人類滅亡と水の国

結城成藍

 家の鍵が開いていたから、母か誰かがすぐに帰ってくるだろうと思っていたが、数日たっても、母は、家族は誰も家に帰って来なかった。

「あぁ、どうも。どうかされましたか?」
 
 隣の家のおじさんに誰も帰って来ないことを話した。

「そんな馬鹿な! あぁ、ほら、お母さん、家事をなさってるじゃないですか」

 おじさんの指を指す方を見たが、何も見えない。首を傾げると、おじさんは顔を顰めた。

「御家族が、あなたのことを酷く言っていた理由がなんだか分かる気がします。私は、嘘をつく人間が一番嫌いでね」

 そう言うと、おじさんは、つ、と姿を消した。驚きに声を漏らすも、誰も答えるものはいなかった。

 小さな世界には、誰もいなくなった。

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