腹下したせいで1人異世界転移に遅れてしまったんですが

けん玉マスター

27話 鬼神再び

ミーシェが眠って1週間がたった。
陸や各国の代表は自国へと帰っていった。
未だにミーシェは目を覚まさず、各国代表の会議も行き詰まっていた。
「…ミーシェ…」
優は寝ているミーシェの手を握る。
「…頼むからさ…目…覚ましてくれよ…。」
寝不足で優の目の下には隈が出来ていた。
「…」
コンコン…
「優、入るわよ。」
「…姉貴…」
「ミーシェ…どう?」
「…相変わらずだよ。」
「あなた…最近この部屋に篭もりっきりじ、ゃない…。ちゃんと寝てるの?」
「…」
「隈出来てるじゃない…。」
「…姉貴…ごめん…。俺…ミーシェの事…守るって…」
ビシッ!
「っ…」
優の額にデコピンするサラ。
「痛え…。」
「謝ったってどうこうなる話じゃないでしょ?」
「っ…だけど…!俺…姉さん達に合わせる顔がなくて…!」
優は悔しそうに拳を握りながら涙を流す。
「ユウ…。大丈夫よ。私とベルの責任でもあるから…。」
優をゆっくり抱きしめるサラ。
「でも…!俺…!守るって約束して…!」
「それで?約束を果たせなかったからこんな所でいつまでもいつまでも起きないミーシェの前でめそめそと泣いてただこの世界が滅びるのを待っているのかしら?」
「それは…」
「ミーシェは死んでない。どういう事情か知らないけどエトくんに頼めばなんとかなるかもしれない。どうするの?このままここで泣いてる?」
「俺…は…」



コンコン…
「失礼します。」
「あなたは…」
「私はタイアリアでミーシェ様のお世話をしていたローザというものです。」
「…」
「ミーシェ様から預かっているものがありまして…」
「預かっているもの?」
「はい。この子を…」
「わん!」
「マシュマロ…。」
「へっへっへっ…」
「ミーシェ様は…とてもお転婆ですが料理が上手で…いつも…いつも優様の事を思っていられました…。」
「っ…ありがとう…ございます…。」


「マシュマロ…ゴメンな…お前のご主人様…守れなかったよ…。」
「くぅん…」
マシュマロはミーシェの手を舐める。
「…ん?マシュマロ…お前に持たせたアーティファクト…こんな色だったか?」
優はマシュマロの首に付いたアーティファクトを外す。

ザ…ザザ…

───あー…ん?これ録音できてるのかなぁ?ユウ〜聞こえてる〜?返事して〜?
───ミーシェ様…失礼ですがそれは録音用のアーティファクトですよ?通話用では…
───わ!ローザさん!?恥ずかしいから入ってこないでって…


こ、コホン…。
気を取り直して…ユウには直接言おうと思ったけど…私これから戦いに出なきゃ行けなくて…言いたいこと言ってから行くね?マシュマロはローザさんに届けてもらおうと思って…。ユウ…




ドオォーン!!



物凄い轟音が鳴り響く。

「魔神サラ!この城にいるのは分かっている!抵抗をやめて大人しく出てくるんだ!」
ベルとサラが外に出ると城のすぐ近くに木の根っこが刺さっていた。
「これは…」
「久しいな…魔神サラ。」
「あなたは…破壊神…シバ…。あら?あなた死んだんじゃなかったの?」
「あの程度では死なんよ…。これより世界の救済を始める。死にたくなければ大人しくついてきてもらおう。」
「っ…」
「おっと。我の結界の効果は忘れたわけではあるまい。」
「っ…どうする気かしら?」
「まずは貴様らには気を失ってもらう。貴様らは敵だが利用価値がある。エト様のご意向だ。」
「…姉さん…。」
「ここは…大人しく従いましょうか…。シバ、ついて行くのは私だけじゃダメかしら?」
「姉さん!」
「悪いわね…。ミーシェに続いてあなたまで失う訳には行かないのよ…。」
「姉さん!ダメ!」
「ククク…ハハハハハッ!美しい姉妹愛だ!だが我は破壊神。そういうのを壊すのが大好きなんだ…。魔王ベルフェゴールは殺してもいいと言われておるのでな…。」
「あなた…まさか…!」
シュン…
「!」
シバが一瞬でベルの横に移動した。
「ダメぇ!!」
サラはかばおうとするが吹き飛ばされる。
「姉さ…」
ガッ!
シバはベルの口を塞ぐ。
「やめ…て…!」
「やはり魔法なしでは弱いな…魔神サラ…貴様の弱さが招いた悲劇だ。」
「ベル!!」
「死ね…。」


…ガシ…!

「「「!」」」
後ろからその手を掴む一人の男。
「…姉さんに汚い手で触るな。殺すぞ?」
「!…藤山優…!」
「ユウ…!」
「遅くなって悪い。姉さん、姉貴。」
「今更貴様が出てきたところで何が出来る?我の魔法に貴様の攻撃が効くはずなどない。」
「…そうだな。だが俺はお前に勝たなくちゃいけない。言ったろ?俺はミーシェのためだったら何でもやる。ミーシェに言われたんだ…」




───ユウ、ユウが私を突き放したのは…私のためだったんだよね?
…それでも…私…怒ってるから。せっかくユウのために強くなったのに…。だからね…。絶対勝って。そして迎えに来て?そしたらさ…一緒に…どこかで暮らそうよ。私とユウとマシュマロで。そ、それから…私…ユウとの子供が欲しいです…。あ!やっぱ今の無し!あ、録音だからもう遅いか〜。と、とにかく!迎えに来てね!私は私のできることをやる。だからユウ…負けちゃダメだよ?離れてたって私達はいつでも一緒なんだから…ね?じゃ…頑張れ!ユウ!



「…俺は負けられない。ミーシェのためにも。」
「ふん…くだらん…。気持ちごときで我に勝てるわけがなかろう?貴様の攻撃は我には通じぬぞ?」
スバッ!
「!」
シバの腕が飛ぶ。
「なっ?!」
「何度も言わせるな…!」
優の額から角が現れる。
「ミーシェのためならなんでもやる。俺は負けない…。お前にも…俺のこの…力にも!!」
「まさか…御したというのか?!その力を…!」
「待ってろ…ミーシェ。絶対俺は負けない。お前も…負けるなよ?」




フォローorコメントよろしくお願いします!

コメント

  • かつあん

    おお!やっとあの力を制御することが可能になったのか!やっぱ愛の力ってすげー

    4
コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品