海蛇座の二等星
story.9 向かった先は罠
「涙!!」
俺を呼ぶ声が後ろから聞こえた。
切羽詰まった声だが聞き覚えのある声に慌てて足を止めて振り返る。
「依!!無事か!!」
思った通り、そこには肩で息をしている依が立っていた。
「よ、よかった…。俺、もう会えないと思ったよ…」
涙ぐむ依をどつく。
「痛いよ、もー涙だって泣いてんだろ」
「え?」
目元を拭うと依の言う通り、泣いていた。
「なに、気づいてなかったん?」
意地の悪い笑顔を見せる依をまたどつくが依は笑うだけだった。
「二人を探そう」
ようやく持ち直してきたときに依がそう言って揃って前を向いた。
そしてようやく、さっき見た化け物の気配に気がつく。
「よ、依…気づいてっか?」
「え…なに…?」
俺の様子がおかしくなったことに気がついた依だが、化け物の気配は分かってない。
「依!走れ!!」
化け物の気配が少ない方へ走り出す。
「捕まれば死ぬぞ!!」
依もさすがに気がついたらしく、表情に焦りと恐怖が浮かんだ。
最早隠れる気もないのか、化け物は姿を現し、飛びかかってくる。
思ってた以上に速く、避けるのが精一杯だった。
「涙…!囲まれた!!」
依の声にハッとして周りを見ると化け物──二十くらいだろうか、がグルッと囲んでいた。
『武器を創れ。お主の大切な物に魔力を注いでイメージするのだ』
狐時の声が聞こえた。
自分の中から聞こえるなんて不思議な感覚だ、なんて場違いなことを考えた。
「そんなのどうやるんだよ!てか魔力ってなんだよ!」
思わず怒鳴るとキョドった声がまた聞こえた。
『お、お主はイメージするだけでよい。どんな武器を創造するかだけ決めてくれ』
問答無用で襲いかかってくる化け物。
猶予はない。
首につけていたネックレスを引きちぎって握りしめる。
十字架から連想出来ること…。
敵を避けながら必死に考えるがなにも思い浮かばない。
ただ、幸運にもこんなときに子ども時代の記憶を思い出した。
…祖父ちゃんの家にあったちょっと大きめの十字架を俺はなんて言ったんだったか。
確か両手に持って振り回して危ないって怒られた…。
「あ」
思い出した。
これで行こう。
それを強くイメージする。
一体を跳んで避ける。
が、失敗だった。
読んでいたのか上に二体が待ち構えていた。
このままじゃ捕まる…っ!!
「狐時!まだ──」
『完成した。形成開始』
狐時が俺に被せるように呟くと手の中のネックレスが熱くなったような気がして驚いて手を開く。
すると、イメージ通りの一本の剣が現れた。
勢いよく振って二体を同時に弾き飛ばす。
間一髪だった。
心臓が早鐘を打っている。
『十字架を剣として振り回すなんてクソガキだったのだな』
この状況を気にもせずははっと笑う狐時に拍子抜けして脱力してしまう。
『ぬ、それで良い。お主は力が入りすぎなのだ。りらっくすってやつだ』
緊張が狐時にも伝わっていたらしく、ばつが悪くなった俺はうるせぇよと悪態をついた。
あらためて自分の手に持つ剣を見つめる。
黒い刀身、柄には宝石が埋め込まれている。
だが──
「これ、ネックレスに戻るよな!?」
しょうもないかもしれないがめちゃくちゃ重大な案件である。
「涙!んなこと言ってる場合か!?」
依の声に慌てて気を引き締めるが、んなことを言ってる余裕があるのだ。
「いやだって…なんか、遅くねぇか?」
敵が唐突に減速したのだから。
『鬼の力を使い始めてお主が速くなったのだ。ちなみにちょっとした怪我なんかもすぐ治るようになるぞ』
なるほど…確かによく見れば依の動きも遅い。
今なら、何でも出来そうだ。
『気を付けろ。鬼の力を使うと気分がハイの成りやすいみたいだ。それに、初めての同期だから、長くは持たない』
狐時の忠告に剣を持つ手に力をこめ意識を研ぎ澄ませた。
俺を呼ぶ声が後ろから聞こえた。
