天下界の無信仰者(イレギュラー)
この街は? っていうか、どうなっちまったんだこの世界は!?
それからミルフィアが持ってきてくれた水を飲んで一息つく。どうやら本当に現実に戻ってきたみたいだ。
今度こそ本当だ、良かった、マジで。
しかし、そんな俺にあるものが目についた。ベッドの端に落ちていたそれを手に取る。
それは白い羽だった。
「恵瑠……」
それを見て過去が一気に蘇ってきた。
そうだ、俺はエノクが落ちてきた場所に駆けつけそこで恵瑠と出会ったんだ。だけど、
『消えろ』
あいつが俺に向けた言葉を思い出す。攻撃を受けて、俺は倒されたんだ。
俺だけだったのか? 今でも友達だって、ずっと友達だと思っていたのは。あいつは天羽で、俺とはもう仲良くなれないのか?
体に残った火傷の痛みが恵瑠が向けた炎が本物なんだと嫌でも教えられる。
あいつが俺を攻撃してきたのは、本当なんだ。
「あれ」
だがそこで俺は気づいた。
「なあ、ここは?」
 俺がいたのは見知らない部屋だった。
「ここは教皇宮殿の一室です、主」
「俺をここに運んできてくれたのは、ミルフィアか?」
「いえ、私では。神官長派の襲撃が終わった後、主を探していてここで見つけたんです。誰が運んでくださったのかまでは」
「そうか」
ここまで運んでくれたのはミルフィアじゃなかったか。ていうか、悪夢のせいで忘れていた。
ミルフィアも俺と同じように捕まっていたはずだ。一日だけとはいえ離れ離れだったのがこうして会えている。
「ミルフィア、無事だったんだな」
「はい」
俺の確認にミルフィアは微笑んだ。以前の変わらぬ笑顔がそこにある。
よかった。改めてホッとする。ミルフィアと微笑み互いの無事を喜び合った。
「また会えて嬉しいよ。他の二人は?」
「はい。お二人は今戦略会議に参加しています。こうなってしまった以上、使える人材は誰でも使うということですね」
「戦略会議?」
物騒な言葉に持ち上がっていた口元が引き締まる。
「こういう事態って、神官長派が攻めてきたことか?」
神官長ミカエル率いる軍隊がサン・ジアイ大聖堂を襲撃した。ついに天羽としての正体を明かし決行してきたんだ。
それによって出た被害は大きい。
だが、ミルフィアの表情は俺の考えていることとは違うと言っていた。
「主。実は主が倒れた日から、もう二日が経っているんです」
「二日!?」
俺は慌てて窓を見る。倒れた時と同じ昼間を思わせる天気だからついそんな時間は経っていないと思っていたが。
くそ、俺は二日もあんなふざけた世界にいたのか。
「それで、その二日間で大きな出来事がありました」
ミルフィアの表情が真剣に引き締められる。それだけで、重大なことが起こったんだと分かった。
「天界の門が開きました」
「ヘブンズ・ゲートが……」
天羽たちのいる天界と地上を繋ぐ門。それが開いた。
始まったんだ、二千年前の再現。天羽たちによる地上への侵攻が。
「この街は? っていうか、どうなっちまったんだこの世界は!?」
「落ち着いてください主。天羽たちですが、現状は大きな動きを見せていません。ただし首都ヴァチカンは彼らの手に落ち、街から逃げてきた難民たちはエルサレムに来ています。軍も抵抗したようですが、力及ばず。彼らもここに退避し、今も戦略会議に参加しています」
「そうか」
俺が眠っている間にそんなことが。
「悪いな、そんな時に俺だけ爆睡でさ。みんなはちゃんと眠れてるのか?」
「気にしないでください、今まで恵瑠を助けるためにいろいろありましたし、主も疲れていたんだと思います。あまり眠れていなかったようですし」
ミルフィアの言うとおり、なにをしてても恵瑠のことが頭に浮かんで最近はよく眠れていなかったな。
「私たちのことも大丈夫です。加豪は気丈です、この事態でも毅然とたち振る舞っています。天和は相変わらずですね。なにを考えているのか分からないですが、彼女なりに戦況を見極めているようです」
「そうか。ま、だとは思ってたけどさ」
あいつらのことだからそんな心配はしてなかったけど。ミルフィアの言っていたことは容易に想像できる。天和は複雑だけど。
「主」
あいつらの無事に俺が小さく笑う中、ミルフィアは表情を暗くして聞いてきた。
「どうした?」
聞くのを躊躇うような、聞きづらい感じだった。
「恵瑠のことですが」
だから、聞かれた内容に納得した。
今度こそ本当だ、良かった、マジで。
しかし、そんな俺にあるものが目についた。ベッドの端に落ちていたそれを手に取る。
それは白い羽だった。
「恵瑠……」
それを見て過去が一気に蘇ってきた。
そうだ、俺はエノクが落ちてきた場所に駆けつけそこで恵瑠と出会ったんだ。だけど、
『消えろ』
あいつが俺に向けた言葉を思い出す。攻撃を受けて、俺は倒されたんだ。
俺だけだったのか? 今でも友達だって、ずっと友達だと思っていたのは。あいつは天羽で、俺とはもう仲良くなれないのか?
