異世界支配のスキルテイカー ~ ゼロから始める奴隷ハーレム ~

柑橘ゆすら

一緒にトイレ


 カチカチと時計が秒針を刻む音が部屋の中に響いている。

 それから。
 悠斗たちパーティーは居間に集まり、敵モンスターの襲撃に備えることにした。

 屋敷の中の灯りは完全に絶たれていたが、悠斗の使用するフラッシュライトの魔法があれば居間の中を明るく照らすことが可能だった。


「ユート君。すまないが、一度席を外してもらえないだろうか」


 灯りが消えてから2時間くらいは経過しただろうか。

 何時モンスターが襲ってくるか分からない緊張感の中、ラッセンは唐突にそんな言葉を切り出した。


「ラッセンさん。どうしたんですか。急に」

「い、いいから早く! 緊急事態なのだ!」


 ラッセンに手を引かれた悠斗は、そのまま居間を後にする。


「いいかい。ユートくん。キミはずっとこの部屋の前で立っておくのだぞ」


 そう言ってラッセンが立ち止まったのは、屋敷の中のトイレと思しき部屋であった。

 ラッセンが何を目的として呼び出したのかは直ぐに分かった。

 おそらく『怖いもの』が苦手なラッセンは、暗闇の中を1人でトイレに行くことを恐れたのだろう。

 悠斗の使用しているフラッシュライトの魔法は、テーブルに置かれていた非常用のランプと比べて段違いの光量を誇っているのである。


「分かりました。俺はここから一歩も動きませんから。ラッセンさんは用事を済ませてきてください」


 ここは詳しい事情を聞かないのが、マナーというものだろう。
 ラッセンの気持ちを察した悠斗は、トイレの前で大人しく待っておくことにした。


「……すまない。ユート君。そう言ってもらえると助かるよ」


 小さく頭を下げたラッセンは足取りを早くしてトイレの中に入っていく。

 だがしかし。
 トイレに入ったはずのラッセンは、ものの2秒も経たないうちに、青ざめた顔をして戻ってくることになった。


「すまない。ユート君。やはりキミも来てくれないか!」

「えっ。わっ。ちょっと!」


 強引にトイレの中に連れ込まれた悠斗は、そこで予想外の光景を目にすることになる。


(さ、流石は王族の屋敷のトイレ! 無駄にでかい!)


 そのサイズはまさに『王族向け』と呼ぶに相応しく、悠斗が抱いている平均的なトイレのサイズの10倍を超えていた。

 天井からシャンデリアが吊るされており、中のいたるところには、豪華な鏡が置かれている。

 ラッセンが直ぐに戻ってきたのにも頷ける。

 これだけ広いトイレの中で灯りを持たずに歩くのは、たしかに心細いものがあるだろう。


「……ユート君。分かっていると思うが、後ろを向いたら殺すからな」


 羞恥で頬を赤く染めたラッセンは、悠斗の体に銃を突きつけながらも低い声で呟いた。


「分かっています。分かっていますって」


 流石の悠斗も本気で嫌がっている女の子に悪戯を仕掛けるほど鬼畜ではない。

 両手を上げて、クルリと踵を返した悠斗は大人しく壁と睨めっこを始めることにした。

 だがしかし。
 悠斗はそこで、とんでもない事実に気付いてしまう。


(ん……? こ、これは……!?)


 衝撃の光景を目の当たりにした悠斗は絶句していた。

 トイレの中に置かれた鏡の1つを反射によって、ラッセンの姿を丸見えとなっていたのである。


(ふう……。良かった。一時はどうなることかと思ったが、ようやく落ち着くことができる)


 すっかり油断したラッセンは、ショートパンツと下着をズリ下げるとプリプリとした大きな尻を露にする。

 大きく両足を開いて、用を足すラッセンの姿は、端的に言って非情にエロいものがあった。


「ユウト君。どうやら約束は、キチンと守ってくれたようだね。色々とキミのことを疑ってしまい、すまなかったな」


 恥ずかしい姿を見られたことに気付いていないラッセンは、スッキリとした爽やかな面持ちで悠斗に対して謝罪の言葉を口にする。


「改めて、非礼を詫びよう。どうやらアタシはキミに対する認識を改めなければならないようだな」


 言えない。
 本当は鏡を利用して、バッチリ見ていたということは言えるはずもない。

 今回のハプニングにより、悠斗は今まで知らなかった新しい性癖の扉をこじ開けてしまいそうになっていた。


「それではさっそく戻ろうか」

「はい」


 異変が起きたのは、悠斗とラッセンがトイレを出ようとした直後だった。


「びえっ! びえええええ!」

「な、なんなのだ! これは!」


 突如として女の子たちの叫び声。


「こ、この声は……?」

「無事か!? スピカ! シルフィア!」


 2人の危機に気付いた悠斗は、全速力で屋敷の居間までダッシュする。

 次の瞬間、悠斗の視界に入ってきたのは、この世のものとは思えない奇妙な光景であった。


「な、なんだよ……。これ……!?」


 少女の人形@レア度 ☆
(何の変哲もない只の人形)


 あまりの非日常的な光景に開いた口が塞がらない。

 そこにあったのは、誰の手を借りるわけでもなく、独りでに動き始める人形たちの姿だった。


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