召喚された賢者は異世界を往く ~最強なのは不要在庫のアイテムでした〜

夜州

第8話 商人アリス

  ギルドの場所は説明ですぐにわかる場所だった。
  街並みを眺めながら歩くが、やはり店先で立っている従業員たちの声も小さい。
  そんな事を考えながらギルドの扉を開けると、中は閑散としていた。
 
「これでギルドが成り立つのかな……」
 
  確かにギルドの混む時間は依頼を受ける早朝と、報告に来る夕方だが、例え日中とはいえもう少し混んでいるイメージがあった。
  暇そうにしている受付嬢に声を掛けると、何か考え事をしていたようにで驚いた表情をした。
 
「す、すみません。トーレス支部へようこそ。ご用件は……?」
「あぁ、帝都までいくつもりなんだが、戦争のこともあってあちらの情報が欲しいなと」

  懐からギルドカードを取り出しカウンターに置くと、受付嬢は内容を確認し驚きの表情をする。
 
「Aランクっ!? しっ、失礼しました。帝都の情報ですと……あまり……」
 
  受付嬢の表情は曇っていた。やはりそこまで情報が入ってきてないのかもしれない。
 
「そうか……わかった。まぁ、明日にも向かうつもりだから――」
「今は帝都への入場は審査が厳しく……、あ、そういえばっ! 帝都に向かう護衛の依頼が一件あります。向かうのでしたらお受けしませんか? 他に誰も受ける人がいないので……」

 正直、帝都への侵入をするために誰かと関わるつもりはない……。
 でも、入場審査が厳しいのに、冒険者一人で行ったら怪しまれる可能性もある。
 それなら護衛として一緒に入場するのもいいかもしれない。どうせ、帝都が近くなったらコクヨウを出すわけにもいかないし。
 馬車の護衛で向かうのは正解かも……。

「明日出れるなら受けてもいい。出発が長引くようなら……」
「いえ、依頼人もなるべく早く、というご依頼だったので。お受けするなら明日の朝、ギルドの前にきていただけますか?」
「わかった。そうしよう」
「ありがとうございます。正直、受ける人がいなかったのでギルドとしても助かります」

 依頼票を受け取り、外に出て市場へと向かう。
 閑散としながらも商品は並べられているので、欲しい物を次々と購入していく。
 食料についてはいくらあっても困らないしな。

「明日に備えて今日はゆっくりとするか……」

 夕刻に宿に戻り、食事を済ませると早めに眠りについた。

 ◇◇◇

 早朝、チェックアウトをし、早くにギルドにつくと馬車が一台着けられていた。
 もしかしてあれか……。
 依頼票を取り出し、御者台に向かう。

「……護衛の依頼を受けたんだが、あってるか?」

 御者台に乗っていた人はフードを被ったままこちらに振り向くと、フードを外した。

「あー、護衛受けてくれた人だね! わたしはアリス。サランディール王国から帝都まで来たんだけど、途中で護衛が帰っちゃってね……」
「トウヤだ。同じくサランディール王国のフェンディーの街で冒険者をしていた。今は帝国にきているが……」

 同じ国出身と聞き、アリスは満面の笑みを浮かべる。

「王国出身なんだね。フェンディーの街も良く通るよ。それなら帝都までよろしくね」

 御者台から下りてきたアリスが右手を差し出してきたので、軽く握手をする。

「それじゃ、御者台に乗って。わたしが御者をするけど、隣に座って監視……ううん、話し相手よろしくね」
「あぁ、監視はしておくがよろしく」

 御者台に乗りこみ馬車を出発させた。

 帝都までの道は兵士が巡回しているのか、魔物も出ることはなかった。
 二日間で到着すると聞いていたが、ジェネレート王国の十名ほどの小隊と何度がすれ違った。
 あちらも商人の運搬だとわかっているようで、視線を送られるが特に止められることもなく帝都へ到着した。

 
「あちゃ……。やっぱり時間かかりそうかなぁ」
「これは仕方ないな……。ゆっくり並ぶか……」

 帝都の門には審査に時間が掛かっているのか、入場を待つ馬車が何台も並んでいた。
 占領したばかりの帝都の入場が緩ければ、間者が入ってくるのは目に見えている。
 仕方ないと思いつつ最後尾に並ぶことにした。
 帝都までの道中、アリスとの会話で少しだけながら帝都の情報を仕入れることが出来た。
 宿はお勧めの場所があると言われ、そこに泊まるつもりでいる。
 ガウロスからは帝都に入ることが出来たら、相手側から接触があると聞いているから問題はないと思っている。

