天下界の無信仰者(イレギュラー)
それを俺に聞くかよ
朝日の光が瞼を叩いてくる。俺は目をゆっくりと開けた。
「もう朝か……」
昨日はそのまま寝ちまったんだな。俺は上体を起こす。
「ん?」
そこで手が繋がれていることに気付き振り向いた。
隣にはミルフィアが俺の手を握ったまま眠っていた。健やかな寝顔で呼吸をしている。
可愛らしい寝顔だ。というか、ミルフィアの寝顔なんて見るのは初めてかもしれない。いつも俺より早く起きるミルフィアには珍しい。昨日は泣き疲れでもしたのだろうか。
「主……」
「なんだ、起きたか?」
呼ばれたので返事をしてみるがミルフィアは瞼を閉じたままだ。
「寝言か」
一体どんな夢を見ているのか。俺がいるらしいけど、寝顔からきっと悪い夢ではないんだろうな。
「主……ハンバーグ……」
「なに言ってんだこいつ」
時計を見れば六時前だ。起床にはまだ早い時間だが起きることにした。ミルフィアも起こしたほうがいいだろうか?
「んー……」
まあいいか、このままで。
俺は握るミルフィアの手をそっと解く。名残惜しい感じはしたけれど。
俺は部屋を出て扉をそっと閉じた。
リビングに降りるとソファに加豪と天和が毛布を被って寝ていた。俺だけ部屋で寝てしまい申し訳ないがまあこの二人なら許してくれるだろう。
そのままベランダのガラスから外の菜園を見ると親父の背中が見えた。
別に理由なんてなかった。ただ、自然と足は外へと向かっていた。
「朝早いんだな」
玄関で靴に履き替え、俺はしゃがんで作業をする親父に声をかけた。
「おはよう。まあね」
親父は振り返らず作業を進めている。親父の目の前にはピーマンやさやいんげんが実っていた。市販のものと比べると歪な形をしているが丁寧に育てられてたんだとなんとく分かる。
親父は作業を進めていたがその手が止まった。
「神愛君、昨日はその」
ああ、そういうことか。
「気にしてねえよ。いつものことだろ、初めてじゃないんだし」
「うん……。そういえば昨日ね、あれから加豪ちゃんが言ってたんだ、お母さんに」
「加豪が?」
親父は背中を向けたまま話す。
「君は恩知らずなやつじゃない。普通の人間だって」
「そうか」
加豪がね。あいつらしいといえばあいつらしいか。
「いいお友達だね」
「まあな」
あいつらには何度も救われてる。俺にとって大切な存在だ。
そこで、親父が聞いてきた。
「神愛君は、お母さんのことをどう思う?」
「…………」
親父からの質問。それにすぐ答えられない。なんて答えればいいのか困る。
「それを俺に聞くかよ」
「やはり、恨んでいるかい?」
「…………」
母親のこと。俺はどう思っているんだろう。
思い返すのは反吐が出るような思い出ばかり。いつも怒鳴られて、きつく当たられて、嫌なことしかない。
ずっとずっと、そんなんばっかりだった。
嬉しかったことや、優しくされたことなんて一度もない。
ただの、一度も――
「……さあな」
そう言って俺は踵を返した。
「お母さんなら――」
そこで声を掛けられた。
「裏庭にいると思うよ。花壇に水をあげている」
「…………」
俺は止まっていた足を動かした。
「もう朝か……」
昨日はそのまま寝ちまったんだな。俺は上体を起こす。
「ん?」
そこで手が繋がれていることに気付き振り向いた。
隣にはミルフィアが俺の手を握ったまま眠っていた。健やかな寝顔で呼吸をしている。
可愛らしい寝顔だ。というか、ミルフィアの寝顔なんて見るのは初めてかもしれない。いつも俺より早く起きるミルフィアには珍しい。昨日は泣き疲れでもしたのだろうか。
「主……」
「なんだ、起きたか?」
呼ばれたので返事をしてみるがミルフィアは瞼を閉じたままだ。
「寝言か」
一体どんな夢を見ているのか。俺がいるらしいけど、寝顔からきっと悪い夢ではないんだろうな。
「主……ハンバーグ……」
「なに言ってんだこいつ」
時計を見れば六時前だ。起床にはまだ早い時間だが起きることにした。ミルフィアも起こしたほうがいいだろうか?
「んー……」
まあいいか、このままで。
俺は握るミルフィアの手をそっと解く。名残惜しい感じはしたけれど。
俺は部屋を出て扉をそっと閉じた。
リビングに降りるとソファに加豪と天和が毛布を被って寝ていた。俺だけ部屋で寝てしまい申し訳ないがまあこの二人なら許してくれるだろう。
そのままベランダのガラスから外の菜園を見ると親父の背中が見えた。
別に理由なんてなかった。ただ、自然と足は外へと向かっていた。
「朝早いんだな」
玄関で靴に履き替え、俺はしゃがんで作業をする親父に声をかけた。
「おはよう。まあね」
親父は振り返らず作業を進めている。親父の目の前にはピーマンやさやいんげんが実っていた。市販のものと比べると歪な形をしているが丁寧に育てられてたんだとなんとく分かる。
親父は作業を進めていたがその手が止まった。
「神愛君、昨日はその」
ああ、そういうことか。
「気にしてねえよ。いつものことだろ、初めてじゃないんだし」
「うん……。そういえば昨日ね、あれから加豪ちゃんが言ってたんだ、お母さんに」
「加豪が?」
親父は背中を向けたまま話す。
「君は恩知らずなやつじゃない。普通の人間だって」
「そうか」
加豪がね。あいつらしいといえばあいつらしいか。
「いいお友達だね」
「まあな」
あいつらには何度も救われてる。俺にとって大切な存在だ。
そこで、親父が聞いてきた。
「神愛君は、お母さんのことをどう思う?」
「…………」
親父からの質問。それにすぐ答えられない。なんて答えればいいのか困る。
「それを俺に聞くかよ」
「やはり、恨んでいるかい?」
「…………」
母親のこと。俺はどう思っているんだろう。
思い返すのは反吐が出るような思い出ばかり。いつも怒鳴られて、きつく当たられて、嫌なことしかない。
ずっとずっと、そんなんばっかりだった。
嬉しかったことや、優しくされたことなんて一度もない。
ただの、一度も――
「……さあな」
そう言って俺は踵を返した。
「お母さんなら――」
そこで声を掛けられた。
「裏庭にいると思うよ。花壇に水をあげている」
「…………」
俺は止まっていた足を動かした。
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