VRMMO生活は思ってたよりもおもしろい

夏月太陽

36.必要クエスト消化2


 クエスト受注場所に着いた僕達は、直ぐ様杭が貰えるクエストを受注し、依頼主のところへ向かった。

 内容は、『吸血鬼ハンターと協力して吸血鬼を倒せ』というものだった。

 いや、結局どちらにしろ吸血鬼は倒すんかい!! まぁ、このクエストが吸血鬼の倒し方のチュートリアル的なものなんだろうけど……。

 依頼主のところに着くと、そこは森の中の小屋だった。

 その小屋のドアをノックすると、中から出てきたのはまさかの美人なお姉さんだった。

 でも、なぜか全身を覆うように分厚い布を身に纏っていた。

「どちら様?」
「吸血鬼を倒すのを手伝いに来たんですけど」
「あらそう。よく来たわね。中に入ってちょうだい」

 お姉さんに中に入るように言われたので、お姉さんに続いて中に入った。

 お姉さんが背を向ける時、一瞬ニヤリとするのが見え、さらに、なにかがキラッと光ったのが見えた。

 んー、なんかわかっちゃった気がするなぁ。

 でもまあ、せっかくだし、このままにしておこう。一応、何があっても良いように、いつでも刀が抜けるようにはするけど。

 中へ入ると、お姉さんが僕達に椅子に座るように言い、お茶を淹れに行った。

 そして、お茶を淹れ終えたお姉さんがお盆に人数分のお茶を乗せて運んできた。

 僕以外の四人は、なんの疑いもなく出されたお茶を飲んだ。僕は飲まずにさりげなく「吸血鬼の話が聞きたいです」と言うと、お姉さんは吸血鬼について話し始めた。

 話し始めて少し経つと、ハヤト達が動けなくなった。……やっぱり、そうなったか。

 恐らく麻痺毒でもお茶に混ぜたんだろう。飲まなくて正解だった。

「なぜ君は、お茶を飲まなかったの?」
「この小屋に入る時に、貴女の尖った八重歯が光ったのが見えたからですよ」
「そう、バレていたのね。私が吸血鬼だと」
「まぁ、最初その格好を見た時は、吸血鬼に噛まれないようにしてるのかと思いましたけどね。でも、八重歯を見てわかりましたよ。日光に直接当たらないためだってね」
「凄いわ。そこまでわかった人は貴方が初めてよ。ご褒美として、今回は見逃してあげる。でも、次会った時は血を貰うわ」

 お姉さんはそう言うと、小屋を飛び出していった。

 これで一難去った訳だけど、本物の吸血鬼ハンターさんはどこにいるんだろう? ……って、今はそんなことよりも、みんなの状態異常をなんとかしないと!

 ブランって、状態異常は治せるんだっけ?

「クゥクゥ!」
「えっ、なに? 任せろって? 状態異常治せるの?」
「クゥ!」
「じゃあ先ずはモモから頼むよ」

 絶賛モモに抱かれ中だし、モモから治さないと、他の三人を治せないからね。

 ブランが少し光ったと思ったら、モモが動けるようになった。そしてその後、他の三人もブランが治したお陰で動けるようになった。

「あ、危なかったです……まさか、あの女の人が吸血鬼だったなんて……リュウさん、助けてくれて、ありがとうございました」

 モモが律儀にお礼を言ってきた。

「いいよ、気にしなくて。気づいたの、偶々だったし」
「でも、よく気づいたよな。八重歯が一瞬光ったのが見えたとか、リュウさんの注意力と観察力、半端ないな……」
「そうね。リュウさんだからこそできた芸当よね」
「完全にこういう設定にしてたの忘れてました……!」

 ハヤトが、物凄く、不覚を取ったみたいな感じでそう言った。

 そんなやり取りをしていると、小屋のドアが開く音がしたので、全員が一斉にドアの方を向くと、1メートルぐらいの杭を持ったひげ面のしっかりとしたがたいのおじさんだった。

「ん? なんだおめぇら、人の家に勝手に入り込んで」
「えっと、それが……」

 僕が代表して説明すると、おじさんは納得してくれた。

「そうか、それは災難だったな。前にも何回か同じことがあったんだ」
「そうなんですか」
「それにしても、そんな些細なことに気づくとは、おめぇ中々見込みがあんじゃねぇか」

 おじさんは、そう言って笑いながら僕の頭をワシャワシャと撫でてきた。

 頭撫でられたの、いつ振りだろう。小さい頃、父さんに撫でられた時以来だから、10年ぐらい振り?

