10年間修行した反動で好き勝手するけど何か問題ある?

慈桜

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 つまらん。 空母の製造は時田さんもびっくりの落とし穴があった。 それはロード時間だ。 零戦で試したらポンポン出来たらしいが、この規模となると完成に一週間程かかるみたいだ。
 見た目的には完成してるんだがな。 半透明の赤城にゆっくりと素材が浸透して行く感じだ。 蒼龍はいつか造る為に準備してたらしいけど同時進行でいける事になった。 ロード機能万歳って事だろう。 一番気になったブラウニーの木槌だが、見てる感じでは何処に使われるのかは、わからなかった。
「あれ、のりたい」
 俺はめんどくさいながらに研究所で最弱のゴブリン達の相手をしている。 あの空戦を見て時田塾に志願するゴブリンが増えて来たのだ。 しかも連日連夜。 数えてはいないが、増え続けるゴブリン達はやたらと飯を食うので人間の姿になってもらったほうが助かるには助かる。 めんどくさいのは間違いないが、俺としても次回の奇襲は圧倒的なまでの勝利を収めてやろうと思っている為に我慢している。 時田塾の生徒達がある程度教鞭を取れるようになったのも収穫だった。 おかげで時田さんは深夜まで零戦のロード、俺も寝ずに今回の作戦に使う秘密兵器の開発に身を削ってる。
 目の前で猫耳幼女のにゃんこが、どこからともなく現れ、俺が用意した仮想体の器を収納したカプセル型薬剤を配ってくれる。
「あの子達…がんばってますか?」
「あぁ、とても頑張っているよ。だが、にゃんこ。何故そんな距離で話しかけてくるんだ?」
「だってリブラさん、尻尾とか耳とか、あっ、だめ!!こないで!!ひゃあう」
「誘っているとしか思えん!!」
 白いお耳と白いモコモコが許せん!!
 希望するゴブリンが多種多様な人間の姿を手に入れ意気揚々と時田塾に駆け込み、舐めた態度を叱咤されるようにちゃらお達に投げ飛ばされる様子を窓越しに見ながらにゃんこの尻尾を追いかけていると狙撃部隊隊長、石弓の小鬼の五星ウーシェンが研究所に入ってくる。
「どした?」
 ウーシェンの脇をにゃんこが駆けて行くのを見届けるとウーシェンが口を開く。
「リブラ殿……我々に力を与えて頂きたい。」
 膝を折るウーシェンに目を丸くしてしまう。 力が欲しいと言ってもウーシェン達は連日続く漁で姿を大きく進化させている。 部隊の多くのゴブリンはすでに強弓を打てるし、元より知性の溢れる石弓の部族は長身のオーガに近い見た目に進化しているのだ。
「十分…強くないか??」
「そう…驕っていた時もありました。我らこそ最強なのだと…しかし前回の戦でやはり多くの仲間を失いました。連日勢いを増す時田塾、そして大きく規模を縮めましたが強大な力を手に入れ帰ってきたリャンシェン殿率いる六騎槍、このままでは我らは飾りと…いや、荷物と変わらなくなってしまいます。」
 そこに何処からともなく現れたのはイーシェンとスーシェンだ。
「主、俺もリャンシェンを見て気が変わった。もっと強くなりたい」
「おやっさん、自分も姐さんに認めてもらいてぇーっす」
 困ったちゃんな事になったなぁ。 こいつらはゴブリンじゃあり得ない程強いし、てか既にもう何かすらわかんし、何より集落の運営はこいつらに任せっきりな所がデカイ。 対魔物兵器的な役割で考えてる俺としても、リャンシェンは強くなりすぎたって考えてる部分もあるわけで。 だってあれだぜ?俺のレインメーカーガチでブチ込んだのに気絶しただけだぜ?ってまぁ、冗談は置いといて。 どうしたものか……。
 そこに艶がありつつも低い声が響く。
「主殿、それに関してうってつけの場所を見つけております」
「うおっ、リャンシェン!?」
 イーシェンがいきなりすぎてびっくりする程に音も無く現るリャンシェン。
 屈強なゴブリン達は、その力を手に入れた酒呑童子に振り向く。
「何を見つけた?」
「えぇ、これより先に100海里程の離れ島に我が力をつけた場所同様の洞窟を発見しました。生き残れるかどうかは皆次第ですが…」
「洞窟?ダンジョンみたいなもんかな?」
 そこで、俺はリャンシェンから詳しい説明を受ける。 迷宮核を抜くと言う馬鹿げた話しを。
「洞窟の主は深淵アビスの管理者と名乗っておりました。我はそやつに力を…いや、多大なる仲間の屍を超えてでも、なお願う己の武を手に入れました。」
 いつに無い真剣な表情を浮かべるリャンシェンの眼は、半端な覚悟では手に入れる事は出来ないぞと仲間達に語りかけているようだった。
「主、俺は本気だ。泳いででも行く。」
「いや、おまえなぁ。」
「おやっさん、頼みます!!俺もどうしてもいきたいっす!!」
「私の熱意をどうか」
 めんどくさい事なってきたよこれ。
「あーもーわかった。無理だと思ったら帰ってくる。守れるか?」
 三者三様に頷く。
「じゃあ、俺から預け物をする、大切な物だから絶対返しにこいよ?」
 こいつらがいなくなったらマジで困るんですけど。 特に食料的な問題で。 俺やりたい事やりてーっす。 家から出たくねーっす。 まぁ、仕方ないか…。
「じゃあイーシェンこれな、スーシェンはぁ…うーん、これな。ウーシェンは間違いなくこれだ。」
 イーシェンに指輪のアイテムボックスと俺がグリムさんとチャリクス爺の真似をして造った白い刀身に青い持ち手のパズル。 3本だけど、中々の組み合わせは出来る。 まぁ、オリジナルは組み合わせが多すぎて武器かオモチャかわからんくなったから簡素にしたやつだ。
 蛮族のスーシェンには三日月の形をした双剣、合体武器とまではいかないが魔力を込める事である効果を齎すロマン武器だ。 これは正真正銘のグリムチャリクスだからマジで返して欲しい。
 そしてウーシェン、こいつにはやっぱり弓だ。 弦も矢も無い黒ベースに紫の細い魔光が術式を刻む強弓だ。 術者の殺意を矢に変え弦を張る鬱展開厨二武器だ。 これはエルフのマミさんのボックスにあったヤツだけど深く考えないでおく。 あんな安らぎのマミさんがこんな武器使ってた黒歴史とかあったら俺が病む。 とりあえずフェアリーボックスで面白い弓って入れたら一番上に出てきたから面白いのだろう。 俺は意外性で爆笑だったが…。
「では、我が送ります。」
 リャンシェンが頭を下げるとみんなも頭を下げて意気込みを語る。
「主!!待っててくれよ!強くなってくるから!!」
「おやっさん……おれこんなすげー武器あったならもっと戦えてましたよ?」
「雄弁は銀、沈黙は金。スーシェン殿、主は我らの為を思ってくれているのですよ?」
「あぁ、そうだな。おやっさん!待ってて下さい!この剣に誓って強くなって帰ってきます!」
「私も必ずしや……」
 ゆっくりと頷き返してやるとふと気付いた。
「あれ?サンシェンは?」




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