VRMMO生活は思ってたよりもおもしろい

夏月太陽

13.マクロのギルドメンバーとの対面


 クロに教育を施した後、僕はシアンを巣に入れブランは申し訳ないけどアイテム欄に入れてからログアウトした。

 それからリビングへ行くと、昼に言っていた通り本当にお赤飯と鯛があった。そして僕がリビング来た数秒後に桃香がリビングに来たので、お祝いのための豪華な夕飯を食べた。

 夕飯を食べ終わり、風呂に入り自分の部屋に行き布団に入って眠りにつき一日が終わった。


 ◆◇◆◇◆


 翌日の朝、桃香の迎えに桃香の兄である直幸君が来た。

「桃香、迎えに来たぞ」
「来るの早くない?」
「それはそうだろ、俺はこいつが桃香の彼氏になることを認めてないからな」
「まだそんなこと言ってるの?」
「こいつが俺の義弟になるのは受け入れなれない」
「そうですか? 僕はそんなに気にしないですよ、お義兄さん」
「お義兄さん言うな!」
「えっ、だって、お義兄さんでしょ?」
「お前に兄と言われる筋合いはない!」
「兄さん、いい加減にしてよ! 私が選んだ人に文句言わないで!」
「うっ、しかしだな……。桃香にとってはそうでも俺にとってはこいつは三回も優勝を取られたライバルなんだ」
「だったら今から龍さんと勝負して、龍さんが勝ったらお義兄さんって呼んでも良いことにしよ」
「それ、絶対こいつが勝つに決まってるじゃないか!」
「じゃあ諦めてお義兄さんって呼ばれて」
「なっ!? ……仕方ない。おい、竹刀あるか!」
「ありますよ、すぐ持ってきますね」

 そんな感じで僕と直幸君が試合をすることになった。もちろん、どちらとも生身なので寸止めとなる。ルールは一本勝負、勝ったらお義兄さんと呼んでも良いが負けたら……負けたらなんて呼んだら良いの?

 それから僕が竹刀を2本持ってきてその内の一本を直幸君に渡した。

「はいどうぞ、新品なので気にせず使ってください」
「あ、ああ。しかし、良いのか、新品で」
「古いやつ全部ささくれと柄に汗が染み付いてるから、貴方だってそんなの絶対使いたくないでしょ?」
「使いたくないな」
「まあそういうことなので、それを使ってください」
「わかった。というか、この新品振りやすくないか?」
「オーダーメイドなので」
「それを聞くと使いにくくなるんだが、本当に使っていいんだな?」
「だって、僕のは振り慣れたやつなのに、そっちのが振りにくくて負けたなんてことにはなりたくないのでそれを持ってきたんです。何時もは大会の予備に持ってくんですけど、この竹刀が中々壊れなくてその竹刀、一回も使ったことないんですよね」
「そ、そうなのか、じゃあ有り難く使わせてもらう」

 そんなやり取りをした後、僕と直幸君は庭の広い場所にて対峙した。そして、竹刀を構えて桃香の合図で試合が始まった。

 試合開始の合図と共に直幸君が突きを打ってきた。僕はそれを少し下がりながら竹刀でずらすことで当たらずに済んだ。最初にそれやるとか、僕を殺す気か!?

「チッ」

 舌打ちしたよ!? やっぱり僕を殺す気でやってるよこの人! 突きが失敗した直幸君は次に小手を狙ってきたので、僕が払って防いだらその勢いを使って面を狙ってきた。僕はそれを擦りあげて面を打った。もちろん寸止めで。

「面あり! 勝負あり!」

 そう桃香が言って試合は終了した。直幸君は悔しそうな顔をした後、急に笑いだした。

「どうしたんですか?」
「いや、やっぱり敵わないなと思ってな」
「何がですか?」
「そりゃあもちろん、剣道の腕だ」
「それは、どうも……」
「約束通り俺の事はお義兄さんと呼べ」

 なんかすんなりだったけど良いのかな? 

 その後、二人が帰っていくのを見送ってから家に戻った。

 それから自分の部屋に戻ってスマホを見ると、幸也(マクロ)からメールが来ていて内容は『今からTPOの中で会えないか?』だった。それに対して僕が『良いよ、どこで待ち合わせ?』と送ると『【始まりの広場】の噴水前でどうだ?』と来たので、『了解』と送った後ばあちゃん達にゲームすることを伝えに行き、部屋に戻ってログインした。


 ◆◇◆◇◆


 ログインした僕はアイテム欄からブランを出して抱き上げ、シアンを肩に乗せて噴水へ向かった。

 噴水へ行くともうマクロが待っており、近くに見慣れない人達が三人居た。

「おっ、来たか……って、お前、その抱いている白い熊はもしかして……」
「ああ、この子? 『ヒーラーベア』だよ。昨日モモが『キングベア』をテイムするクエストやりたいって言うから【ベア種の森】に行ったらこの子が出てきた」
「やっぱりか……。なんなんだよ、ドラゴンといい熊といいレアなやつばかりテイムしやがって。まあ、リュウだから仕方ないか……」
「なにそれ……。ところで、この人達は?」
「なに言ってんだ、全員お前の知ってる奴だぞ?」
「えっ、そうなの!?」

