10年間修行した反動で好き勝手するけど何か問題ある?

慈桜

30

  記念すべき仮想体の器が完成してから数日経つが、プレイヤーが領内に攻め入る事態は起きていない。 おそらく死んだ写楽の仲間達が情報を流したのではないだろうかと推測する。 余談だが器をスーシェンで試そうとしたが、ビビリやがったから現在保留中だ。
 そんな事よりだ。 俺は件の6人の中から最高の逸材を発見したのだ。 それはトキタサンだ。
 鍛治師と言う生産職にも関わらず最前線の攻略組だと言うトキタサンと二人きりで話し合う事2日間、彼は遂に秘密のベールを脱いだのだ。
「あれはミッドウェー海戦でした…こちらは加賀、蒼龍、飛竜、赤城と名立たる空母に歴戦の零式艦上戦闘機を搭載しミッドウェーに出撃しました…技術畑の私は…」
 なんとトキタサンの中の人はおじいちゃんだったのだ。 しかも戦時中の話しを聞く限り俺がいた地球と同じ、いや、途中までは同じだった…トキタサンの世界ではミッドウェー海戦で圧勝したと言っている。 俺の知っている歴史ならば、出撃のミスで四空母を失ったはずだ。
「……そして、私は思ったのです。この戦闘機は確かに素晴らしい戦闘機だが、更なる高みがあるのではないかと…そこで私が製造に携わったのが、音に聞こえた零式艦上戦闘機71型です」
 無い無い。そんなんないよトキタサン。 零戦は62型までのはずだ。 いや、ミッドウェー海戦を勝ったのであれば更に進化していたのか?しかし………。
「長年の研究の末に完成した71型は第三次世界大戦の花形でした…敵機よりはるか上空から迫りバッタバッタと撃ち落とし、ソ連を落とした日本は事実上世界を統べる事に成功しました…」
 すんげーなそこ。その日本すげーわ。
「過去に、日本からこの世界に来た人間が心神と言う名の戦闘機の話しをしていたが、知っているか?」
 これは俺がこちらに転生する前に開発していた戦闘機だ。 まだ試作段階だったが、頑張りすぎだろうと思ってニュースを見ていたのを覚えている。
「……えぇ、私が戦役を退いてから完成した至高の戦闘機です。人口を20億を超えた中国がUAEの資金提供を盾に宣戦布告をした第四次世界大戦では、空を埋め尽くす程の心神が出撃し中国全土を火の海に変え、鬼神とすら呼ばれておりました……」
 すんげーな、もうすんげーなしか言えない。
「敗戦後もテロ行為を繰り返した中国に対し、世界はこれらを捕虜として捕らえ、脳科学の臨床体として使用する事が決定しました。」
「それがVRの前進?」
「えぇ、その通りです…強制DIVEを繰り返し、数えきれない屍の上に完成した技術です…確固たる安全性が確保され以来、軍事訓練に使われ、次第に一般人にも手が届く様になりました。私が98歳を迎えた時でした。」
「何故、時田さんはVRを?」
「笑って下さい…私はもう一度戦闘機に乗りたかったのです。鍛治師を極めると、それに見合った工房を設ける事が出来ます…クラスアップの話は?」
「あぁ、写楽に聞いた」
 噛み締めるように頷くトキタサン。
「私は今、神格化してレベルが62です。これが、70になれば創造の工房を作る事ができます…運営の話によれば、ありとあらゆる物の製作が可能になる領域だと…齢は102を迎えましたが、私はそこを目標に生きております。辿りつけるかどうかはわかりませんが…」
「その夢は必ず叶うよトキタサン、何故なら本体との繋がりは勝手に俺が切ってしまったから、今のトキタサンは時田さんそのものなんだ」
「…………………」
 時田さんは驚き固まると涙をボロボロと流し始めた。
「ありがてぇです…ありがてぇです…長年の…長年の夢が……」
 何故か俺も貰い泣きしてしまった。 俺は包み隠さず全てを話してくれた時田さんが大好きになったのだ。
「じゃあ時田さん、これを装備して下さい。」
「これは?」
「吸魔の腕輪、貴方の夢を叶える宝くじですよ。」




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