天下界の無信仰者(イレギュラー)
どうした、これでお仕舞いか?
そこでカマエルはヨハネの前に立つと、翼を大きく広げたのだ。
「カマエル……」
神託物の意図にヨハネは意外そうな声を出した後感謝し、サリエルは忌々しく舌打ちした。
これではヨハネが見えない。天羽の翼に隠れ視認できなかった。
だが、その分苦痛を受けるのはカマエル自身だ。サリエルの邪視の矢面に立ったことにより呪いはカマエルをも浸食している。カマエルの端正な顔の眉間にしわが寄っている。
サリエルの邪視に対する戦い方は分かった。だがそれまでだ、空間転移もあってはどうしようもならない。
防戦一方だった、打つ手がない。
「どうした、これでお仕舞いか?」
サリエルの挑発が聞こえるが答えるだけの余裕もない。オラクル相手に勝とうと思えば相手と接触する必要がある。だが相手は拳銃と邪視による遠距離スタイルだ、ヤコブの時とは違う。
その時サリエルがカマエルの目の前に現れた。カマエルは即座に大剣で攻撃する。
それを、サリエルは片手で受け止めた。
「!?」
銃をしまった手で大剣を掴む。体を支える足は衝撃で地面を砕くがサリエルはびくともしていない。
「どけ」
サリエルは大剣を引っ張りカマエルを引き寄せると、彼女の横腹に蹴りを入れ吹き飛ばした。カマエルは地面を転がり勢いに引きずられていた。
サリエルの邪視は二十秒以上で相手の体力や精神力を吸収する。そのためカマエルはパワーダウンし、サリエルはその分パワーアップしていたのだ。カマエルの強大な力を得てサリエルは普段以上の力を発揮していた。
これで遮るものはなくなった。サリエルはヨハネを見つめ、ヨハネもサリエルを見つめた。
さきほどよりも激しい精神の乱れが襲ってきた。ヨハネは片膝を折りサリエルを見上げる。
「終わりだな、人間」
視認された時間、合計で四十秒を越えていた。
苦しい。ヨハネは立たされる苦境に表情を歪めていた。
体力、精神ももうギリギリだ、限界はすぐそこ。なのに突破口が見つからない。
(これで、終わりなのか……?)
苛まれる恐怖と苦痛、目の前の強敵に戦意が萎んでいく。勝とうと考えても、勝てないという結論が返ってくる。
人を守ること。助けること。それを尊くすばらしいものだと思ってきた。そのために頑張ってきた。
だが、過ちも少なくなかった。
人を助けるためと表して、どれだけの命を摘み取ってきたのか。かつての大戦で経験した多くの犠牲、そこにあった救われるべきだった人々。
ヨハネは、敵を救わなかった。救うべき敵を救わなかった。
なんという悲劇だろう。力ない者、弱い者。それこそ救われるべきなのに。
なのに、ヨハネは摘み取ったのだ。己の信仰に準じて。
それを悔いている。彼らの分まで自分は償い救わねばならないと思っている。
そして今、教師となった自分には大勢の大切な人がいる。こんな自分を慕い、笑顔を向けてくれる多くの生徒たちが。
守るべき存在がここにいる。
諦めるのか?
見捨てるのか?
力及びませんでしたと。
勝てませんでしたと。
まだ終わっていないのに、諦めるのか?
ヨハネは、立ち上がった。
「私は」
挫けそうだった瞳に意思が戻る。サリエルを睨み恐怖から立ち上がる。
「カマエル……」
神託物の意図にヨハネは意外そうな声を出した後感謝し、サリエルは忌々しく舌打ちした。
これではヨハネが見えない。天羽の翼に隠れ視認できなかった。
だが、その分苦痛を受けるのはカマエル自身だ。サリエルの邪視の矢面に立ったことにより呪いはカマエルをも浸食している。カマエルの端正な顔の眉間にしわが寄っている。
サリエルの邪視に対する戦い方は分かった。だがそれまでだ、空間転移もあってはどうしようもならない。
防戦一方だった、打つ手がない。
「どうした、これでお仕舞いか?」
サリエルの挑発が聞こえるが答えるだけの余裕もない。オラクル相手に勝とうと思えば相手と接触する必要がある。だが相手は拳銃と邪視による遠距離スタイルだ、ヤコブの時とは違う。
その時サリエルがカマエルの目の前に現れた。カマエルは即座に大剣で攻撃する。
それを、サリエルは片手で受け止めた。
「!?」
銃をしまった手で大剣を掴む。体を支える足は衝撃で地面を砕くがサリエルはびくともしていない。
「どけ」
サリエルは大剣を引っ張りカマエルを引き寄せると、彼女の横腹に蹴りを入れ吹き飛ばした。カマエルは地面を転がり勢いに引きずられていた。
サリエルの邪視は二十秒以上で相手の体力や精神力を吸収する。そのためカマエルはパワーダウンし、サリエルはその分パワーアップしていたのだ。カマエルの強大な力を得てサリエルは普段以上の力を発揮していた。
これで遮るものはなくなった。サリエルはヨハネを見つめ、ヨハネもサリエルを見つめた。
さきほどよりも激しい精神の乱れが襲ってきた。ヨハネは片膝を折りサリエルを見上げる。
「終わりだな、人間」
視認された時間、合計で四十秒を越えていた。
苦しい。ヨハネは立たされる苦境に表情を歪めていた。
体力、精神ももうギリギリだ、限界はすぐそこ。なのに突破口が見つからない。
(これで、終わりなのか……?)
苛まれる恐怖と苦痛、目の前の強敵に戦意が萎んでいく。勝とうと考えても、勝てないという結論が返ってくる。
人を守ること。助けること。それを尊くすばらしいものだと思ってきた。そのために頑張ってきた。
だが、過ちも少なくなかった。
人を助けるためと表して、どれだけの命を摘み取ってきたのか。かつての大戦で経験した多くの犠牲、そこにあった救われるべきだった人々。
ヨハネは、敵を救わなかった。救うべき敵を救わなかった。
なんという悲劇だろう。力ない者、弱い者。それこそ救われるべきなのに。
なのに、ヨハネは摘み取ったのだ。己の信仰に準じて。
それを悔いている。彼らの分まで自分は償い救わねばならないと思っている。
そして今、教師となった自分には大勢の大切な人がいる。こんな自分を慕い、笑顔を向けてくれる多くの生徒たちが。
守るべき存在がここにいる。
諦めるのか?
見捨てるのか?
力及びませんでしたと。
勝てませんでしたと。
まだ終わっていないのに、諦めるのか?
ヨハネは、立ち上がった。
「私は」
挫けそうだった瞳に意思が戻る。サリエルを睨み恐怖から立ち上がる。
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