天下界の無信仰者(イレギュラー)

奏せいや

これは革命だ。時代を変える。優しいだけでは世界は変わらない

「ウリエル。これは革命だ。時代を変える。優しいだけでは世界は変わらない」

 ラファエルの言葉の後にガブリエルが言い寄る。ラファエルが慰めたのなら次は励ましだ。やる気を促し世界の変革、それを成すため心に火を点ける。

「ありがとう、ガブリエル」

「礼には及ばんさ」

 二人からの言葉を受けてウリエルは彼女らを見つめた。

「ガブリエル。ラファエル」

 その目は真っ直ぐとしていた。今まで歩んできた旅路、そこにあった苦悩と挫折を踏み締めて言う。

「私は、世界を平和にしたかった。誰も苦しまない世界にしたかった。でも、それは無理な夢だった」

 悲観。失意。ウリエルの語る言葉は諦めに染まっている。

「けれど」

 しかし、その声に今一度決意が宿る。

「私は、どうしても叶えたい。この世界を平和にしたい。誰も泣かない世界に!」

 それは不可能な夢、無理な理想だ。だけど、それでも叶えたい。どうしても実現させたい。

 なら、手段を変えるしかない。その道が、たとえ夢と逆行していても。友との別れになろうとも。

 ウリエルは、恵瑠は、新たな一歩を踏み出した。

「行くわ、私」

 嘆きと悲しみ、穢れた地上。

 救済という名の破壊。

 新時代の再建。多くの犠牲を糧にして――

 その先へ。

「たとえ殺戮の天羽と呼ばれても構わない。称賛もいらない。感謝などされなくていい。恨まれて結構」

 そう、願うだけでは駄目だ。

 祈るだけでは駄目だ。

 行動しろ、進むのだ。

 理想に向かって。

 夢に向かって。

 体を引き裂き、心を砕いて。

 進め。

 掴め。

「それで、この世界を平和にしてみせる」

 その先にある、光を目指して。

「最後の、審判の時だ」

 ウリエルは部屋を出て行った。その後に続きガブリエル、ラファエルも扉を通っていく。

 廊下の先、目指すのは屋上だ。そこで己の使命を果たす。

 ウリエルの瞳は使命と理想に、静かに燃えていた。

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