 なんにしろ、17歳になっても、頭撫でられると嬉しいことがわかった。

「ありがとうございます。それで、吸血鬼を倒すには、どうしたらいいんですか?」
「簡単だ。この杭を、吸血鬼の鳩尾辺りにぶっ刺せばいい。だが、言うは易く行うは難しだ。奴は色々な手口でこっちの攻撃を防いでくる。いつもは俺一人で苦戦するが、今回は人数が多い。確率はいつもの倍以上だ。よろしく頼むぞ」

 おじさんの言葉に僕達は、頷きで答えた。

 その後僕達は、吸血鬼を倒すための作戦を立て、吸血鬼が現れる場所へ向かった。

 吸血鬼が現れる場所に着くと、お姉さんが待ちかねた顔をして待っていた。

「やっと来たわね。さあ、貴方の血をちょうだい」
「あげませんよ、僕は一言もあげるなんて言ってませんから」
「そう言うと思ったわ。貴方がその気なら、力づくで貰うわね」
「残念、その前に貴女は杭に刺されて死にます」
「ふふ、できるかしら……えっ!?」

 驚いたのも無理はない。今僕は吸血鬼のお姉さんの目の前に居るのだから。

 吸血鬼のお姉さんの目の前に行った僕は、後ろへ回り込んで吸血鬼のお姉さんの脇に腕を通して、ガッチリと捕まえた。

 そして、僕が「今ッ!」と叫ぶと、おじさんが杭を抱えて僕が捕まえた吸血鬼のお姉さん目掛けて猛ダッシュしてきた。

 そう、これは僕が一緒に杭に刺される作戦だ。杭のダメージは、吸血鬼にとっては一撃必殺だけど、プレイヤーに対しては500と微量なのでこの作戦になった。

 この作戦を言った時、結構反対されたけど……主に、モモとシアンとブランに。

 それでも、万が一のことを考えて一番HPが高い僕がその役目を担うことになった。

 とうとう、おじさんの杭が吸血鬼のお姉さんを捕らえ、僕も一緒に突き刺した。

 よく考えたらこれ、某球を七つ集める漫画に似たようなシーンあったよね。作戦を言った時は、全く気づかなかったけど。

「ま、まさか、この私が負けるなんて……! 見事だったわ」

 そう言い残した吸血鬼のお姉さんは、杭が刺さったままの僕を残して、サラサラと砂になっていった。

 おじさんは、その砂を残さず集めて袋に入れると、僕に刺さったままの杭を抜いてくれた。

 すると、直ぐ様ブランが駆け寄ってきて回復してくれた。

「ありがとう、ブラン」
「クゥクゥ!」

 お礼を言いながら撫でると、ブランは嬉しそうに目を細めた。

「よくやったぞ、リュウ! お前のお陰で、吸血鬼を倒すことができた。ありがとう」
「いえ、お役に立ててよかったです」

 吸血鬼を倒したことにより、クエストクリアとなった。そして、おじさんが杭を100本譲ってくれた。

 ハヤトによると、おじさんとの信頼関係や倒すまでの経緯によって、杭の貰える本数は変わるそうだ。

 因みに、上限は100本。悪くても最低二本は貰えるらしい。

 ということは、僕達は最も良い進め方をしたってことか。

「さすがリュウさん! 僕達にできないことを平然とやってのけるッ! そこに痺れる、憧れるッ!」
「ハヤト? 急にどうしたの?」
「えっ、だって、リュウさん、そんなことしかしてないんですもん」
「そうだな。自分が犠牲になって杭に刺されるとかな」
「そうね。常人では思い付かないわよね」

 だって、それが一番確実に杭を刺せる方法だったから。と言おうとしたら、モモが先に喋りだした。 

「それは、リュウさんが頭おかしいって言いたいの?」
「違うわよ。常人では思い付いても勇気がなくてやらないわよねって話よ」
「ふ~ん、ならいいけど」
「リュウさんのことになると、こうなるから難しいのよね……」

 そんなことを、やれやれと言った感じでボソッと呟くヒカリ。なんか、ごめん……。

 そんなやり取りもありつつ、杭のクエストが終わったので再びダンジョンに挑戦するため、僕達はダンジョンへ向かった。


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