Umbrella

高嶺

Re

それは確かに分かった。



あ、涙が出るーーーーー




ひと粒の滴に全てをのせて、頬をつたった。


気がつけば、エマさんがそこにいた。

エマさんはそのキラキラした瞳をさらに
うるわせて、こらえきれないように呟いた。

「雫ちゃんーーー」

エマさんに抱きしめられて、唇が震えた。

抑えが効かなくなって、次から次へと
涙がおちる。


突然の罪悪感に苛まれて、私はあわてて
笑ったふりをした。

泣いちゃいけないのにーーーーー



顔は笑っているのに涙が止まらなくて、
コントロールできない感情に振りまわされる。


私以上にエマさんが泣くから
それが嬉しくて、止まらなくて。



いじめの過去に足を引っ張られて、
私の時は止まったままだった。

だけど今、時計の針が動きだした気がした。




ぼろぼろと泣く私たちを、カウンターから
さくらんぼさんが穏やかな顔で見ていた。



「大丈夫、大丈夫」

密かに私はいつもの言葉をつぶやいた。



心のぐちゃぐちゃは、消えないままだ。

私にはまだ、秘密がある。

それ故に2人のことを完全に信じることが
できていない。


だけど、大丈夫だよ。





コーヒーの香りが店いっぱいに広がって、

なぜかデジャヴュのように、記憶の端に
あの日のブルーの傘があざやかに
きらめいた。


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