10年間修行した反動で好き勝手するけど何か問題ある?

慈桜

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 「おらぁ!!びっと気合いれてけやおらぁ!!」
「もうダメ。もうだめだよ。あるじぃ」
 ふん、俺が本気を出せばこうなる事は目に見えていたはずだ。 眠れる獅子を起こしたらこうなる事を覚えてもらわにゃならん。 何をしてるかって? そんなもん、山削りと瓦礫の回収に決まっている。 この鬼のボケ共は掃除終わったなんて言いながら、グチャグチャにしただけだった。 でも逆に都合が良かった。 これらを一つにまとめて、俺が新しく造った魔導具にポンポン食わせる事で外壁の建造は大幅に進む。
「変換、変換、変換と。おらぁ!!まだまだ足りんぞおらぁ!!!穴掘って土持ってこいよオラぁ!!」
「あるじぃ…ちょっと休もうよ…」
「イーシェン、ちょうど良かった。お前ひとっ飛びしてあそこの岩山崩して持ってこい。」
「そんなぁ!!殺生なぁぁ!!」
「じゃあ、死ぬか?」
「っ!!大人気ないのはんたーい!!」
 イーシェンは空に飛び立って行く。 ちゃっちゃとしろよ。 コッチは鮫狩りに行かねばならん。 俺自らが動くと言う事は地獄を覚悟しろと言う事を叩き込まねばならん。 俺はあの島の10年で人生の全てと言っても過言では無いぐらいに『頑張る』を使いきった。 その俺を頑張らせようとしちゃってくれてるんだから戦争の凄さが身に染みる。
「ほら……あるじぃ、ぐっちゃぐちゃに潰して全部指輪に入れて来たよ………」
「ご苦労さん。じゃあもう一回戻って全部土取って来い。」
「もう………勘弁して……」
「そうか、疲れたか。じゃあ俺が優しく魔法で送ってやる。」
「だめ!!すんません!!頑張ってきます!!!」
 翌日。
 集落総動員の大群で行った瓦礫集めやら穴掘りやらで、十分対価は集まった。
「変換、変換、変換と…。十分かな?」
 俺は大量の岩と土と瓦礫と石ころをこれでもかと手元のゲームボーイのような魔導具に詰め込んだ。
 錬金術の対価交換と物質召喚を取り込んだ魔導具だ。
「よぉーし。その白線に沿って渡した水銀まいてってー!!」
 ゴブリンも混ぜこぜに約3万の大軍で水銀を散布して行く。 この水銀は物質召喚用の媒介だ。
「さぁ、はじめますか。」
 ゲームボーイもどきを起動させると水銀が輝き始める。 次第にその輝きが立体映像の様に壁を作り始める。
「いっきまーす。ティーリティティーリティティーリティティーリティティーリティティーティティティーティーティリーリー」
 ふはははははは!!!硬質な岩のブロックに変換した様々な形のブロックを操作して寸分違いの無い完璧な壁を演出するぅ!
「うわぁぁ!!あるじぃ!!やらしてよ!それやらしてよ!!」
「だまれイーシェン!!これは長年の慣れが必要なのだ!!」
 順調にテトリ○を続け横10メートル高さ30メートルの要塞の如き重厚な外壁を積み立てて行く。
「なぁ?あるじぃ。あれ倒れねーの??」
「あぁ、絶対に倒れない。初めから此処に存在していた物として固定しているからな。簡単に言えば迷宮でお前らがどんな事をしても壁はすぐ修復されるだろ?」
「あぁ、確かに床をぶち抜こうって話しになったけどできなかったな。」
「難しい話しは差っ引いて、これもそういう仕掛けだ。俺が退けない限りは未来永劫存在し続けるだろう。」
 それからもひたすら作業を進め堂々たる外壁が完成する。
「どんなもんじゃい!!」
「すげぇー!!!!でもこれじゃあ出入りも見張りも出来ないんじゃ?」
「ナメんなよ?俺が造ったもんは俺がチューニング出来るに決まってんだろ。見た目が扉でも、同じ硬度を持った扉も作れるし、当然硬度を変えぬままに中を居住区域にもできるし、その分で階段を取り付けたり屋上に柵や防御壁なんかも意のままだ。しかもイメージを固めて…こうやって叩き込むだけでな!!」
 一気にただの巨大な石壁が、屈強な砦に様変わりしていく。
「あるじすげー!!!なんで今までやんなかったの?カルマ様とかが必死で家立ててる意味ないじゃん!!」
「そんなもん一つしかないだろう?めんどくさいだけだ。」
「あは、あははは。」
「そんな事はどうでもいい。イーシェン、お前は星持ち全員で壁より中の土を集めておけ。」
「えぇぇ?もう壁造ったんだからいいじゃん!!」
「昼飯食ったら日がくれるまでやれ。これは命令だ。」
「鬼!!悪魔!!!」
「鬼はお前だ。悪魔はカルマだ。ちなみに、サボったらわかるからな。」
 イーシェンは子供のように号泣していたが知らん。 俺が動くならあいつが動くのは当然だろう? まぁ、半分以上は八つ当たりだがな。 とにかもかくにもこれで第一段階は終了した。
 後は、今日の応用で○インクラフトのように、一面をブロック分けしてイメージで造形していけばいいのだろう? 俺はカルマの造った木造のあったかい家が好きだが、俺が創るからには区画整理して西海岸みたいに仕上げてやるのがいいだろう。 居住区だけ完成させて、商区などは後々話し合えばいい。 そして一面の軍艦、トッキーテンション上がりすぎて爆発だ。
 神域の空軍基地はハンドメイド感は大切だった。 何より俺が動いたのはローマンコンクリートもどきを多少ならしただけだが。 けど、俺の自由時間を根こそぎ奪うヨルムンガルドに関しては、早急に手を打つ必要があった。 カルマがみんなを使ってトンテンカンと家を建てても規模が規模だしな。
『ゲート』
 集落に戻っていの一番で昼食の炊き出しに使う蟹をバラしてるカルマの首根っこを掴む。
「主君?どうされたので?」
「外壁が完成した。ハウロミ島に行くぞ。」
 俺とカルマはニタァと笑った。
 そう、すべては鮫の白肝ポン酢和えの為だ。ジュル。


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