Red&Wolf

キロ

6話


赤ずきんが森に着くとそこにはいつもと何も変わらない狼の姿がありました。
「どうしたんだ?赤ずきん。そんな顔をして。」
今にも泣き出しそうな赤ずきんは何も言わずに狼に抱きつきました。
「赤ずきん?なにか…あったのか?」
「狼さん……お願いがあるの。」
「………なんだ?」
ひとつ息をはき、赤ずきんはお願いごとを言いました。
「狼さん……逃げよう。どこか遠くへ。皆から見つからないような所へ。」
狼は驚きました。
その驚きを隠しながらも狼は答えます。
「…俺は大丈夫だが……。いいのか?そんなことを言って。もう…二度とここには戻ってこれないかもしれないんだぞ?」
頷き返す赤ずきん。
その瞳の奥には絶対に揺らがない意志が見えます。
「うん。覚悟はできてる。それに……狼さんとならどこへだって行ける。」
「それは……どうしてだ?」
狼の目を見て赤ずきんは今までにない笑顔を浮かべこう言いました。
「だって私…狼さんのことが好きなんだもん。」
狼は二人の間の時間だけが止まったような感覚に陥りました。
気づかないようにしていたのです。
自分が持つ、赤ずきんに対する気持ちに。
赤ずきんの事が好きだと言う…この気持ちに…嘘をつき続けていました。
それが赤ずきんの言葉によって抑えつけようにも抑えられなくなっていました。
「……そんなこと言って…後悔しないか?」
「うん。後悔しないよ。だってこの気持ちは…ちゃんと伝えたかったんだもん。」
赤ずきんの頭を撫でる狼。
「なら…連れて行ってやるよ。俺とお前の…2人だけの世界。そこなら誰にも人形として扱われることなんてないだろう?」
素敵な笑顔で頷く赤ずきん。
「なら行くか。ほら。」
そう言って赤ずきんに手を差し伸べる狼。
赤ずきんはその手を取り、2人歩き始めました。



「ねぇ!その後赤ずきんはどうなったの?」
そう、小さな子が尋ねます。
「そうね…狼さんと幸せな世界に行った…ってお母さんは聞いたよ。」
「そうなんだぁ!!赤ずきんよかったね。幸せになれて!!」
微笑むお母さん。それにつられて子どもも笑っていました。
「そうね。ほら、もう夜が遅いから寝なさい。」
「はーい!!ママ!おやすみなさい!」
そう言うと子どもは小さな寝息をたてました。
それを見るお母さんの目は優しい優しい目をしていました。


そう…まるで……
今話していた赤ずきんと同じような……優しい目。

「おやすみ。いい夢を。」
静かに扉を閉めるお母さん。
お母さんの目の前には小さな頃によく身につけていた…赤いフードの服が飾ってありました。




Red&Wolf 本編 〜完〜

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