異世界支配のスキルテイカー ~ ゼロから始める奴隷ハーレム ~
エピローグ1 ~ 故郷からの巣立ち ~
それから程なくして。
突如としてルーメルとロードランドの間で起こった2度目の戦争は、意外な形で終結を迎えることになった。
曰く。
今回の戦争は何から何まで謎だらけであった。
戦争に参加していた人間は1人残らず記憶を失っており、気が付いた時にはロードランド国境の砦の中に迷い込んでいた。
更に不可解だったのが、10万を超える兵たちを相手にしていたのは、ほんの10人にも満たない能力者集団だったという点である。
今回の戦争は、後に『1日戦争』、『0人戦争』などと呼ばれて、謎が謎を呼ぶ怪事件として後世に末永く語り継がれることになるのだった。
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潮の匂いの混ざった風が心地良い。
地下聖堂の戦いを終わらせた悠斗とシルフィアは、海沿いの土地に作られたナルビアの街の墓場を訪れていた。
「……お父さま。シルフィアは暫くこの街を離れます。どうかお元気で」
父親の墓の前で膝を突いたシルフィアは、静かに別れの言葉を口にする。
シルフィアの父親はロードランドとの1度目の戦闘で命を落としている。
元をただすとシルフィアが奴隷としてエクスペインの街に連れてこられたのは、全て1度目の戦争が原因だったのである。
「良かったのか。このまま家に帰って」
「ああ……。これだけの戦争が起きたにもかかわらず、被害を最小限に抑えることができたのは主君のおかげだからな。我々がこの土地を訪れたことには意味があったのだろう」
もしも地下聖堂の中でグレゴリーを倒すことができなかったのだとしたら、犠牲者の数は数十万人規模に達していただろう。
誰よりも間近で『戦争を止めた英雄』の姿を目の当たりにしていたシルフィアは、自らも知らない間に歴史の生き証人となっていた。
「帰ろう。主君。もう私の中にルーメルに対する未練は何もない」
そう言って語るシルフィアの表情が、晴れやかなものになっていたから――。
悠斗はシルフィアの手を取り、静かに墓地から離れることにした。
「シルフィア」
唐突に誰かに呼び止められる。
振り返って見るとそこにいたのは、悠斗にとっても見知った人物であった。
「先生……!」
グレゴリーの洗脳スキルから解放されたリズベルは、今までのようなトゲトゲしい態度から一転。
従来の淑やかな雰囲気を取り戻していた。
「……本当に行ってしまうのだな?」
「はい。私の中で決めたことですので」
「そうか。参ったな。本音を言うとキミには私と共にルーメルの再建を手伝ってもらおうと思ったのだが……。アテが外れたよ」
いくら被害が最小限に留められたとは言っても戦争の爪痕は決して小さくはない。
とにもかくにもルーメル復興のためには優秀な人材が必要であった。
「コノエ・ユートくん、と言ったか」
「は、はい」
唐突に名前を呼ばれた少しだけ上擦った声で返事をしてしまう。
何を隠そうリズベルは、派手な衣装と化粧を外すと悠斗好みの格別な美女だったのである。
「シルフィアはアレでいて繊細な子でね。一緒にいて苦労をかけるかもしれないが、どうかこれからも末永く一緒にいてやって欲しい」
「はい。もちろんですよ」
言われるまでもないことである。
奴隷として女の子を傍に置く以上、全力を以て幸せにするというのが悠斗のポリシーだったのである。
「まったく。シルフィアは本当に素晴らしい男に恵まれたのだな」
「いいえ。俺なんかそんな大したものではありませんよ」
「しかし、ユートくん。実のところ私はキミのことを少しだけ恨んでいるのだよ。キミが素晴らしい男ということは重々に承知しているのだが……。まさか我がルーメルが誇る優秀な人材を同時に2人も持って行ってしまうとはね……」
「…………?」
この時、悠斗はリズベルが口にした言葉の意味が分からなかった。
2人とは一体誰を指して言っているのだろうか。
1人がシルフィアのことだというのは直ぐに分かったのだが、もう1人が誰なのかはサッパリ分からない。
しかし、この後、直ぐに悠斗は、リズベルの口にしていた言葉の意味を理解することになるのだった。
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コメント
ノベルバユーザー288318
待ってました!
次も楽しみにしてます!