切羽詰まった声だが聞き覚えのある声に慌てて足を止めて振り返る。
「依!!無事か!!」
思った通り、そこには肩で息をしている依が立っていた。
「よ、よかった…。俺、もう会えないと思ったよ…」
涙ぐむ依をどつく。
「痛いよ、もー涙だって泣いてんだろ」
「え?」
目元を拭うと依の言う通り、泣いていた。
「なに、気づいてなかったん?」
意地の悪い笑顔を見せる依をまたどつくが依は笑うだけだった。
「二人を探そう」
ようやく持ち直してきたときに依がそう言って揃って前を向いた。
そしてようやく、さっき見た化け物の気配に気がつく。
「よ、依…気づいてっか?」
「え…なに…?」
俺の様子がおかしくなったことに気がついた依だが、化け物の気配は分かってない。
「依!走れ!!」
化け物の気配が少ない方へ走り出す。
「捕まれば死ぬぞ!!」
依もさすがに気がついたらしく、表情に焦りと恐怖が浮かんだ。
最早隠れる気もないのか、化け物は姿を現し、飛びかかってくる。
思ってた以上に速く、避けるのが精一杯だった。
「涙…!囲まれた!!」
依の声にハッとして周りを見ると化け物──二十くらいだろうか、がグルッと囲んでいた。
『武器を創れ。お主の大切な物に魔力を注いでイメージするのだ』
狐時の声が聞こえた。
自分の中から聞こえるなんて不思議な感覚だ、なんて場違いなことを考えた。
「そんなのどうやるんだよ!てか魔力ってなんだよ!」
思わず怒鳴るとキョドった声がまた聞こえた。
『お、お主はイメージするだけでよい。どんな武器を創造するかだけ決めてくれ』
問答無用で襲いかかってくる化け物。
猶予はない。
首につけていたネックレスを引きちぎって握りしめる。
十字架から連想出来ること…。
敵を避けながら必死に考えるがなにも思い浮かばない。
ただ、幸運にもこんなときに子ども時代の記憶を思い出した。
…祖父ちゃんの家にあったちょっと大きめの十字架を俺はなんて言ったんだったか。
確か両手に持って振り回して危ないって怒られた…。
「あ」
思い出した。
これで行こう。
それを強くイメージする。
一体を跳んで避ける。
が、失敗だった。
読んでいたのか上に二体が待ち構えていた。
このままじゃ捕まる…っ!!
「狐時!まだ──」
『完成した。形成開始』
狐時が俺に被せるように呟くと手の中のネックレスが熱くなったような気がして驚いて手を開く。
すると、イメージ通りの一本の剣が現れた。
勢いよく振って二体を同時に弾き飛ばす。
間一髪だった。
心臓が早鐘を打っている。
『十字架を剣として振り回すなんてクソガキだったのだな』
この状況を気にもせずははっと笑う狐時に拍子抜けして脱力してしまう。
『ぬ、それで良い。お主は力が入りすぎなのだ。りらっくすってやつだ』
緊張が狐時にも伝わっていたらしく、ばつが悪くなった俺はうるせぇよと悪態をついた。
あらためて自分の手に持つ剣を見つめる。
黒い刀身、柄には宝石が埋め込まれている。
だが──
「これ、ネックレスに戻るよな!?」
しょうもないかもしれないがめちゃくちゃ重大な案件である。
「涙!んなこと言ってる場合か!?」
依の声に慌てて気を引き締めるが、んなことを言ってる余裕があるのだ。
「いやだって…なんか、遅くねぇか?」
敵が唐突に減速したのだから。
『鬼の力を使い始めてお主が速くなったのだ。ちなみにちょっとした怪我なんかもすぐ治るようになるぞ』
なるほど…確かによく見れば依の動きも遅い。
今なら、何でも出来そうだ。
『気を付けろ。鬼の力を使うと気分がハイの成りやすいみたいだ。それに、初めての同期だから、長くは持たない』
狐時の忠告に剣を持つ手に力をこめ意識を研ぎ澄ませた。
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