その先にあるもの

お餅もちもち

雨の日

朝からうるさかった。
雨が降って通勤が大変だったと、
どんなに濡れたか、電車の中でどれだけ不快だったか、よく通るキンキンした声でまくしたてて話している。

話しているというよりは独り言に近い。
相手にするのも面倒くさくてうんざりしていたから。みんなが。
彼女に意見できるものは誰もいない。
そんな状況にも構わず、彼女は止まらない。今日も痴漢に遭ったとか。
だんだん話しながら怒りが蘇るのか、口調が荒く乱暴になってきた。声も一段と大きくなる。響く。
引き出しを閉める、机に物を置く、いちいち動作までがうるさくて仕方ない。
こんな感じで彼女に毒されながら朝の職場の雰囲気は最悪だ。

一見地味に見えて、でも華がある。
喋らなければ本当に美人だ。
勿体ない、よくそう思っていた。
あれで性格が普通なら。
あんなにうるさくアピールしなければ。

元から優秀で仕事はよくできる人だった。
頭の回転が早く、よく気がつく。要領よく物事を進める。色んな視点で物事を考えて
自分の意見をしっかり持ち発言できる。

しかし、彼女の及ぼす悪影響も多大。 
人間関係を構築するのは最悪。
やたらもめる。いつも誰かを責め立てる材料を探していた。自分に厳しい人だったが、部下にはもっと厳しい。上司にも厳しい。何か少しでもミスがあれば徹底的に叩く。完膚なきまでに叩き潰す。
だから、昇進はまずあり得なかった。
この人はメリットも沢山あるが、デメリットの方が遥かにデカイ。

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