海蛇座の二等星
story.6 エマージェンシー
捲れあがった道路。
横転した車。
子どもの泣き叫ぶ声。
砂埃と瓦礫の山で視界は悪く、さっきまで友人と歩いていた道とはどうしても合致しなかった。
灰色の世界。しかし律には色づいた美しい世界に見えた。
『君はどこに向かおうとしているんだ?』
夜翔が話しかけてくる。
不思議な感覚だ。自分の内側から声が聞こえるなんて。
「んー…楽しいこと、探す。丁度今、律のこと囲んでる奴ら、殺すとか。ね、どうすればいいと思う」
鬼の力だろう。
何かが律を狙っている、ということが感知できる。
しかし気づいていることを相手が察したのか、一斉に飛びかかってきた。
おっと、緊急事態みたいだ。
ざっと十体。
それぞれ龍、虎、鳥、亀を模したような見た目の化け物が人間のころなら視認すら出来ないスピードで襲いかかってくる。
が、全てを見極め、なんなくかわす。
『簡単さ。君にとって思い入れのある物に力をこめるだけでいい。例えばほら、君のポケットに入っている物とかね』
悠長に話す夜翔。
言われた通りポケットを探ってみると鉛筆と消しゴムが入っていた。
「あぁ、朝のやつだ」
筆箱に戻すのがめんどくさくてポケットに入れていたが、忘れてた。
『じゃあ鉛筆を使おう。想像して。どんな武器を作る?君の思うままに武器は創造出来る。想像で創造するんだ』
顔は見えないが夜翔がにやけてるような気がする。
「それ、駄洒落の、つもり」
(化け物の攻撃を)かわしながら(夜翔に)突っ込む。
それに対し、夜翔は肯定しない。が、否定もしなかった…。
「ま、いいや。こんなの、どうかな」
想像のままに、鉛筆を宙に放る。
「巨大化」
そう呟くと、重力に従って落ちてきた鉛筆が槍ほどの長さに変化した。
『へぇ…面白いね。それじゃ残りの説明は動きながらにしよっか!』
右から二体、後ろから一体、左に一体。
ギリギリまで動かず攻撃の射程圏内に入ると同時に鉛筆を大きく振ってあるモノは薙ぎ払い、またあるモノは鉛筆の芯で切り裂いた。
鉛筆に殺傷能力があるとは。
『君の能力、巨大化は君の力次第でどこまでも大きくすることが出来る。また、訓練すれば軽量化なんかも出来るかもしれない』
ウエストポーチからもう一本取り出して今度は無言で巨大化させる。
残り八体。
二本にすると格段に攻撃速度と回数が上がる。
次々に化け物を血祭りに上げた。
『そして武器の対象は君の思い入れがあるもの。鉛筆は普段から使っていたみたいだから創造できたみたいだね』
残り三体。
『あぁそれから、僕が宿ったことで君は魔力というものを生成出来るようになった。武器に魔力付与なんかしてみるといいかもね』
それを聞いたときには残りの一体にとどめをさしてしまった。
「夜翔、言うの、遅すぎる」
ちょっと試してみたかった…。
鉛筆を振って化け物の赤い体液を落とす。
「いっやーー君すごいねぇ!」
突然、頭上から声が聞こえた。
勢いよく仰ぐと暗くてよく見えないが夜翔によく似たシルエットが浮いていた
…気配がなかった。
「誰。降りてこい」
「君が降ろしてみなよ」
売り言葉に買い言葉。
だけど確かにそうだ、と思った。
ポケットに入っていた消しゴムを手にとる。
しまおうとしていた鉛筆の一本を短く太く変えて地面に突き刺し片足をかけたら、それを最大限に伸ばす。
それと同時に消しゴムを投げておく。
加減がわからないから最大限に伸ばしたが、頭上五メートルほどにいた相手よりさらにニ、三メートル上で止まった。
「なっ」
そいつの顔がここからならよく見えた。
灰色の髪に四本角。
律は直感的に思った。
こいつは人間を止めたクチではない、と。
驚愕の色を見せる相手に対し、足場から飛び下りてもう一本の鉛筆を振りかざす。
「なーんてね。そんなみみっちい攻撃が当たるわけないだろう?」
そいつは予想通り、律よりも上に回避行動をした。
「律のこと、な め す ぎ 」
あえて一音ずつはっきり口にして、落下しながらそいつを見上げた。
正確にはそいつの頭上に丁度消しゴムが到達したのを確認した。
さっき鉛筆を放り投げた時点で離れていても能力を使えるのは確認していた。
「巨大化」
声に出して、消しゴムと手に持っている鉛筆に能力をかける。
急に重量の増えた消しゴムは放物線を描くことをやめ、真下にいるそいつを巻き込んで落下する。
そして、手にもっていた鉛筆はさっきと同じように太くすることで足場になり、自分自身の墜落は免れた。
そして一つ目の足場を槍状に戻して手に取るとまた飛び下りた。
「どう、ちゃんと降ろしてあげたよ」
消しゴムに潰されているそいつの顔の真横に鉛筆を突き刺して見下ろす。
怯えた顔のそいつは降参!降参!と喚き散らした。
横転した車。
