10年間修行した反動で好き勝手するけど何か問題ある?

慈桜

「おのれ!アイザック!骨になってしまったお前なぞ嫌いじゃ嫌いじゃ嫌いじゃ!!」
 エレミアが真の姿、龍王モードで師匠をペシペシ殴るが師匠はカタカタカタと笑うだけだ。
 問題のお花見と言う事で覇王宮396階層、桜の層で三人?で花見をしているワケだが。 エレミアは終始怒っている。 先日の気絶が相当プライドに傷をつけたのだろう。 師匠とエレミアは旧知の仲で、師匠が生身の人間だった頃はそれなりに恋仲だったとかなんとか。 てかチャリクス爺の書庫を見る限りこの島の人達って何歳なんだろうって常に思う。 見た目成長してるの俺だけだし。まぁ、いっか。
 しかしこんな巨大で禍々しい龍にガンガン殴られながらお茶をすする師匠ってやっぱりつくづく壊れてるなぁ。
「あぁリブラ、早く強くなってくださいね」
 師匠は悲しくねだるようにこの言葉をいつも吐き出す。
 始めて会ったのは俺が九芒星に目覚めた時だった。 昨日のように突然現れ優しく俺の顔を撫で、流れるはずのない赤い涙を流していたのが昨日の事のように思う。
『これでやっと私も死ねる』
 深い深い一言だった。 俺はどんなカオスだよって正直思ったけど。
 師匠は強すぎるが為にいくつもの世界を壊してきた。 創世の頃からずっと。 世界を壊しても、この巨大な星はいくらでも再生する。 人類が滅びようが、魔物が滅びようが変わらずに。 イレギュラーで異世界人や邪神なども戦ったが満足はいかなかった。 これで生身の時の方が強かったってんだから悪い冗談にしか聞こえなかった。
 次第に全てに飽き3000階層にもなる迷宮を作って暇を潰すようになる。 そこで強くなった個体を魔王として各地に送りこんだりとまさに真の邪神とも言える存在になった時俺の存在に気づいた。
 師匠が最も求めるのは恒久の無。 何をしても死ねない師匠は俺にその夢を託した。
 これなんて無理げ?なんでもエニアグラムが真の覚醒をする事でそれは容易くなるとかなんとか。
 まぁ、今はまだまだ未熟な俺だ。 師匠には申し訳ないけど今は師匠と過ごせるこの時間が何より大切だ。 思いっきり楽しもう。
 こんな毎日がひたすらに続く。
 ジェルスさんに剣の稽古をつけてもらって、親父に喧嘩を教えてもらう。 オカンに新しい魔法の作り方を教えてもらったり何故か裁縫とかも教えられたり。 グリムさんに鍛冶を叩きこまれたりチャリクス爺の錬金術を教えてもらったりバグジーさんに料理を教えられたり。 エレミアに魔法を教えてもらったり。 マミさんに思いっきり甘えてみたり。
 魔王スネイプ先生に召喚術師の免許皆伝をしてもらったのは8歳の頃。 他の先生達にやっと認められたのは10歳になってからだ。
 10歳、旅立ちの時。
 三人の先生が出す熾烈な試験の合格と共に俺は島を出る決意をする。


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コメント

  • ノベルバユーザー267627

    今さらだけど、この人って転生者じゃないよね?

    0
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