腹下したせいで1人異世界転移に遅れてしまったんですが

けん玉マスター

32話 ユウ&ミーシェside 野望

「はいっ、ユウ。今日はラーメン作ったよ!」
「…ああ。」
「どうしたの?」
「いや、別に…。」
スペーン共和国を目指し、旅を再開したユウとミーシェはアギリシ王国に寄るため、少し違う方角に進んでいた。
「うーん…米が…」
「米?ユウの世界にある料理…だよね?」
「ああ。」
「それがどうしたの?」
「…食べたい…。」
「グランスペルEXで何とかならないの?」
「そうしたいけど…スキルが分からないとなぁ?」
「アポート、米!…とか?」
「…やった。でも違う世界のものは無理みたいだ…。」
「や、やったんだ…。」
「うーん…」
「…そんなに食べたいの?」
「うん…。」
「じゃあ…作れば?」
「は?」
「だから一から育てるんだよ!」
「な、何言ってんだ?」
「空間魔法でさ。植物なんでしょ?畑作って育てればいいじゃん!」
「種なんかないぞ?」
「案外制服のポッケに入ってたりするんじゃないの?ユウの制服のポッケ色々入ってたじゃん。」
「さすがにそれはないだろ…。」
「いいから!探してごらん。」
「でもなぁ…?」
「いいから!」
「わーったよ。」


ユウは制服のポケットをゴソゴソいじる。
「ユウ、それ何?」
「ああ…これか?これはリップクリームって言ってな…。唇の乾燥を防ぐんだよ。」
「へぇ…どうやって使うの?」
「キャップ取ってだな…下をちょっと回してみ。」
「こう?」
「ああ。」
「わっ!なんか出てきた!」
「それを唇に塗るんだが…俺の使用済みだから間接キスに…」
「え…」
ミーシェは既に唇に塗っていた。
「べ、別にユウなら大丈夫だし!」
「別に何も言ってないが…。」
「あ…そ、そうだね…。」
「お、おう。」
「なんか唇がスースーする…。」
「そういうものが使われてるんだよ。」
「へぇ…ねえねえ!他には?」
「そうだな…これなんてどうだ?」
ユウは胸ポケットから絆創膏ばんそうこうを取り出す。
「それはどうやって使うの?」
「傷口に貼るんだ。…まあ回復魔法があるから需要はないけどな。」
「ふぅん…。」
「他には…おっ、これなんて珍しいぞ。」
「そ、それは…細い板?」
「ちげえよ。これはガムって言うんだ。」
「ガム…。」
「…食べ物だぞ?」
「食べ物?!」
「ああ。…食べてみるか?」
「食べる食べる!」
「ほら。」
もぐ…
「んー!甘ぁい!」
「そうだろ?飲み込むなよ?」
「え?」
「味がしてる間は噛み続けるんだ。そうすれば長い間味わい続けれるだろ?そういう食べ物なんだ。」
「へぇ!すごーい!美味しいなぁ…。」
「ほら、全部やるよ。」
「ほんと?!ありがと!」
「ただし少ししかないから…少しずつ食えよ?」
「うん!美味しいなぁ…。」
「さて…米なんて都合よくあるわけ…」
手に伝わる感触。
「ん?これは…」
出てきたのは、まだもみのついた米だった。
「え?ええぇ?!!」
「ど、どうしたの?」
「あ、あった…。てかなんで?!」
「ほんと?!見せて!」
「ほら…。」
「…す、すごいねぇ!」
「絶対思ってないだろ?」
「だ、だって…なんか汚い…。」
「し、失礼な!日本人はこれがないと生きて行けないほど大事なものなんだぞ?!」
「そうなの?」
「これを容器に入れてこうして…よし!」
「それでいいの?」
「ああ、これを空間魔法で動かないように日陰において…これで待ってれば大丈夫だ。」
「魔法で成長させちゃえば?」
「ばーか、こういうのは過程があってこそ美味しいと感じられるんだ。田植えも全部手作業でやるからな?俺は。」
「そういうもんなんだ…。」
「でもこれで米が食える!」
「わ、私も食べてみたい!」
「だろ?待ってろよ?」
「うん!…あっ!麺が伸びてる!」
「マジか…すまん。」


「おやすみ、ミーシェ。」
「うん、おやすみ!」
2人は布団に入った。
「ねえユウ?」
「ん?」
「ユウは元の世界に戻ったら…何やりたいの?」
「…そうだなぁ…色々あるぞ?」
「教えて?」
「そうだな…親父への復讐…とかな。」
「ユウ…。」
「こっちの世界に来たからって俺の気持ちは変わらない。親父は許さない。絶対に復讐する。」
「それは…殺すってこと?」
「まさか。」
「え?」
「それよりも死よりも苦しい道を歩ませてやる…。」
「無理…しないでね?」
「どうした?急に…。」
「あ、その…顔が怖かったから…。」
「それは悪かったな…。」
「あんまり…抱え込まないでね?私でよければ聞くから。」
「ありがとう…。実は俺…あの後親父に会いに行ったことがあるんだ。」
「そうなんだ…。」
「…別の家庭を築いてた。幸せそうに…笑ってた。」
「…」
「俺の事なんて忘れてたよ。俺は忘れたくても忘れられないのに…!あいつは…俺から母さんと姉さんを…奪ったくせに…!」
ギュ…
「!」
「辛かった…よね…。」
「ミーシェ…。」
「…」
「…悪い…落ち着いた…。」
「…私が…聞くから…なんでも…。」
「ありがとな…。お前は…やっぱり母さんに似てるよ…。」
「え?」
「雰囲気というかな…。俺が辛い時は…そうやって抱きしめてくれた。」
「優しい…お母さんだね…。」
「ああ…。」
「ふふふ…ギューっ!」
「ミーシェ?」
「安らぐ?」
「…ああ…癒されるよ。」
「よかったぁ…。」
「戻ったらやりたいことは他にもあるんだ。」
「へぇ…。」
「買い物行ったりゲームしたり、読み残した本を読んだりしてな。」
「ユウ…。」
「もちろん、お前と一緒にな。」
「え?」
「買い物もお前に付き合ってもらう。カップルじゃないと入れないようなカフェとかな。行ってみたいんだよ。ゲームも2人で対戦したりして…本も同じ部屋で一緒に…な?」
「ユウ…。ふふふ…なんでも付き合うよ!」
「そうだな…色々案内してやるよ。」
「なんか…楽しみになってきた!」
「とっとと復讐終わらせて…行くか!」
「うん!約束!」
「ああ…約束。」
2人は指切りをし、そのまま眠りについた。



人気キャラ投票実施中です!
31話のコメント欄にお願いします!
フォローorコメントよろしくお願いします!

コメント

  • ノベルバユーザー309511

    幸運だもんな

    2
  • かつあん

    なんで米がポケットにーーー?!

    4
  • 自称クズ

    ふむ

    5
コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品