異世界モンスターブリーダー ~ チートはあるけど、のんびり育成しています ~
キャロライナの訓練
アフロディーテの様子を確認した後はキャロライナの番である。
ところでキャロライナは普段ボールの中で何をしているんだろうな?
なんとなく優雅に読書を嗜みながら紅茶を飲んでいるイメージがあるが、実際のところはどうなのだろう。
普段のミステリアスな言動も相まって、彼女のプライベートは謎に包まれている。
何故だろう。
確かめるのが少し怖くなってきたわ……。
けれどもまあ、何時までも尻込みしていても仕方がない。
せっかく手に入れた千載一遇のチャンスだし、さっそく確認しに行くことにしよう。
「ヒャクジュウイチ……ヒャクジュウニ……ヒャクジュウサン……ヒャクジュウシ……ヒャクジュウゴ……」
暫く歩くと黙々と数字を読み上げるキャロライナの声が聞こえてきた。
声のした方に足を延ばすと……驚きの光景がそこにあった。
「ふんっ。もうへばったのですか」
キャロライナの前には武器の素振りを続けるゴブリンナイトたちの姿があった。
よほどハードなトレーニングをしているのだろう。
シエルの作った《アイアインメイス》を振るうゴブリンたちは滝のように汗を流していた。
「この程度の訓練に付いてこれないとは……ソータさまの眷属として失格ですね」
どうやらキャロライナはゴブリンナイトの訓練を行ってくれているらしい。
特にモンスターを倒していないのに最近ゴブリンたちのレベルが上がっていて不思議に思っていたのだが……ようやく謎が解けた。
ボールの中でもキャロライナは真面目なんだな。
「そこ! 誰がサボッて良いといいましたか!」
「ゴブッ!?」
キャロライナはブーツを履いた足でゴブリンナイトの1匹を足蹴りにする。
おいこら! ゴブリン共!
メイド服を着た美少女にブーツを履いたまま蹴ってもらえるとか……ご褒美過ぎるだろ!
辛抱たまらん! そこを替われ!
我慢できなくなった俺はすかさずそこで《精神操作》のスキルを使用する。
システムメッセージ
(対象となる魔物を選んで下さい)
アフロディーテ
キャロライナ・バートン
シエル・オーテルロッド
ワーウルフ
アダマイトゴーレム
ケダマロ
→ゴブリンナイト
ライトマッシュ
キツネビ
マッドマッシュ
ノータイムでゴブリンナイトを選択した俺は、そのまま精神が移動するのを待つのであった。
~~~~~~~~~~~~
次に意識が戻った時……俺の精神はゴブリンナイトの1匹と同化していた。
「ゴ、ゴブ!?」
な、なんだよ此処は……。
理由は分からないが押しつぶされそうなほど体が重い。
俺の体は立っているのが、やっとという感じでヘトヘトになっていた。
「そこのお前……」
「ゴブッ!?」
「……誰が手を休めて良いと言いましたか?」
普段の俺に向けているような尊敬の色は微塵もない。
キャロライナの眼差しは完全に自分より格下の……汚いものを見るかのようなものであった。
「そろそろ連帯責任を取らせましょうか。罰としてこれからは、重力5倍から10倍に引き上げることにします」
キャロライナがパチンと指を鳴らした次の瞬間。
体にかかっていた負荷が倍増して……堪らず俺は地面の上に這いつくばってしまう。
そうか……!
そういえば以前にキャロライナから聞いたことがある。
カプセルボールの中は時間の流れがゆっくりとしている分……トレーニングをしても効果を得にくい環境にあるらしい。
キャロライナは通常のトレーニングでは成果を得ることが出来ないと考え、魔法を使って重力による負荷を向上させたのだろう。
「ゴブッ……!」
いやいや。
それにしても……流石にこれはハード過ぎないか?
重力による負荷が5倍から10倍に上げられたことによりトレーニングは既に拷問の域に達していた。
情けなく地面に蹲っているのは俺くらいだが、他のゴブリンナイトたちも立っているのがやっとという感じであった。
「それで……何時までお前は寝ている気だ!?」
キャロライナは地面を這う俺の顔面に向かって容赦のない足蹴を浴びせにかかる。
「ゴブゥ……❤」
革靴で顔を踏みつけられた俺は、思わず気色の悪い声を漏らしてしまう。
地面に転がる俺に向かって勢いよく足を振り上げるものだから……メイド服のスカートからはキャロライナの下着がチラチラと見えてしまう。
色は黒。
ガーターベルトと組み合わされたキャロライナの黒下着は鬼に金棒!
地面に這いつくばりながらも見上げるキャロライナのスカートの中からは、エロの暴力といった光景が広がっていた。
このスカートの中に永住権を取得したい。
「クッ! なんなんでしょう……。この不快な視線は……!?」
メイド服の美少女に蔑まれながらもパンツを見れる喜び……!
キャロライナに踏みつけられる度に、体の奥底から芽生えてはいけない性癖が湧き出してくるかのようである。
「そこのお前……どうして先ほどから私の体をチラチラと見てくるのですか!?」
そして当然のごとくキャロライナは俺の存在に気付いていない。
全ての罪はゴブリンナイトにある。
普段の「ご主人さま!」と言って優しくしてくれるキャロライナも魅力的だが、今のゴミを見るような眼差しで俺の顔面を踏みつけるキャロライナにも別の魅力があるよな。
圧倒的、僥倖!
もう俺はここで死んでもいい!!
「……どうにも怪しいですね。貴方は本当に……ゴブリンナイトなのですか?」
「ゴブッ!?」
これはまずい。
なんど足蹴りを食らわしても言うことを聞こうとしない俺に対してキャロライナは懐疑的な眼差しを向けていた。
先程まではパンチラを拝み放題だったのに、警戒心を剥き出しにしてスカートの袖を押さえてしまっている。
「先程からお前の視線からは人間の……卑しいオスと同じ雰囲気を感じます」
「…………」
キャロライナは既にゴブリンナイトの肉体に入り込んだ俺に半分気付きかけているかのようであった。
ヤバイ!
ヤバイヤバイヤバイ!
もう十分にキャロライナからご褒美は貰ったことだし……流石にこの辺りが潮時だろう。
そう考えた俺はすぐさま《精神操作》のスキルを使用して次なる魔物に乗り移ることにした。
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