異世界支配のスキルテイカー ~ ゼロから始める奴隷ハーレム ~

柑橘ゆすら

VS ジャック・リー



 チュンチュンチュン。
 予選トーナメントが終わってから翌日の朝。

 悠斗は窓の外から聞こえてくる小鳥たちのさえずりによって目を覚ます。


「ご主人さま……! 流石にそこまで太いのはダメですよ……!」

「ヌルヌルは……ヌルヌルだけは勘弁してくれ……!」

「ふにゅ~。お兄ちゃん……パナいのです……」

「ユート……。お願いだ……もっとオレのことを滅茶苦茶にしてくれ……」


 声のした方に目を向けると、着崩れたネグリジュを身に付けて、ベッドの上で倒れているスピカ&シルフィア&サーニャ&リリナの姿があった。

 流石に昨夜は、やり過ぎだっただろうか?

 武術トーナメントに参加して完全に今までの元気を取り戻した悠斗は、今まで以上にハードな魔法の訓練を行ってきたのである。


「あ。ヤバイ」


 何気なく時計を見てみると、既に時刻は本戦受付時間を5分ほど過ぎていた。
 ここで不戦敗でも喫しようものなら、参加チケットを手配してくれたラッセンの顔に泥を塗りかねない。


「スピカ! シルフィア! 今直ぐ起きて準備しよう! ここままだと完全に遅刻だぞ!?」


 本戦トーナメントではスピカ・シルフィアが駆けつけてくれることになっていた。 
 ちなみにリリナ・サーニャも応援に来たかったらしいのだが、2人は仕事を残しているということなので今回は留守番を頼んでいる。

 自らの置かれた状況に気付いた悠斗は、大急ぎで闘技場に向かうのであった。


 ~~~~~~~~~~~~


 一方その頃。
 ところ変わって此処は、闘技場のA会場である。

 その観客席には先に到着したラッセン&ルナの冒険者がコンビがいた。


「先輩……。ユウトさん……遅いですね」

「ああ。とっくに受付時間が過ぎているというのに……彼は何をしているのだろう」


 既にA会場の第一試合は始まってしまっている。
 悠斗の第一試合は後の方にあるのだが、流石に本人が会場に到着していない状態は色々と問題がありそうだった。  


「しかし、ユウトくんは本当に奇特な星の下に生まれたのだね」

「まったくです……。まさか初戦の相手があのジャック・リーなんて」


 そんな会話を交わしている内に刻一刻と時間は過ぎて行く。


「えー。それではこれよりA会場1回戦の第4試合を行いたいと思います。東ゲートから登場する選手は御存知! 無敗の拳法家ジャック・リー選手。
 対して西ゲートから登場する選手は期待の大型新人――コノエ・ユート選手です。両選手の方々は入場をお願いします」


 審判を告げる男が声を上げると、先に現れたのはジャック・リーである。
 齢50を超えながらも鍛え上げられた鋼のような筋肉を有するリーの体からは、歴戦の猛者たるオーラを感じさせるものであった。


「すいません! 遅れました!」


 リーが登場してから30秒くらいの時間が流れただろうか。
 西ゲートから現れたのは、額から汗を出しながらも走る悠斗の姿であった。


 黒宝の指輪@レア度 ☆☆☆☆☆☆☆
(他人が所持する《魔眼》スキルの効果を無力化する)


 悠斗がギリギリで試合会場に到着すると、鋼のような肉体を持った初老の男の姿がそこにあった。
 黒宝装備を身に着けているため相手の素性までは確認することが出来ない。

 これで悠斗が確認した黒宝シリーズの装備は首飾り、イヤリング、指輪と合計で3種類目である。


「お前……何者だ……?」


 咄嗟に疑問の言葉を口にする。
 これまで黒宝装備を身に着けていた人物は、自分を除くとレジェンドブラッドのメンバーだけである。

 レアリティの高い装備を身に着けていることからも、目の前にいる相手が只者でないことが推し量れた。


「ふぉふぉふぉ。まさか武術の道に邁進する若者の中にワシの名前を知らないものがいるとはのう……」


 悠斗の疑問を受けたリーは、顎から伸びた白ヒゲを整えながらも不敵な笑みを浮かべる。


「若造よ。後学のために覚えておくと良い。ワシの名前はジャッ……ブフォォッ」


 リーが名乗りを上げようとした次の直後。
 悠斗の拳がリーの顔面にヒットする。


「お前が何者かなんてどうでもいい……。俺は俺を応援してくれている女の子たちのために負けられねえんだ」


 悠斗の拳を受けたリーの体は5メートルほど吹き飛んで行き――。
 そのままピクピクと体を痙攣させて意識を途絶えさせることになる。


 試合終了。


 この試合だけを見ると勘違いをする人間が現れるかもしれないのだが――。
 ジャック・リーという老人は強かった。

 その気になれば1人で10人を超える成人男性を相手に出来るし、武器を使わずにドラゴンを倒したこともある。

 だがしかし。
 いくら強くても所詮それは人間レベルでの話である。

 体術のみで魔族すら圧倒できる悠斗の敵でないことは自明であった。


「「「…………」」」


 前代未聞の大番狂わせを目の当りにした観客席にいる人々は一瞬、何が起きているか理解することが出来ずに無言でいることしか出来なかった。

 しかし、それから暫くすると――。
 ポツリポツリ、と所々から拍手の音が鳴り、やがて場内は割れんばかりの喝采に包まれる。


(……それにしても全く手応えがなかったな。早く優勝候補のジャック・リーっていう人と戦いたいぜ)


 周囲のリアクションなど物ともせずに――。
 勝ち名乗りを上げられている間も悠斗は、呑気にそんなことを考えるのであった。

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