天下界の無信仰者(イレギュラー)
ここは落ちて
それは物理法則を越えた概念であるがゆえに燃焼に酸素など必要なく、あらゆるものを燃やし尽くすように消滅させる。
青い炎が、まるで油の上を走るように空間を燃やしていく。それにより一瞬にしてここ一帯に漂っていた雲が消失。完全なる晴天となっていた。
ウリエルが攻撃を止め無価値なる炎が消えると、そこは気圧差から激しい気流が発生していた。
分子まで消失させる無価値なる炎の焼け跡はすなわち真空、その範囲が広ければ空気の激流が至る所で起きていた。
四人の天羽はなんとか逃げ切り、エノクも空間転移で間一髪間合いの外へと出ていた。
もし発動があと少しでも遅れていれば飲み込まれていた。
危なかった。その事実に思考がわずかに停滞する。エノクは乱れた精神を整えるべき意識を集中させた。だが、無理して体を酷使してきた代償がここにきて襲いかかってきた。
「ぬっ」
神託物の破壊。それだけでもかなりの弱体化となった。それが続けて二度目。しかもこれはエノクの知らない事実ではあるが、メタトロンは神愛の弱体化の属性を受けていた。
それもデュエット・モード時のものだ。その凄まじい暴力染みた弱体化は神託物を通してエノクまで及んでいる。
無事なはずがなかったのだ。
異変が起こってからは早かった。全身で痙攣が起こり体の内側から激痛がこみ上げてくる。高熱に冒された時のような倦怠感が襲いかかってくる。
「もう少し……あと少しでいい……!」
緩む手に力を入れ直し剣を握りしめる。この戦いは負けるわけにはいかないのだ。自分だけの問題ではない。人類すべての未来が掛かっている。
負けられないのだ、六十年前、彼と交わした約束があるからーー。
エノクの決意。しかしそれを打ち崩すべく天羽たちが攻め立てる。
「ここは落ちて」
ラファエルの矢が迫る。それぞれがいくつもの曲線を描きながらエノクを追いつめる。エノクは見咎め剣を振るう。だが体が重い。ついには打ち損じが出てしまった。
「く!」
迎撃は諦め空間転移で回避する。姿を現したエノクを追いかけ弓矢の軌道があり得ない方向転換を見せる。それらを二度目の攻撃で撃破した。
そこへ追撃を仕掛けるのはサリエルだった。不調により空間の固定化を維持できなくなったことによりサリエルはエノクの正面に現れ、サングラスを外した。
「てめえの理想を否定するつもりはねえけどよ、今は邪魔だ」
見つめてくる赤い瞳。邪眼の呪いがエノクの動きを縛る。その隙にサリエルはエノクを蹴り飛ばした。
「ぐぅッ!」
衝撃に宙を走る。その軌道上にはミカエルが待ち受けていた。
「君との別れは残念だけど」
ミカエルの剣が下ろされる。エノクは吹き飛ばされる中それを見つけ剣を構えた。それによってミカエルの攻撃は防ぐが剣が弾かれエノクは体勢を崩されてしまう。
「さらばだ、エノク」
振るわれるいくつもの剣。瞬時に行われたそれをなんとか防ぎきるも最後の一撃に吹き飛ばされる。
エノクは能力を使い衝撃を殺した。ラファエル、サリエル、ミカエルと続く連携。それを踏みとどまる。
だがエノクの頭上、そこに陰が現れる。見上げれば巨大な炎の球体を掲げたウリエルが羽を広げていた。
「落ちろ」
ウリエルが見下ろす冷たい瞳。反対に燃え上がる巨炎。ウリエルは炎の玉をエノクに向け放射した。
「があ!」
全身を飲み込んでもなおあまりある直径。エノクは空から地面へと落とされていく。全身を覆う炎と熱に意識が蒸発しそうになる。
青い炎が、まるで油の上を走るように空間を燃やしていく。それにより一瞬にしてここ一帯に漂っていた雲が消失。完全なる晴天となっていた。
ウリエルが攻撃を止め無価値なる炎が消えると、そこは気圧差から激しい気流が発生していた。
分子まで消失させる無価値なる炎の焼け跡はすなわち真空、その範囲が広ければ空気の激流が至る所で起きていた。
四人の天羽はなんとか逃げ切り、エノクも空間転移で間一髪間合いの外へと出ていた。
もし発動があと少しでも遅れていれば飲み込まれていた。
危なかった。その事実に思考がわずかに停滞する。エノクは乱れた精神を整えるべき意識を集中させた。だが、無理して体を酷使してきた代償がここにきて襲いかかってきた。
「ぬっ」
神託物の破壊。それだけでもかなりの弱体化となった。それが続けて二度目。しかもこれはエノクの知らない事実ではあるが、メタトロンは神愛の弱体化の属性を受けていた。
それもデュエット・モード時のものだ。その凄まじい暴力染みた弱体化は神託物を通してエノクまで及んでいる。
無事なはずがなかったのだ。
異変が起こってからは早かった。全身で痙攣が起こり体の内側から激痛がこみ上げてくる。高熱に冒された時のような倦怠感が襲いかかってくる。
「もう少し……あと少しでいい……!」
緩む手に力を入れ直し剣を握りしめる。この戦いは負けるわけにはいかないのだ。自分だけの問題ではない。人類すべての未来が掛かっている。
負けられないのだ、六十年前、彼と交わした約束があるからーー。
エノクの決意。しかしそれを打ち崩すべく天羽たちが攻め立てる。
「ここは落ちて」
ラファエルの矢が迫る。それぞれがいくつもの曲線を描きながらエノクを追いつめる。エノクは見咎め剣を振るう。だが体が重い。ついには打ち損じが出てしまった。
「く!」
迎撃は諦め空間転移で回避する。姿を現したエノクを追いかけ弓矢の軌道があり得ない方向転換を見せる。それらを二度目の攻撃で撃破した。
そこへ追撃を仕掛けるのはサリエルだった。不調により空間の固定化を維持できなくなったことによりサリエルはエノクの正面に現れ、サングラスを外した。
「てめえの理想を否定するつもりはねえけどよ、今は邪魔だ」
見つめてくる赤い瞳。邪眼の呪いがエノクの動きを縛る。その隙にサリエルはエノクを蹴り飛ばした。
「ぐぅッ!」
衝撃に宙を走る。その軌道上にはミカエルが待ち受けていた。
「君との別れは残念だけど」
ミカエルの剣が下ろされる。エノクは吹き飛ばされる中それを見つけ剣を構えた。それによってミカエルの攻撃は防ぐが剣が弾かれエノクは体勢を崩されてしまう。
「さらばだ、エノク」
振るわれるいくつもの剣。瞬時に行われたそれをなんとか防ぎきるも最後の一撃に吹き飛ばされる。
エノクは能力を使い衝撃を殺した。ラファエル、サリエル、ミカエルと続く連携。それを踏みとどまる。
だがエノクの頭上、そこに陰が現れる。見上げれば巨大な炎の球体を掲げたウリエルが羽を広げていた。
「落ちろ」
ウリエルが見下ろす冷たい瞳。反対に燃え上がる巨炎。ウリエルは炎の玉をエノクに向け放射した。
「があ!」
全身を飲み込んでもなおあまりある直径。エノクは空から地面へと落とされていく。全身を覆う炎と熱に意識が蒸発しそうになる。
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