腹下したせいで1人異世界転移に遅れてしまったんですが

けん玉マスター

52話 小宮&松山side 2つの里

最果ての洞窟深部。
その秘境に、2つのウルフの里があった。
一つはレジェンド級のウルフ、ホーリーウルフが治める光の里。
そしてもう一つは同じくレジェンド級のウルフ、ディアブロスウルフが治める、悪魔の里である。
以前まではどちらの里も、狼神であるラショウが治めていた。しかし、ラショウが互いのリーダーを育てるべく、どちらの里からも代表を出し、互いの里を任せて、姿を消した。光の里の代表はホーリーウルフのメス、ハクビ。純愛に溢れ、争いを好まない温和な性格で皆からの信頼も厚かった。そして悪魔の里側のリーダーはディアブロスウルフのオス、コクビ。ディアブロスウルフ自体凶悪な性格であり、そのリーダーであるコクビは極悪を極めるウルフである。血を好み、敵を見るなり襲いかかってくるような性格らしい。

「…その情報はどこまで正しいの?ハクビ。」
「私の情報はよく知りません。それに…」
「それに?」
「…コクビは…そんなに悪いウルフじゃないんです。」
「…そう…なの?」
「ええ。きっと…ラショウ様が居なくなったからなんです。リーダーを任されてから、きっとみんなを守るために凶悪に徹してるんです。強くないと…群れは守れませんから。」
由希とハクビはホーリーウルフの里に辿り着き、ハクビの自室で話をしていた。
「…その…コクビについて…随分と詳しいのね。」
「はい。私とコクビは小さい時から一緒でしたから。」
「…小さい時?」
「私達は元々親に捨てられた迷い犬。ラショウ様に救われた命なんです。」
「…相変わらず凄いわね…師匠。」
「ええ。感謝してもしきれない方です。ラショウ様は。」
「…それで?仲良かったの?」
「はい…。毎日のように行動を共にしていました。どこに出かける時も一緒で…懐かしい…。」
「…それは…くっつけるしかないわね…。」
「なにか閃きましたか?由希。」
「…いえ、何も無いわ。とりあえずコクビに会ってみたいわ。」
「そ、そんな!危険です!」
「…会ってみないとわからないじゃない?」
「そうですけど…。…分かりました。由希がそういうのなら間違いはないんでしょう。もはや私には手に負えません。由希に…任せます。」
「…ええ、任せて。」


悪魔の里。
「コクビ様、白犬共が何やら人間を連れてきたそうですぜ?」
「うるせえ!俺は今考え事してんだ!」
「す、すんません…!」
「くそ!」
コクビは毒づくながら座り込む。
「…どうしたらいいんだ…!俺は…本当はハクビと…仲良くなりたいだけなのに…!」
そう。この話は単純なのだ。
コクビがハクビの気を引こうとちょっかいをかける。小学生がよくやる習性だ。
しかしそれがレジェンド級の魔物となるとちょっかいがちょっかいレベルではなくなる。そう…戦争だ。
「どこでだ?俺はどこで間違えた?」
コクビは振り返る。これまでの日々を。

出会いはかなり小さい時だった。まだ2人が子犬?子オオカミ?どっちか知らん。初めてあいつを見た時…心を奪われた。俺は…あいつの事…好きになったんだ。一目惚れだったんだ。

「っ〜!くそっ!こんなつもりじゃなかったのに!もう…どうすりゃあいいんだよ…!」
「…気持ちを伝えるしかないわね。」
「そうだよな…でもどうやって。」
「…正直に告白するしかないんじゃないの?」
「それが出来たら苦労してないっつーの!」
「…男でしょ?腹を括りなさいよ。」
「でも…!…てか…誰だ?!」
「…今更?」
「に、人間?!」
そこに立っていたのは由希だった。
「な、なんで人間がこんな所にいやがる?!」
「…ハクビに頼まれてね。偵察よ。」
「へっ!八つ裂きにしてやるぜ!」
コクビは由希に飛びかかる。
「…サンクチュアリ。」
「な?!」
爪は光の壁によって阻まれる。
「聖域…!精霊魔法だと?!」
「…大方予想通りね。」
「へ、へっ!何がだよ?」
「…あなた…ハクビの事が好きでちょっかい出してるんでしょ?」
「は…はぁ?」
「…全部声にでてたわよ?」
「え?!」
「…馬鹿ねぇ…今どきの小学生でも気づくわよ?」
「ショウガクセイ?何言ってやがる?!」
「…まあいいわ。あなたがやることは一つだけよ。」
「なんだと?」
「…くだらないちょっかい出してると…嫌われるわよ?」
「そ、そんな…!じゃ、じゃあ俺はどうすればあいつの気が引けるんだよ?!」
「…そんなの決まってるでしょ?」
「なに?!」
「…正直に自分の気持ちを伝えるのよ。」
「そ、そんなこと言ったって…!」
「…男でしょ?うじうじしてんじゃないわよ。」
「だ、だって…恥ずかしいし…。」
「…いい?自分の好意を相手に伝えるのは誰だって恥ずかしいものよ?でも…恥ずかしいと言って伝えないと…絶対後悔するわ。このまま光の里を襲い続けて…ハクビがあなたのこと好きになると思う?」
「そ、それは…。」
「…区切りをつけなさい。男を見せなさい。男は男らしく告白する義務があるのよ。」
「…」
「…同時に女にはそれに応える義務がある。ハクビもその辺は分かってる。あなたと…仲直りしたいと思ってるはずよ。」
「ほ、本当か?!」
「…昔から仲良かったんでしょ?あなたがよく分かってるんじゃないの?」
「そ、そうか…。」
「…だったらやることは一つ。今すぐ光の里への襲撃をやめなさい。そして…気持ちを伝えるの。いい?」
「お、おう…。に、人間のくせにいいこと言うじゃねえかお前。」
「…私は戻るわ。後はあなた次第よ。」
「おう…あ、ありがとよ!」


「どうでした?由希?」
「…ええ、心配無いわ。3日以内には襲撃は止むし、平和になる。」
「え?」
「…断言するわ。私の予想は外れないわよ?」
そう言って由希はハクビにウインクする。
「…?」




ちょっと寄宿学校のジ〇リエット的な要素を入れてみました。
安定で間に合いませんでした…。
明日どっちかしか出せないかもです…どっちがいいですかね…?
フォローorコメントよろしくお願いします!

コメント

  • ノベルバユーザー30469

    寄宿学園いいよね〜面白いよね〜

    1
  • hera

    やっぱり寄宿学園でしたか
    それっぽいなぁと思いました!笑

    3
  • トゥルントゥルン5331

    早く藤山と合流しないかなあ

    4
  • かつあん

    フーーー!松山さんいいこと言うー!やらなくて後悔するくらいなら恥ずかしくてもやれってことですね!

    4
コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品