奴ら(許嫁+幼馴染諸々)が我が家に引っ越してきたのだが…

和銅修一

忠告と条件


 親父と話していても拉致があかない。あれは話をはぐらかすことにおいては達人の域に達している。
 ならば本人に聞いてみるのが一番だ。
「少し話がしたいんだけも入ってもいいか?」
 自分の家だというのにこんなにも気を遣わなくてはいけないとは何とも妙な気分だが今に始まったことではない。
「入って良いわよ」
 という声を確認してからドアノブを回す。経験上、こうしたやり取りをしないとアクシデントが起こる。
 今回はしっかりと確認したおかげで何も起こらず、部屋に入ることに成功。そこにな荷ほどきをする琴陵の姿があった。
「荷物が今日届いたから模様替えをしていたの。少し手伝ってくれない?」
「随分とカラフルなんだな」
 水色のカーテンに黄色い花瓶、緑色のカーペットに紫色のベットと扉を開くとそこには色とりどりの物が部屋に配置されていた。
「パワースポットであるこの地のエネルギーを取り入れるにはこれが一番なのよ。親切心で他の住民にも教えたのだけど丁重に断られたわ」
 女子の部屋というのは総じて男のそれとは比べ物にならない程片付いているイメージが強く、天坂家にいる面々もそうなのだが彼女の場合は風水を気にしてかカラフルな物をそこかしこに置いているので一見散らかっているようにも見える。
「そりゃそうだろ。それよりもこれからどうするつもりだ?」
「無論、このパワースポットの管理。超常的な力を欲しがる者は腐る程いるわ。ここに私が住むことでそれを阻止するの。まだ学生だからずっとここにいるわけにはいかないけど」
「何のためにそんな……」
「それが私の使命だから。言っておくけど
、邪魔はしないで。いくら天坂 晋也の息子でもその時は容赦しないから」
 その瞳は冷徹なもので言葉に重みがあった。実際にその場面になったら確実にそうするというのがビシビシと伝わってくる。
「わかった。邪魔はしないけど問題は起こさないでくれよ」
 我が家には生徒会長もいる。とばっちりを受けるのだけは勘弁だ。
「わざわざそれを言いに来たのか?」
「いや、そのパワースポットがどうのってのは学校では口にするなよ」
「どうして? 貴方に指図されなくちゃいけないの」
「一応ここは俺の家だからそんなことを広められると迷惑なんだよ。泊めてやるんだからこのくらいの頼み聞いてくれ」
 ただでさえこの我が家には五人もの異性が住み込んでいるのに更に一人追加している。いくら我が家が虹咲グループの社長からのプレゼントとはいえこれ以上増えては堪ったものではない。
「善処するわ。それと、荷ほどきはもう終わったから出て行ってくれる?」
 釘は刺しておいた。しかし、まるで糠に釘を打ったような感じであるので保険をかけておきたい。
 そこで琴陵の部屋を後にした興は次なる戸を叩いた。
「少し頼みごとがあるんだけど、少し良いか?」
「何?」
 赤石 晴奈。
 一年生ながらもテニスで大活躍らしく毎日忙しそうに練習している。同学年の彼女に監視役を頼み逐一報告してもらおう。
「琴陵のことだけど同じ一年のお前にあいつを頼みたいと思ってーー」
 ここまできて何だがここにいる後輩は先輩に対して無礼にも程がある。晴奈は琴陵よりもマシだとは思うがこいつもこいつで愛想が悪いというか何というか……。素直に俺の言葉に耳を傾けることはないのだが意外にも今回は即答してくれた。
「良いよ。けど条件が一つ」
 自ら扉を開け放ち、神妙な面持ちでその条件を口にした。
「私の彼氏になって」



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