天下界の無信仰者(イレギュラー)
終わりだ、エノク
二人はにらみ合う。相手の出方を伺うが、しかし今こうしている間にもメタトロンはウリエルの攻撃を受けている。
じっとしている暇はなかった。エノクは剣を構えミカエルに切りかかろうとする、その直前。
「諦めろ、もはや止まらん」
そこへ新たな声が加わった。
「ガブリエル?」
エノクの背後、そこにガブリエルが現れたのだ。しかも現れるのは彼女だけではなかった。
「受け入れて、これも平和のためよ」
エノクの左側の空間からラファエルが。
「悪るいな人間、まあ大人しくしてくれや」
右側の空間からサリエルが。
エノクの四方を天羽に囲まれていた。
そして今し方、ウリエルの最後の攻撃を受けメタトロンは消滅し、ミカエルの上空背後にウリエルが降りてきた。
「終わりだ、エノク」
五対一。形勢逆転だ、さきほどまでニ対一だったのが、それを上回る数で覆される。
逃げ場はない。これでは勝ち目も。
絶対絶命だった。ただでさえ強力な天羽がそれも五人。
だが、エノクは剣を構えた。
「来るならば来るといい。だがな、天羽たちよ」
この状況で、なおエノクは諦めていなかった。怯えも不安も見せない。常に誰かの希望であるかのように、エノクは戦う意志を見せるのだ。
「勝ったと思うのは、まだ早いぞ」
普通ならば負け惜しみに聞こえるだろう。この状況でなにを言うと鼻で笑われても仕方がない。
しかし、ここにいる誰一人としてエノクを笑う者はいなかった。いつも皮肉った笑みを浮かべるミカエルも、飄然としているサリエルでさえエノクを笑うことはしなかった。
痩せても枯れても教皇の威光、彼を見くびることなど出来るはずがない。
それほどまでに本来の教皇の力は絶大だ。
「これは残念。では、私たちと戦うつもりかね、四大天羽全員と」
ミカエルが聞いてくる。エノクの力が如何に絶大であろうとも弱体化しているのは否めず、数の不利は明らかだ。
「俺もいるぞ!」
「これは失礼」
端から叫ばれるサリエルにミカエルは振り返ることなく形だけ謝る。
ミカエルからの確認。この状況でもなお戦うのかと。教皇エノクは強い、とてつもないほどに。しかしこれでは勝ち目は薄い。すでに戦いと呼べるものではなくなっている。
そんなミカエルからの質問に、エノクは威厳で応えた。
「来い。お前たち全員、私が相手になってやろう」
その言葉、その決意。誰しもが言えることではない。これは虚勢ではない、彼は本当に全員を相手にして戦い抜く気だ。ここにいる全員、言葉にはしなかったが感心していた。
これが人間。争い、奪い合い、傷つき合う。そんな人間が、これほどまで強くなれるのかと。
教皇エノク。人間でありながら信仰の極地へと至った生きる伝説。それに、五体の天羽が挑む。
その戦い、第一撃目。それは最も好戦的な天羽からだった。
「じゃあ死ねや」
サリエルからの無情な発砲。邪眼は使えない、仲間を巻き込む。サリエルは拳銃を抜き銃口をエノクへ向けた。
そこでサリエルが見たのは、バラバラに切断されている自分の拳銃だった。
「くっ!」
じっとしている暇はなかった。エノクは剣を構えミカエルに切りかかろうとする、その直前。
「諦めろ、もはや止まらん」
そこへ新たな声が加わった。
「ガブリエル?」
エノクの背後、そこにガブリエルが現れたのだ。しかも現れるのは彼女だけではなかった。
「受け入れて、これも平和のためよ」
エノクの左側の空間からラファエルが。
「悪るいな人間、まあ大人しくしてくれや」
右側の空間からサリエルが。
エノクの四方を天羽に囲まれていた。
そして今し方、ウリエルの最後の攻撃を受けメタトロンは消滅し、ミカエルの上空背後にウリエルが降りてきた。
「終わりだ、エノク」
五対一。形勢逆転だ、さきほどまでニ対一だったのが、それを上回る数で覆される。
逃げ場はない。これでは勝ち目も。
絶対絶命だった。ただでさえ強力な天羽がそれも五人。
だが、エノクは剣を構えた。
「来るならば来るといい。だがな、天羽たちよ」
この状況で、なおエノクは諦めていなかった。怯えも不安も見せない。常に誰かの希望であるかのように、エノクは戦う意志を見せるのだ。
「勝ったと思うのは、まだ早いぞ」
普通ならば負け惜しみに聞こえるだろう。この状況でなにを言うと鼻で笑われても仕方がない。
しかし、ここにいる誰一人としてエノクを笑う者はいなかった。いつも皮肉った笑みを浮かべるミカエルも、飄然としているサリエルでさえエノクを笑うことはしなかった。
痩せても枯れても教皇の威光、彼を見くびることなど出来るはずがない。
それほどまでに本来の教皇の力は絶大だ。
「これは残念。では、私たちと戦うつもりかね、四大天羽全員と」
ミカエルが聞いてくる。エノクの力が如何に絶大であろうとも弱体化しているのは否めず、数の不利は明らかだ。
「俺もいるぞ!」
「これは失礼」
端から叫ばれるサリエルにミカエルは振り返ることなく形だけ謝る。
ミカエルからの確認。この状況でもなお戦うのかと。教皇エノクは強い、とてつもないほどに。しかしこれでは勝ち目は薄い。すでに戦いと呼べるものではなくなっている。
そんなミカエルからの質問に、エノクは威厳で応えた。
「来い。お前たち全員、私が相手になってやろう」
その言葉、その決意。誰しもが言えることではない。これは虚勢ではない、彼は本当に全員を相手にして戦い抜く気だ。ここにいる全員、言葉にはしなかったが感心していた。
これが人間。争い、奪い合い、傷つき合う。そんな人間が、これほどまで強くなれるのかと。
教皇エノク。人間でありながら信仰の極地へと至った生きる伝説。それに、五体の天羽が挑む。
その戦い、第一撃目。それは最も好戦的な天羽からだった。
「じゃあ死ねや」
サリエルからの無情な発砲。邪眼は使えない、仲間を巻き込む。サリエルは拳銃を抜き銃口をエノクへ向けた。
そこでサリエルが見たのは、バラバラに切断されている自分の拳銃だった。
「くっ!」
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