体に残った火傷の痛みが恵瑠が向けた炎が本物なんだと嫌でも教えられる。
あいつが俺を攻撃してきたのは、本当なんだ。
「あれ」
だがそこで俺は気づいた。
「なあ、ここは?」
 俺がいたのは見知らない部屋だった。
「ここは教皇宮殿の一室です、主」
「俺をここに運んできてくれたのは、ミルフィアか?」
「いえ、私では。神官長派の襲撃が終わった後、主を探していてここで見つけたんです。誰が運んでくださったのかまでは」
「そうか」
ここまで運んでくれたのはミルフィアじゃなかったか。ていうか、悪夢のせいで忘れていた。
ミルフィアも俺と同じように捕まっていたはずだ。一日だけとはいえ離れ離れだったのがこうして会えている。
「ミルフィア、無事だったんだな」
「はい」
俺の確認にミルフィアは微笑んだ。以前の変わらぬ笑顔がそこにある。
よかった。改めてホッとする。ミルフィアと微笑み互いの無事を喜び合った。
「また会えて嬉しいよ。他の二人は?」
「はい。お二人は今戦略会議に参加しています。こうなってしまった以上、使える人材は誰でも使うということですね」
「戦略会議?」
物騒な言葉に持ち上がっていた口元が引き締まる。
「こういう事態って、神官長派が攻めてきたことか?」
神官長ミカエル率いる軍隊がサン・ジアイ大聖堂を襲撃した。ついに天羽としての正体を明かし決行してきたんだ。
それによって出た被害は大きい。
だが、ミルフィアの表情は俺の考えていることとは違うと言っていた。
「主。実は主が倒れた日から、もう二日が経っているんです」
「二日!?」
俺は慌てて窓を見る。倒れた時と同じ昼間を思わせる天気だからついそんな時間は経っていないと思っていたが。
くそ、俺は二日もあんなふざけた世界にいたのか。
「それで、その二日間で大きな出来事がありました」
ミルフィアの表情が真剣に引き締められる。それだけで、重大なことが起こったんだと分かった。
「天界の門が開きました」
「ヘブンズ・ゲートが……」
天羽たちのいる天界と地上を繋ぐ門。それが開いた。
始まったんだ、二千年前の再現。天羽たちによる地上への侵攻が。
「この街は? っていうか、どうなっちまったんだこの世界は!?」
「落ち着いてください主。天羽たちですが、現状は大きな動きを見せていません。ただし首都ヴァチカンは彼らの手に落ち、街から逃げてきた難民たちはエルサレムに来ています。軍も抵抗したようですが、力及ばず。彼らもここに退避し、今も戦略会議に参加しています」
「そうか」
俺が眠っている間にそんなことが。
「悪いな、そんな時に俺だけ爆睡でさ。みんなはちゃんと眠れてるのか?」
「気にしないでください、今まで恵瑠を助けるためにいろいろありましたし、主も疲れていたんだと思います。あまり眠れていなかったようですし」
ミルフィアの言うとおり、なにをしてても恵瑠のことが頭に浮かんで最近はよく眠れていなかったな。
「私たちのことも大丈夫です。加豪は気丈です、この事態でも毅然とたち振る舞っています。天和は相変わらずですね。なにを考えているのか分からないですが、彼女なりに戦況を見極めているようです」
「そうか。ま、だとは思ってたけどさ」
あいつらのことだからそんな心配はしてなかったけど。ミルフィアの言っていたことは容易に想像できる。天和は複雑だけど。
「主」
あいつらの無事に俺が小さく笑う中、ミルフィアは表情を暗くして聞いてきた。
「どうした?」
聞くのを躊躇うような、聞きづらい感じだった。
「恵瑠のことですが」
だから、聞かれた内容に納得した。
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