勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

アルデラさんと軽い別れ

 それから俺は毎日、ポチ達と実戦形式で何度も訓練をした。
 エキサラに初めて厨二を見せると何やら興奮しだして
 厨二ワードらしい事を吐き楽しそうにしていた。

 ポチは相変わらず俺の頭の事を心配しながら戦い、
 ヘリムは懐かしんで戦ってくれた。
 やはり皆口を揃え、以前よりも動きが良くなったと褒めてくれた。

 どうやら本当に厨二が再発したことによって
 パワーアップしているようだ。
 やはり厨二と言うのは恥ずかしい事ではなく、
 寧ろ、強くなるためには必要な事なのだと認識した。

 一番厄介なのはやはり厨二を覚えたエキサラだ。
 ただでさえ騒がしい――いや、元気の良いあのご主人様が
 厨二ワードなど覚えてしまったらどうなるかは予想が付くだろう。

「妾の漆黒の――何が良いかのうソラ?!」

 戦闘中なのにも関わらずそんなふざけた様な事を発してきたリ、
 いちいち関係のないようなポーズを取ったりしていて少しうざい。
 ……いや、まてよ。俺のマネをしているご主人様の事を少しうざいと思ってしまうと言う事は、
 俺も周りからしてみればうざいと思われていると言う事ではないか!!

「くははははは!これはなかなか楽しいのう!!
 喰らうが良い、妾の――」

 ……くっ、仕方がない。此処はエキサラの事を認めるしかない様だな。
 そうれば、俺も周りから認められる!!

 などと言う謎の事を考えつつも月日は流れて行く。

・・・・

「やぁ、リッチさんやい」

「随分と久しぶりだな」

 何故俺が地下のリッチ部屋にいるのかと言うと、久しぶりに会いたくなったからだ。
 ……本音を言うと、今の今まですっかり忘れていて、ふと思い出し、
 流石に顔を出さないと不味いと思い訪れたのだ。

「うん、ちょっと忘れていたからな」

「ほう、そうかそうか。そのまま忘れてくれても良かったのだぞ?」

「はっはっはっは、ま、今日は結構重要な話をしようと思ってな」

 本当に忘れてしまおうかと思うほどイラッとくる発言だったのだ、
 骸骨軍団をつくってくれたりと借りがある為、必死に抑えて、
 訪れたついでに俺はこれからの事をすべて話しておくことにした。
 一応彼もこの城の住人なのだから、知って置いても良いだろう。

「なんだ?」

「簡単に言うとな、もう少しで大規模な戦争が起きて、
 俺たちはそれに参加して、この世界を去ろうと思う」

「なんだ、自殺願望者か?」

「ん、違うぞ、馬鹿か?仕方ない詳しく説明してやろう――」

 物凄く簡単に説明したのが、それではよからぬ意味と捉えられてしまう為、
 仕方なく詳しく説明することにした。
 数分間も掛けてじっくり丁寧に説明してあげると、
 アルデラは、なんだそういう事か。と、今度こそしっかりと理解してくれたようだ。

「あまり驚かないんだな」

「ああ、寧ろお前がこの世界の生物では無い事が証明されて嬉しいぞ」

「お前、俺の事をなんだと思ってるんだ?」

「化け物だろう?」

 ついでに転生をしている事まで話したのだが、
 どうやら俺が化け物だという事が証明されてしまったらしい。
 此処まで人間らしく思いやりを持っているというのに!

「何処からどう見ても、中身を見ても俺は人間だろ?」

「ふっ、冗談はやめてくれ。と言う事は再び眠りにつけるのか。
 もう二度と目覚めない事を願って眠りに着くとするか」

「そっか、まぁ、色々と世話になった、ありがとな」

 俺たちがこの城から出ていくと、この城は再び無人となるだろう。
 静まり返ったのならばアルデラは再び安らかな眠りに着く。
 別にそれを止めたりはしない。
 ただ、その前に世話になったとお礼を言っておくことにした。

「ふん、さっさと行け……まぁ、久しぶりに楽しかったぞ」

「ああ、じゃあな」

 ヘリムに恋心をよせている変人アルデラと別れるのは少し悲しいような気がするが、
 そこまで長い付き合いでも親密な付き合いをしていた訳では無いので、
 直ぐに割り切る事ができ、俺は軽い足取りで地上に戻った。

「あ、そうだ」

 王座の間に出て俺はある事を思いつき、久しぶりに骸骨さんを呼び出し、
 ある人物に連絡をとってもらうことにした。
 そろそろあの作戦について詳しく話し合いたいしな、
 戦争が早まった件を伝える序だし丁度良い。

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