人類滅亡と水の国

結城成藍

 陸に上がれば、見知った街並みだった。歩けば、見知った人がいないせいで知らない世界に見えてくる。
 浦島太郎もこんな気分だったのだろうか。
 だが、妙に清々しい。きっと、浦島太郎と違って、海で歓迎されることもなく、陸で生活したいと常に考えていたからだ。ずっと海にいたいと願った彼とはそもそも違うのである。

 それにしても、やけに人が少ない。だが平日の、昼間だとしたら、この人数も頷ける。
 濡れていた髪や服はすぐに乾いた。直に当たる太陽で肌が焼けるような気がする。
 自宅は鍵が開いていたのに、誰もいなかった。不用心だが、母は隣の家にでも言っているのだろう。

「しばらく見ないから、どうしたのかと思っていました。お久しぶりです」

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