Umbrella

高嶺

ドロップ 【7】

いじめが無くなってからというもの、
青くんと話す機会がなくなってしまった。

廊下ですれ違っても、彼は目を伏せる。

ふいに目が合うと、気まずそうに苦笑いをして
見なかったふりをするのだ。



彼に何かあったんだろう。


今度は私が、助けなきゃ。




私は放課後、青くんの教室を訪ねた。
彼の目が明らかに私を拒絶している。

それでも、青くんは私を救ってくれた人
だから。


「青くん、話いい?」

青くんが周りをうかがうように、落ち着きなく
目を泳がせた。

「西野、ごめん」


突然の言葉に驚いて、私は何も言えない。

ごめん、って何?


そして彼は目を逸らし、呟くように
でも確かに言った。


「俺は最低だよ」



そんなことない、そう口にしようとした途端
全身に鳥肌がたった。


「西野ー」


香水の匂いがした。

この声って。


私の名を呼ぶその声は紛れもなくあの彼女
のもので、私はそれを覚えてる。

少し高い声で、甘ったるく、馬鹿にしたように
そうやって私のことを呼ぶ時はーーーーー


いじめの記憶が蘇る。


ねえ、もしかしてーーーーー



分かりやすすぎるくらい嫌な予感がした。

私は慌てて振りかえる。

「青くん!」


助けてくれるんでしょう?



彼の目に罪悪感と恐怖が見えた。

苦しそうに顔を歪め、そして彼は





私を突き飛ばした。


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