉ。











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