 えぇ、誰? よく見ても分からない……。そう言えば、ヨシキに鈍感って言われたっけ。現実なら数十メートル離れたところから変相してても誰か判別出来るんだけど、ゲームの中だとキャラメイクのせいで全く分からない。

 何故なら現実では歩き方とか癖でその人だと特定出来るけど、ゲームの中だと皆同じ歩き方するから癖でしか判別出来ない。まあ、ゲーム内の顔とか髪型とか覚えれば次会うとき誰か分かるけど、さすがにゲーム内の初対面はたとえ現実での知り合いでも言われないと気づかないよ。

 どうしよ、全く分からない。ヒューマンでマジシャンっぽい人とビーストマンでソードマンっぽい人とビーストマンでウォリアーっぽい人の三人なんだけど、本当に分からない……。

「分からないか……やっぱりリュウは鈍感だな。現実では人混みのどこにいても見つけてくれんのに」
「ゲーム内だとキャラメイクとゲームの仕様のせいで分からなくなるんだよ!」
「まあ、リュウにとってはそうだよな。じゃあ、正解言うぞ?」
「良いよ」
「ヒューマンでマジシャンが奏樹そうきで、ビーストマンでソードマンがとおる、ビーストマンでウォリアーが将人まさとだ」
「クラスメイトの?」
「そうだ、このゲームでは俺のギルドのギルドメンバーだ」
「お前がこのゲームやってるって聞いたときは疑ったけど、PVPの動画見て一瞬で疑いが晴れた」(←奏樹)
「そうだよな。まさかリュウがこのゲームやってるとは思わなかった。しかも始めて数日でそんなレアなモンスターテイムしてるとはそれこそ思いもしなかったな」(←透)
「リュウ君はもうガチ勢だね」(←将人)
「そうかな、マクロ達からしたら素人だと思うけど。このゲームのことまだあまり詳しくないし。それに、ガチ勢はマクロのことを言うんじゃないの?」
「まあ、そうだな。このゲーム内で一番強いのはマクロだからな」
「そうそう、さすがのリュウ君でも負けるんじゃないかな?」
「無理だ、リュウは称号に<回避の貴公子>が有るからな」
「でもPVPはレベル差関係ないしステータスも関係ないよな? だったらやれんじゃないのか?」

 そう奏樹が言うと、マクロが明らかに目を逸らした。おいおい、嘘ついてたのか?

「マクロ、僕に嘘ついてたのかな?」
「いや、違っ……すみません、嘘つきました」
「本当の理由は?」
「でもあながち嘘じゃないんだ。リュウだと何しても避けられそうでやる意味ない気がするんだ」
「やってみないと分からねえだろ?」
「お前は知らないからそういうことを言えるんだ。リュウはな、『コバルトスパイダー』をノーダメで倒したんだぞ? そんな奴に挑んでも負けることが目に見えてるんだから、意味ないだろ!」
「マジか!? あの『コバルトスパイダー』をノーダメ!? すげえなリュウ!」
「そう言えば、リュウ君ってバッティングセンターで240キロ全部打ち返してたよね」
「そう言えばそうだな。もしかして『コバルトスパイダー』の攻撃スピードって240キロ?」
「そんなもんだったよ。だから当たらずに近寄ることが出来たんだよね」
「ということはレベル凄いことになってるんじゃないか?」
「俺見てみたいな、リュウのステータス」
「僕もリュウ君のステータス見たい」
「良いよ」

 そう言ってステータス画面を開いて皆に見せた。

―――――――――――――――――――――――

◆プレイヤー名:リュウ Lv61 職業:ソードマン

 HP:3542/3542

 STR(攻撃力):2180(+20)→2200

 VIT(防御力):1845(+20)→1865

 AGI(回避力):3000(称号:<回避の貴公子>により+2000)→5000

 INT(賢さ):1652

 MND(精神力):1720

 LUK(運):7(※Max:10)

◆スキル(※Max:Lv10)

【気配察知】:Lv1

【鍛治】:Lv1

【生産】:Lv1

【テイム】:Lv10

【料理】:Lv1

【調合】:Lv1

【挑発】:Lv1

【隠密】:Lv1

◆所持スキルポイント:20
 ※1ポイントで1レベルアップ

◆称号
 ・<【英雄の台地】の英雄> ・<回避の貴公子>

――――――――――――――――――――――― 

「こ、これは、ヤバイな……」
「ソードマンなのに回避力の方が高いってヤバイよな」
「これは確かにPVP挑みたくないね」
「だろ!? というか、レベルまた上がってんじゃねえか」
「ああ、昨日また『コバルトスパイダー』倒したからそれだね」
「また倒したのか!?」
「うんまあ、そこにクエストが有ったから倒してきた」
「なにその登山家が言いそうなやつ……」
「何故山に登るんですか? そこに山が有るから、的な?」
「それより今さらだけど今日はなんで呼ばれたの?」
「今日呼んだのは、俺達とクエストしてほしくて呼んだんだよ」
「それは良いけど、どんなクエストやるの?」
「それはこれから決めるんだよ」
「あっそう……」

 そんな感じで今日はマクロ達とクエストをこなすことになり、全員でクエスト受注場所へ向かった。


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