子どもの泣き叫ぶ声。
砂埃と瓦礫の山で視界は悪く、さっきまで友人と歩いていた道とはどうしても合致しなかった。
灰色の世界。しかし律には色づいた美しい世界に見えた。
『君はどこに向かおうとしているんだ?』
夜翔が話しかけてくる。
不思議な感覚だ。自分の内側から声が聞こえるなんて。
「んー…楽しいこと、探す。丁度今、律のこと囲んでる奴ら、殺すとか。ね、どうすればいいと思う」
鬼の力だろう。
何かが律を狙っている、ということが感知できる。
しかし気づいていることを相手が察したのか、一斉に飛びかかってきた。
おっと、緊急事態みたいだ。
ざっと十体。
それぞれ龍、虎、鳥、亀を模したような見た目の化け物が人間のころなら視認すら出来ないスピードで襲いかかってくる。
が、全てを見極め、なんなくかわす。
『簡単さ。君にとって思い入れのある物に力をこめるだけでいい。例えばほら、君のポケットに入っている物とかね』
悠長に話す夜翔。
言われた通りポケットを探ってみると鉛筆と消しゴムが入っていた。
「あぁ、朝のやつだ」
筆箱に戻すのがめんどくさくてポケットに入れていたが、忘れてた。
『じゃあ鉛筆を使おう。想像して。どんな武器を作る?君の思うままに武器は創造出来る。想像で創造するんだ』
顔は見えないが夜翔がにやけてるような気がする。
「それ、駄洒落の、つもり」
(化け物の攻撃を)かわしながら(夜翔に)突っ込む。
それに対し、夜翔は肯定しない。が、否定もしなかった…。
「ま、いいや。こんなの、どうかな」
想像のままに、鉛筆を宙に放る。
「巨大化」
そう呟くと、重力に従って落ちてきた鉛筆が槍ほどの長さに変化した。
『へぇ…面白いね。それじゃ残りの説明は動きながらにしよっか!』
右から二体、後ろから一体、左に一体。
ギリギリまで動かず攻撃の射程圏内に入ると同時に鉛筆を大きく振ってあるモノは薙ぎ払い、またあるモノは鉛筆の芯で切り裂いた。
鉛筆に殺傷能力があるとは。
『君の能力、巨大化は君の力次第でどこまでも大きくすることが出来る。また、訓練すれば軽量化なんかも出来るかもしれない』
ウエストポーチからもう一本取り出して今度は無言で巨大化させる。
残り八体。
二本にすると格段に攻撃速度と回数が上がる。
次々に化け物を血祭りに上げた。
『そして武器の対象は君の思い入れがあるもの。鉛筆は普段から使っていたみたいだから創造できたみたいだね』
残り三体。
『あぁそれから、僕が宿ったことで君は魔力というものを生成出来るようになった。武器に魔力付与なんかしてみるといいかもね』
それを聞いたときには残りの一体にとどめをさしてしまった。
「夜翔、言うの、遅すぎる」
ちょっと試してみたかった…。
鉛筆を振って化け物の赤い体液を落とす。
「いっやーー君すごいねぇ!」
突然、頭上から声が聞こえた。
勢いよく仰ぐと暗くてよく見えないが夜翔によく似たシルエットが浮いていた
…気配がなかった。
「誰。降りてこい」
「君が降ろしてみなよ」
売り言葉に買い言葉。
だけど確かにそうだ、と思った。
ポケットに入っていた消しゴムを手にとる。
しまおうとしていた鉛筆の一本を短く太く変えて地面に突き刺し片足をかけたら、それを最大限に伸ばす。
それと同時に消しゴムを投げておく。
加減がわからないから最大限に伸ばしたが、頭上五メートルほどにいた相手よりさらにニ、三メートル上で止まった。
「なっ」
そいつの顔がここからならよく見えた。
灰色の髪に四本角。
律は直感的に思った。
こいつは人間を止めたクチではない、と。
驚愕の色を見せる相手に対し、足場から飛び下りてもう一本の鉛筆を振りかざす。
「なーんてね。そんなみみっちい攻撃が当たるわけないだろう?」
そいつは予想通り、律よりも上に回避行動をした。
「律のこと、な め す ぎ 」
あえて一音ずつはっきり口にして、落下しながらそいつを見上げた。
正確にはそいつの頭上に丁度消しゴムが到達したのを確認した。
さっき鉛筆を放り投げた時点で離れていても能力を使えるのは確認していた。
「巨大化」
声に出して、消しゴムと手に持っている鉛筆に能力をかける。
急に重量の増えた消しゴムは放物線を描くことをやめ、真下にいるそいつを巻き込んで落下する。
そして、手にもっていた鉛筆はさっきと同じように太くすることで足場になり、自分自身の墜落は免れた。
そして一つ目の足場を槍状に戻して手に取るとまた飛び下りた。
「どう、ちゃんと降ろしてあげたよ」
消しゴムに潰されているそいつの顔の真横に鉛筆を突き刺して見下ろす。
怯えた顔のそいつは降参!降参!と喚き散らした。
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