異世界モンスターブリーダー ~ チートはあるけど、のんびり育成しています ~

柑橘ゆすら

狼の生血



「ところでソータ。今日の遠征は分かれて行動しないの?」

「ああ。どんなタイミングでコカトリスに遭遇するか分からないからな」

 今回の遠征は今までのものとは危険度が違う。
 目的となる魔物、コカトリスは1匹辺りの討伐報酬に300万コルが設定されるほどの強敵である。

 バラバラになって探した方が効率が良いのは確かだが、初参加のシエルもいることだし、それは最後の手段にしておこう。

 俺はボディーガードの役割を兼ねた3匹のゴブリンナイトを召喚する。


「「「ゴブッッ! ゴブッッ!」」」


 現時点における俺の最強の戦力はDランクのワーウルフであるが、こいつに関しては「いざ!」という時のために温存しておこうと思う。

 まずは3体のゴブリンナイトたちに購入したばかりの装着させることにする。


 ゴブリンナイト LV1(使役中)

 右手 ブロンズソード
 左手 ラウンドシールド


 ゴブリンナイト LV1(使役中)

 右手 ブロンズランス
 左手 ラウンドシールド


 ゴブリンナイト LV1(使役中)

 右手 ブロンズメイス
 左手 ラウンドシールド


 盾と武器を装備させてみると、ゴブリンナイトたちの風貌は更に頼もしい雰囲気になっていた。


「おおー。自分が作った武器を持っている魔物を見ると変な感じッスね!」


 シエルは興奮した面持ちで熱心にゴブリンナイトたちの様子を観察していた。

 さてさて。
 せっかく普段とは違うエリアにまで足を運んだのである。

 コカトリスの捜索をしながらもゴブリンナイトたちの戦闘能力テストを行っていくことにしよう。

 そう判断した俺は鬱蒼と木々が生い茂る獣道を進むことにした。


 ~~~~~~~~~~~~


 暫く歩いていると、魔物とエンカウントする。


「ガウッ! ガウッ!」


 敵の数は7体。
 戦い慣れたウルフであるが、一度にこれだけの数を相手にするのは初めてである。

 普段なら迷わずカプセルボールを投げて捕獲をしているパターンであるが、今回はゴブリンナイトを使って倒してみることにする。


(いけ! ゴブリンナイトたち!)


 コンタクトのスキルを使って命令すると、3匹のゴブリンナイトはそれぞれの武器を携えて突進していく。

 やはり武器を持たせてみたのは正解だったようだ。

 ゴブリンナイトたちは、手にした武器を振り回して次々にウルフの群れを蹴散らしていく。


「よし。そこまでだ。後はもう下がっていていいぞ」

「「「ゴブッッ!」」」


 ウルフたちが頭を潰されて肉塊に変わるまで時間はかからなかった。

 1つ気になった点を挙げるのならば、持たせた武器によってゴブリンナイトがウルフを殲滅するまでにかかる時間が大きく変わるということである。

 ブロンズメイスを持たせたゴブリンナイトは1回か2回の攻撃でウルフを無力化していったのに対して、ブロンズソード&ブロンズランスで倒すに時間がかかった。

 武器性能にはそれほど違いがあるとは思えない。
 ……となると、何か相性が関係しているのだろうか?


「ガウッ……ガウッ……」

「……あれ。1匹生き残りがいたか」


 相性の悪い武器では、とどめを刺しきれなかったのだろう。
 ウルフの1匹は額から血を流しながらも呻き声を漏らしていた。


「ご主人さま。よろしければ……そこにいる生きたウルフを私に頂けないでしょうか?」

「構わないが、何に使うんだ?」

「私たち吸血鬼は、定期的に動物の血液を摂取しなければ生きていけない性質を持っています。中でも生きたままの狼族の血液は、私たちにとって非常に栄養価の高い食糧になるのです」

「なるほど。ならここにあるウルフは好きに使っていいぞ」

「ありがとうございます。ご主人さま」

「…………」

「…………」

「えーっと。飲まないのか?」

「……いえ。その、血液を採取している姿を誰かに見られるのは恥ずかしいので……。暫くの間、後ろを向いて頂けると助かります」

「そ、そうだったのか」


 キャロライナは頬を赤くしながも何処かモジモジとした様子であった。

 触手で攻められる姿を見られるのは大丈夫なのに、食事をしている姿を見られるのはダメなのか……。

 キャロライナの恥ずかしいの基準はいまいち分からないな。

 ともあれキャロライナが見られたくないと言うのであれば仕方があるまい。
 恥じらうキャロライナを背にして、俺が後ろを向こうとしたタイミングであった。


「ご主人さま! 上ですっ!」


 突如としてキャロライナは驚愕と焦燥の混じった声を漏らす。

 言われた通りに見上げると、全長3メートルにも達するドラゴンが今まさに空から地面に目掛けて降りてくる最中であった。



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