「ほら、次!」

 やっと入場審査の出番が来た。帝都の入り口に到着してから約三時間の待ち……。
 馬車を進めると、下りるように言われ後ろの積み荷のチェックと依頼のチェックが行われた。

「二人ともサランディール王国か……」
 
 俺も依頼票の控えとギルドカードを提示した。
 ギルドランクを確認した兵士が少しだけ驚いた表情をしたが、多分この若さでBランクだからだろう。
 返された依頼票とギルドカードを仕舞いこむ。

「よし、入っていいぞ」

 兵士の審査も終わり、アリスは馬車を進ませる。

「いやぁ、ほんと大変だったねぇ~。まさか入場するのにこんなに時間かかるなんて」

 少し疲れながらも笑みを浮かべるアリスに軽く頷く。

「先に宿に行こうか。ギルドからも近いし、料理も美味しいから楽しみにしててねっ」
「あぁ、元々宛があるわけじゃないしな。そこに泊まることにするよ」

 次元収納ストレージにはまだ大量の資金もあるから多少高くても問題ない。
 出来れば風呂がある宿がいいが、さすがにそこまで贅沢は言えない。

 少しだけ馬車を走らせると、一軒の宿屋の前でアリスが馬車を停めた。

「ここが宿だよー。一回受付してから部屋で依頼票のサインするね」
「あぁ、それでいい」

 二人で宿に入ると、受付にいた三〇代くらいの女性にアリスは手を振りながら声を掛けた。

「きたよー。部屋空いてる? 二部屋なんだけど……」
「あら、アリスちゃん。久しぶり! 無事に帝都に来れたのね。良かった……」
「うん……。まぁね。あ、ここまでの護衛してもらったトウヤもこの宿に泊まるからよろしくね」

 アリスの言葉に受付嬢は少しだけ警戒した視線を送るが、すぐに緩んだ。

「アリスちゃんの紹介だしね。今はこの状態だから少し値上げをしているんだけどいい? 一日銀貨一枚よ」
「あちゃー、そこまで上がっちゃったのか……」
「うん、税金がね、倍になったの。しかも戦時税と言われて何度も王国の兵士がね……」

 二人の表情は少しだけ暗くなったが、アリスは再度元気よく笑みを浮かべた。

「仕方ない! その代わり美味しい料理楽しみにしているねっ!」
「それは任せてっ! 後悔させない料理にするから」

 二人の会話に思わず頬が緩む。
 他の宿よりは多少高いが、帝都なのだから多少の割高は仕方ないだろう。占領されたばかりだし」

「二階の部屋よ、隣同士だからアリスちゃん案内頼める?」
「はーい! トウヤ、ついてきて」

 受付に二泊分として銀貨二枚置いてアリスの後を追い階段を上る。
 二階に上がり一番奥とその手前の二部屋だった。
 アリスから鍵を渡される。

「まぁ部屋を見てみてよ」

 笑みを浮かべたアリスに首を傾げ、扉を開けると、そこは十畳ほどのスペースで少し大きめのベッド、ソファーまで設置されており、他の一般的な宿屋よりも清潔で満足がいくものだった。

「思ったより良い部屋なんだな。もっと狭いかと思っていたよ」
「ふふっ、そうでしょ? 帝都に来たときはいつもこの宿に泊まるんだ」

 アリスはそのまま俺の部屋に入ってきた。
 そして――扉を閉め、鍵を掛ける。

「それでね、トウヤ……。――ガウロス様からの指示は聞いている。今日の夜から動くから」

 想像してなかったアリスの言葉に思わず驚きの表情をした。

 




コメント

  • ノベルバユーザー414993

    内容は面白いのですが矛盾してるとこや前の設定無視してるとこがあり途中で読む気無くしました…

    0
  • wtf?

    更新待ってます!!

    0
  • 氷柱儀   雪兎

    今の最後の話キルド受付嬢がAランクと言っていたのでBに直した方がいいと思います、

    1
  • ノベルバユーザー338932

    続き待ってます

    0
  • Eース

    ランクがAになってますよ

    1
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