腹下したせいで1人異世界転移に遅れてしまったんですが

けん玉マスター

15話 悪の象徴

勇者side

ここ、アギリシ王国の中央広場そこには沢山の人だかりが出来ていた。この時は国民だけではなく、ちょうど行われていた、闘技祭を見に来ていた観光客もいたため、多くの人で埋まっていた。
その原因はスコット商会の本店のビルの屋上に居る人物にあった。
屋上ではピルーク王国に召喚された勇者のリーダー、天城光祐が立っていた。
「皆さん、話を聞いてください!!」
アーティファクトで音を上げているのか、その声は広場、いや、町中に響き渡った。
「僕はピルーク王国に召喚された勇者の代表の天城光祐です!」
町中に響き渡った声は国民をビルが見える広場へと集めた。
「今回こんな場を設けさせてもらったのは皆さんの日常を脅かす脅威を退けるためです!」
最初は皆何が起こっているのか分からず、困惑するばかりだった。
天城の後ろから数人の兵士が一人の女の子を連れてきた。
縄で拘束され、口も塞がれている。
「この少女は人間を偽った化け物…ダークエルフです!」

―――ダークエルフ?
―――魔神の妹か?
―――おい、広場で面白いことやってるぜ。

「今から悪の象徴である、ダークエルフを処刑します。」
「んー!んー!」
口を閉ざされたダークエルフの少女は苦しそうにもがく。

国民からは歓声と共に、少女に対する誹謗中傷が上がった。

―――ダークエルフがなんで生きてるんだ!
―――いいぞー!とっとと殺せ!
―――勇者さまぁ!
―――殺っちまえ!

「このダークエルフは多くの人間を騙して人間と偽って生きてきました。恐らく人間に対する襲撃を企てていたに違いありません!僕がこのタイミングを選んだのはダークエルフで、魔神の妹である、ミーシェに見せしめるためです!見ているか?!魔神の妹ミーシェ!これからお前と同じ悪であるダークエルフを…処刑する!」

再び歓声が町中を埋めつくした。


ふっ…予定通りだ。
天城光祐は歓声で湧く町を見下ろしながら笑みを浮かべた。


ユウ&ミーシェside

広場での出来事が起きる少し前。
優とミーシェは宿屋でくつろいでいた。
「ユウ、この後一緒に服買いに行こ?昨日気になる店見つけたんだ。」
「ん。いいよ。」
「ありがとう。ユウにも似合いそうなのあったから私がコーディネートしてあげるよ。」
「マジで?」
ミーシェが選んでくれるのか…。楽しみだな…。
「そうと決まれば早速行こうぜ?」
「うん。」
バンッ!
優達の部屋のドアが勢いよく開いた。
「!…誰だ?!」
「はぁ…はぁ…」
息を切らして入ってきたのはスコットさんだった。
「スコットさん?」
「はぁ…はぁ…優くん、ミーシェさん。…カナが…!カナを…助けてください!お願いします…。」
「…ミーシェ、冷たい水を。」
「う、うん。」

「落ち着きましたか?」
「すいません…。緊急事態なんです!」
「何があったんですか?カナに何かあったんですか?」
「カナが…勇者に捕まってしまったんです…。」
「勇者に?」
「はい…。私の所にやって来て…ダークエルフは悪の象徴だから差し出せと…。」
「それで?勇者は今どこに?」
「私の店です。今勇者が私の所を占拠してます…。このままでは…このままではカナが…!お願いします!頼めるのはあなた達しか居ないんです!助けて貰ってまたこんなこと頼むのは本当に申し訳ないです…。でも…カナは…カナは私の大事な…娘のような存在なんです…!お願いします…!カナを!」
「…ミーシェ、スコットさんのこと頼む。」
「!…優くん…。」
「断るわけないでしょう?あなたは魔神の妹であるミーシェのことを受け入れてくれた。カナを受け入れてくれた。それに俺自身スコットさんの悲しむ顔は…見たくないです。」
「ありがとうございます…本当に…!」
「悪いなミーシェ。服屋に行くのはこれが終わったあとでもいいか?」
辺りの空気が震える。
「うん。…ユウ…怒ってるね…。」
「…当たり前だろ?こんなことを言い出すのは天城ぐらいだ。ちょっと行ってくる。」
「待って。」
「ミーシェ?」
「私も行く。」
「ミーシェ…。」
「カナちゃんを傷つけたんでしょ?それにスコットさんも。許せない。私たちの恩人に…こんなことして…。」
「ミーシェ…。」
「大丈夫。勇者はユウにあげる。本当は私が殺したいところだけど…ユウのだもんね。」
「分かった。スコットさん。直ぐに戻ってきます。ここで待っていてください。」
「分かりました。優くん、ミーシェさん。カナを…どうかカナをお願いします…!」
「はい…!」

―――皆さん、話を聞いてください!
天城の演説が町中に響き渡った。

「「「!」」」

「…やっぱり天城だったか。」
「ユウ、急ごう。」
「ああ。」

宿屋を出て、ビルの方を見ると縄で縛られたカナとその隣で演説たれる天城がいた。
「カナちゃん…!」
「…ミーシェはビルの中から行け。」
「ユウは?」
「俺は…外から行く。」


勇者side

「んー!んー!」
「ふん…まだ抵抗するか…。」
(おじさん…嫌だよ…。まだ死にたくない…!)
「さて、長らく喋ってしまい、すいません。そろそろ終わらせましょう。」
歓声が包んだ。
カナの口の拘束が外された
「…なんで!?なんでこんなことするの?!おじさんは?!スコットおじさん!!」
「黙れ!」
「きゃっ…」
天城はカナの髪を掴み持ち上げた。
「離して!やだ!おじさん!お姉ちゃん!お兄ちゃん!」
「上がいるのか?…それもダークエルフの可能性があるな…。まあいい。お前を殺せばわかる事だ。」
「うう…助けて…スコットおじさん…。」
「ふん…無駄だ。」
「ミーシェ…お姉ちゃん。」
「!…なんだと?まさか…!」
「…ユウお兄ちゃん…。」
天城の背中をとてつもない寒気が襲った。
突如空気が重くなる。
「…今…なんて?」

「…よっと。」
フードを被った男が天城の前に降り立った。
「!」
「…何やってんだ?お前。」
「と、藤…山?」

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暑い…。
もう9月なのにこの暑さはなんなんですかね…?
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