異世界モンスターブリーダー ~ チートはあるけど、のんびり育成しています ~
魔物の装備を揃えよう
自分のことながら今回の遠征も大収穫であった。
持ち帰った素材の数は優に100個を超えている。
ライトマッシュ × 8
アメーバスラッグ × 2
ズマリアの湿地に出現する魔物は、ゴブリンのように集団行動を取るわけではないので使役できた魔物の数は少ない。
けれども。
帰り道に2匹目のアメーバスラッグを捕獲できたのは良かったな。
1日遠征して2匹しか出会えないとは、なかなかレアな魔物なのではないだろうか。
「こちらがクエスト報酬である76000コルになります」
「……どうも。ありがとうございます」
「何時ものことながら凄いですね! この仕事を始めてから1年以上が経ちますが、連日こんなに多くの素材を集めてくる冒険者の方は初めてですよ!」
受付嬢のクロエちゃんはクリクリとした大きな眼を見開いて驚いてくれた。
「ははは。大したことはありませんよ」
舞い上がる気持ちを抑えつつも俺はダンディなスマイルを心掛ける。
「ところでどうです? 今夜辺りご一緒に食事でも」
「ああ。そういうのは別にいいです」
「…………」
気分が乗ってきたので人生初のナンパに挑戦してみたのだが……ものの見事に玉砕してしまったようである。
こいつ……俺に気があるんじゃなかったのかよ!?
何時も「凄い!」と褒めてくれるから完全に勘違いしてしまった。
現実でモテないやつは、異世界に行ってもモテないということなのだろうか?
……なんとも世知辛い話である。
~~~~~~~~~~~~
大量の素材を換金した俺の懐は温かい。
冒険者ギルドから出た俺は以前に訪れた雑貨店にまで足を運んでいた。
「いらっしゃい。ギルド公認雑貨店にようこそ」
店に入るなり俺たちのことを出迎えてくれたのは、オシャレとは無縁そうな小太りの中年男である。
「それでキャロは、どんな武器が欲しいんだ?」
「えーっと。武器とは違うのですが、まずは動きやすい服を頂ければなぁ、と。メイド服のままでは何かと動きづらくて」
「なるほど。まあ、そりゃあそうだよなぁ」
今回のショッピングの目的は装備品の補充である。
これまでは予算の関係で断念してきたのだが――。
魔物使いとしての能力がある俺はともかくとして、アフロディーテとキャロライナには出来る限り良い装備を身に着けていて欲しい。
「あと……。出来ればその……替えの下着を買って頂けると有難いです。身に着けている分しか持っていなくて」
「ふむふむ。それは入念に選ぶことにしようか」
キャロライナは森の中で長いこと気を失っていたらしいし、俺と出会ってからも着替えを行った様子はない。
となると、おそらく3日くらいは同じ下着を履きっぱなしなのではないだろうか?
どうして俺はこんな役に立たない計算をしているのだろうか?
「あ。そういうことならアタシも下着を買いたいわ!」
「お前は昨日買ったばかりじゃないのか?」
こいつはどんな下着を選んだのか頑なに教えてくれなかったわけだけど。
「馬鹿ソータッ! デリカシーのないことを聞かないでよね! 女の子の下着は何枚あっても足りないものなのよ!」
「……そうですか」
よく分からないが、ここは触れないことにしておこう。
ちなみにアーテルハイドにおける女性用の下着は、現代の日本とほとんど変わらないデザインになっている。
何故か?
その事情について雑貨店の店長から話を伺って推測してみたところ――。
アーテルハイドには簡単に加工できるゴムのような素材が存在しているらしく、地球の人類と比較をして、下着文化が古くから発達してきたからなのだとか。
異世界の女の子が最高であることに異論はないのだが、こと下着に関しては馴染みのある地球のデザインの方が安心できる。
3度の飯より美少女のパンツが好きな俺にとっては、アーテルハイドの下着事情は何かと都合が良いものであるらしい。
さてさて。
女子メンバーが下着を選んでいる間に俺は、ゴブリンナイトに持たせる武器を選ぶことにしようか。
現在ゴブリンナイトが持っている武器は、木を削って作ったと思われる棍棒である。
武器を変えることによって、戦闘能力を飛躍的に伸ばすことができるのではないだろうか?
試してみる価値は十分にあるだろう。
「すいません。武器を探しているのですが、初心者でも扱えるようなのって何かありませんか?」
「ふむ。武器かい。ウチの店でも取り扱っていないことはないんだが……あまりオススメはできねーな」
「それはどうしてですか?」
「取扱っている品が少ないっていうのもあるんだが、ウチの店は専門店じゃないからな。
武器のメンテナンスまでは出来ないんだよ。そういう訳で初心者が武器を買うなら専門の店に行った方がいい。専門店で買うなら定期メンテナンスの代金をサービスしてくれる店が多いぜ」
「……なるほど」
何でもかんでも雑貨店で揃えるわけにはいかないらしい。
「よければ俺がセイントベルにある武器屋の場所を教えてやろうか?」
「よろしくお願いします」
こうして俺は店長のエドガーさんに専門店の場所を教えてもらうことにした。
取り急ぎ購入しなければならないのは防具である。
俺は暫く雑貨店の中を歩き回りキャロライナの装備を見繕うことにした。
レンジャースーツ 等級E
(動きやすさを追求した衣服)
革のブーツ 等級F
(頑丈なブーツ。打撃攻撃力が小上昇)
遠征用の衣服が一着とリクエストに応えてブーツを一足と言った具合である。
「ソータさま。ええと……こんなに高い服を装備を買って頂いても良いのでしょうか?」
試着室に入って着替えたキャロライナは戸惑いの声を上げていた。。
メインとなるレンジャースーツという服の値段は一着9000コル。
日本円にすると1万円くらいだが、この店の置いている服の中では割と高価な品であった。
「構わないさ。キャロは頑張ってくれているしな。これくらいは大した出費ではないよ」
「有難うございます! 大切に使わせて頂きますね!」
とまあ、恩着せがましく言ったものの実のところ今回の件は俺個人の勝手な私情である。
キャロライナに選んであげたレンジャースーツは、ミニスカート+ガーターベルト+ニーソックスが魅力的なデザインをしていた。
自分のセンスながらクールな雰囲気のキャロライナにはピッタリな一品だと思う。
足技を主体に戦闘するキャロライナには、やはりミニスカートを履かせるのが1番だろう。
「ちょっとソータ。これは一体どういうことかしら? キャロの服がアタシのより高い気がするんだけど?」
「まあ、そういうなよ。ディーの装備はまた別の機会に買うからさ」
「むぅー。絶対よ! 約束だからね!」
未だに少し不機嫌な空気を醸し出しているものの――。
なんとかアフロディーテは納得をしてくれたようである。
初期の頃と比べると、随分とアフロディーテも素直になったような気がするな。
コメント