少女寿命

こむぎ子

散れども枯れども花は芸術的なのに。(後編)

出会いを植え、思い出を咲かせ、未練を残して枯れた貴方へ。
もう一度、花を咲かせてやろうか。

孕んだ愛を蔑んで、さよならを伝える気もなく、でも金もないので暫く放置、堕ろせるようになったら事故のように転んでやろう。そう決めていた。調べたら自然流産は15%、
期待するには低い数値だった。
悪阻と吐き気と味覚の変化に戦いながら、その日が来るのを待っていた。

失敗した。
あたし感じたの。これが正しいのかって。
あなたが子供を堕ろした後愛してくれるのかって。
不安になったの。だったらあなたが一部分でも含まれているこの子を育てた方がいいんじゃないかって、でも、でもそしたら純粋なあなたに嫌われる、棄てられる、それは、それはそれはそれはとてもとても嫌、怖い、辛くて痛い。イタイ!!
頭が回らない。どうすればいいのかわからない。でも、だからでも、でも、????????

「今更そんなイイコになれるわけないじゃん。」

血腥い、公衆トイレ。
あたりに飛び散る血と、汗と、涙と、嗚咽と、泣く声が段々弱る赤子。
笑いも、なにも、よくわからなかった。
正解も、愛も、何も無かった。
地に足がつかない気分。
これで貴方に愛されるという気すら起きない。気味の悪い夢だろうと、現実だろうと、受け取りたくなかった。
ふらつきながら、その場を逃げた。
声が遠のく。幻聴だと言い聞かせた。
帰り道、あの時のように白い花が咲いていた。そしたらどっとよくわからないものが内側から溢れて、その場にへたりこんで、花を抜いて地に弱々しく叩いて泣いた。
初めて痛みを認識出来た気がした。


一週間後に、見に行った。
"あれ"は、腐っていた。
"あれ"は、彼と培った、あたしの中で確かにいた"あれ"は、
たぶん、愛だったんだろう。
凹んだ腹をさすって「ばいばい」と何かに伝えて「…おかあさんも、おとうさんとそっちに行くからね」と残して、去った。

風の声で、笑い声が聞こえた気がした。

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