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夏月太陽

37.ダンジョンに挑戦3


 再びダンジョンにやってきた僕達は、メニューから再開を選択した。

 すると、転送されて吸血鬼三世さんの居る階層に着いた。

「フハハハッ! 待っていたぞ! いや、もう、本当に暇で暇で仕方なかったぞ! ここに来た輩、全員お前達みたいに居なくなったからな」

 ということは、全員杭が貰えるクエストを受けに行ったのか。そりゃあ、ダンジョンで吸血鬼が出てくるなんて、全く予想できないもんね。

 というか、吸血鬼三世さん、少し涙目になってるような……? そりゃそうか、自分のところに来た人達全員戦わずに一時撤退をしたんだから、戦いたい吸血鬼三世さんとしては寂しいよね。

「そうですか。でも、安心してください。今度は、ちゃんと戦いますよ。この、杭を使って」

 僕はそう言いながら杭を出した。

「なん……だと……!? 我輩の弱点である杭を持っている……だと……!? ふ、フフ、フハハハッ!! そうでなくてはおもしろくない! さあ、来るがいい……!」

 バサァッとマントをなびかせながら吸血鬼三世さんがそんなことを言った。

 じゃあ遠慮なくということで、杭の尖端を吸血鬼三世さんに向けた僕は、全力で吸血鬼三世さんの鳩尾目掛けて突っ込んだ。

 すると、呆気なく吸血鬼三世さんの鳩尾に刺さり、吸血鬼三世さんは目を丸くして驚いた。

「なっ……一瞬であの間合いを……!? ……見事だ……」

 そう言い残した吸血鬼三世さんは、吸血鬼のお姉さんと同様にサラサラと砂になっていった。

 本当に呆気なかった。僕の全力で走るスピードって、視認できないレベルなの? 自分じゃ、速く相手の目の前まで来たことぐらいしかわからない。

 まぁ、それはともかく、吸血鬼三世さん倒したので、迷路を進み次の階層に続く階段に向かった。

 道中4世やら5世やら、計4人出てきたけど、吸血鬼三世さんの時と同じ方法で倒した。

 次の階層に続く階段に着き、階段を上って十四階層へ。

 十四階層も変わらず迷路式で、思わず「代わり映えしなくてつまんない」と言いそうになったけど堪えた。だって、言ったらハヤトに「それは、リュウさんがすぐ攻略しそうだからです!」って言われそうだから。

 十四階層で出てきたモンスターは、ミイラだった。ゾンビ,吸血鬼,ミイラってこのゲーム妖怪を倒すゲームだったっけ?

 まさか、今は夏だからホラー要素も入れようかな? みたいな感じで入れてたり……? とハヤトに聞いてみると、あっさりと認めた。 

「しますね。この後も、まだまだ出てきますよ」

 だってさ……。なんかもう、ダンジョンがお化け屋敷みたいになっちゃってるよね? 曲がり角からいきなり出てきたら、そりゃあ驚くかもしれないけど、ここ、ダンジョンだからね?

 しかも、400階層もある、攻略できるのか心配になるくらいのダンジョンだからね? 只でさえ攻略に時間が掛かるのに、ホラー要素入れちゃったら益々攻略が進まなくなるよ? まぁ、それが目的なんだろうけど。

 でも、ゾンビも吸血鬼も今近づいてきているミイラも、僕はそこまで怖いと思わない。だって、吸血鬼に至っては、結構フレンドリーに喋ってたし……。

 そんなことを思っていると、ハヤトがミイラの特性について喋り始めた。

「ミイラの攻撃方法は、巻かれた包帯を伸ばしてきて、こちらの体に巻き付けると締め上げるものです。結構、体が結構頑丈なので注意してください。倒し方は、ゾンビと同じなので、僕が浄化魔法で倒します」

 ハヤトは、ミイラについての説明を終えると、近づいてくる数体のミイラに向かって『浄化パージング』と唱えた。すると、ミイラ達の足下に魔法陣が浮かび上がり、淡白い光を発したと思ったら、ミイラ達が呻き声をあげながら消えていった。

 おぉ、なんか凄い魔法っぽかった。いや、まぁ、魔法だけど。

 その後は、ハヤトが出てくるミイラ達を片っ端から浄化していって、やっとのことで次の階層に続く階段に着いた。

 それからは、順調に次のボスが居る二十階層まで行ったけど、さっきハヤトが言っていたように、十五階層~十九階層まで妖怪ばかりだった。

 フランケンシュタインやら狼男やら、日本の妖怪ではなく海外の妖怪だけだった。

 現に二十階層のボスは、メデューサだし。

 もしかして、鏡が必要とかないよね? とハヤトに聞いてみると、「そうですよ。よくわかりましたね」と他人事のように答えるハヤト。

「まさか、またクエスト報酬だったり?」
「しますね。すみません、今回はここに来るまで頭に無かったです」

 む、僕が咎める前に謝った……。仕方ない、許そう。

「でも、直接倒すのに必要なんじゃなくて、メデューサに石にされないようにするためのものなので、リュウさんがメデューサと目を合わせずにいけば倒せます!」

 完全に僕任せじゃん……! というか、それだと僕、目を瞑らないといけなくない? あ、でも、目を合わせなきゃ良いんだから、メデューサの目以外を見ておけばいいんだ。

 髪の毛に扮したヘビがどういう役割をしてるかがわからないけど、難しくしてるならヘビの目を見ても石化しそうなんだよね……。

 一応、ヘビの目も見ないようにしよう。

 そんなことを考えていると、メデューサが髪の毛を伸ばして攻撃してきた。睨んだ通り、髪の毛はヘビだったので、目を見ないようにしつつ、向かってくるヘビの頭をすべて切り落とした。

 そのまま、メデューサの目の前まで行き一回斬りつけた。斬りつけると、メデューサのHPはHPバーの2センチメートルしか減らなかった。

 ボスだけあって、防御力が高いな。このまま斬りつけ続けても良いけど、頭のヘビもあるし、これは一撃離脱した方がいいかも。

 そう思った僕は、一旦メデューサから離れた。

 その後は一撃離脱を何十回と繰り返してやっとのことでメデューサを倒した。

 もう無理、これ以上は集中力が続かない。というくらい、僕は集中力を使い果たしていた。

「お疲れさまです、リュウさん。よくメデューサの目を見ずにあんなに動けましたね……」
「あれって、ヘビの目を見ても石化した?」
「してないですよ。そんなことしたら誰も倒せないじゃないですか」
「えっ? ということは、自分で難易度あげてただけか……」
「えっ、まさかリュウさん、ヘビの目を見たら石化すると思ってたんですか!?」
「……うん」
「それで勝てたって……リュウさん半端ないな」
「そうね……メデューサと目を合わさないハンデと、ヘビと目を合わさないハンデの二つもあったのに勝ったんだものね」
「さすがです、リュウさん!」

 モモが駆け寄ってきてそう言った。

 その後は、みんなして僕の顔色が悪いと言い、一旦ログアウトしようと提案してきた。

 えっ? そんなに顔色悪い? 確かに、集中力が無くなってるけど……。というか、ゲーム内でも顔色悪いとかわかるんだ……。

 ここは、みんなのお言葉に甘えて、一旦ログアウトすることにした。


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