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図書室でははしゃいではいけません

「それで? 次の日常の塔③の場所はどこなんだ?」

 ほんの10分たらずで日常の塔②をクリアしてしまったので、まだまだ時間に余裕はある。
現在時刻も10時前であり、今日中に日常の塔④までクリアするという高すぎる目標を達成できるかもしれない気がしてきた。

「次の日常の塔③は、反対側の古書部屋だよっ」

「このまままっすぐに進んで、5、600メートル先だねっ」

「案外短いな。まぁ、図書室としては広いと思うが……」

「廊下を出た反対側も同じく図書室になっていますので、広さは全部でこの部屋の倍になります。……ちなみに、日常の塔④は隣の部屋にある購買コーナーの入口です」

「購買!? この図書室って、本が買えるのか!?」

「いいえ、あるだけです。この校舎がダンジョンに認定されたさいに、すべての人は排除されています……」

「昔はここに通って勉強するのが普通だったんだけどね?」

「だいたい10ヶ月程前に、最初に始まりの塔クリアした人が現れてから、次の世界に行くための塔ができたの……」

「神様のお告げがあって、この校舎は封鎖されたってわけ……」

「それまでは……別の世界に行くのも簡単だったんだけど、塔をすべてクリアしなければ、次の世界に行けなくなってしまったのよ……」

「そんな事があったのか……(それってつまり、ゲームが始まったからという事か? 俺たちの存在が、この世界をかえてしまった?)」

「しかしそれも、おそらくラン様がクリアなされれば解決するはずです……」

「ヒカリ、どういう意味だ?」

「簡単な話です。この世界から次の世界に行くのに塔をクリアしなければならなかったのは、プレイヤーと呼ばれる神が招いた人たちへの試練です。つまり、最後のプレイヤーであるラン様がクリアなされば、試練である塔は必要がなくなるというわけです」

「俺って、ヒカリにプレイヤーだって話したっけ!?」

 俺はヒカリにプレイヤーだって言ってないはずだ。
むしろ、言ってはいけないことだと思っていたくらいなのだ。

「いいえ、聞いてはおりません……」

「ならなんで俺がプレイヤーだってわかったんだ?」

 何か判断基準になることがあったのだろうか?

「それはかんたんだよ~」

「うんうん。私たちもわかってたもん」

「クーもキッカもか!? どうして……?」

「それはラン様が、スキルという言葉をお使いになられたからです……」

「この世界の人なら、スキルって言葉はあまり使わないんだよ」

「武器スキルは武器術アーツ、魔法スキルは魔術マギって呼ぶのが普通なんだよ?」

「そうだったのか……」

「なので、ラン様がプレイヤーだと言うのはすぐにわかりました。だからこそ、今の仮説をたてたのです……」
「なるほどな……。つまり、この世界から次の世界に行けないのは、俺のせいだったのか……」

「まだ確定ではありませんが……」

「…………わかった。だったらなおさら早くクリアしないとだなっ! そうと決まれば話は早い。古書部屋までダッシュだ!」

「ダメです!」

 走りだそうとした俺をヒカリが止める。

「何でだよ? 急いだ方がいいだろ?」

「ここは図書室なのです……はしゃいではいけませんっ!」

「ちょっとくら「ダメです!」すみません……」

「わかったならよろしいです。さぁ、行きましょう?」

「「かしこまり~」」

「わかったよ……」

 俺たちは、歩いて古書部屋に向かった。

・・・
・・


「さてと、ついたわけだが……どこがランダムの入り口だ……?」

 たどり着いた古書部屋への入り口は、全部で三つあった。

「左から順番に、「ランダム」「バラバラ」「普通」ってなっていたはずだよっ」

「ここもやっぱりランダムだよね?」

「そうだな。……ってことは、一番左か……。早速行くぞ? 準備はいいか?」

「大丈夫ですラン様。いつでもどうぞ……」

「いつでもおっけーだよっ」

「私も準備万端ですっ」

「よしっ! それじゃあ行くぞっ!」

 俺は扉を開いて中に入った。

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