あえて鈍感のふりをしてみた

山田太郎

10.5話

〈桜視点   回想 〉

今日は入試なので早く会場に着くように早く出たはずが、なぜか迷いに迷って40分前に着く予定だったのに20分前になっている。

むー、そもそもここの学校がわけわからないところにあるのが悪い。
※ものすごく分かりやすいところにある

過ぎたことは置いておいて席について勉強しよう。
隣の席の人はそこそこイケメンだったけどあまり興味ない。会釈だけ交わしてカバンの中を開いた。

教科書とノートを取り重要なところを、確認。あ、筆記用具だしてないや。
あれ?………

「……っ!!!!」

ない!どこにもない!
私は焦ってカバンの中を全て出した。
私のことが気になったのか隣の男の子が話しかけてきた。

「ん?どうかしました?」

「…ペンケースがない…」

「え!!」

どうしよう…
男の子は驚き、すぐに考えるようにして聞いてきた。

「ねえ、家近い?」

私は首を横に振りながらカバンの中をひたすら探していた。

「んー、物を貸すの禁止行為だしな。」

ポケットの中とかも探してもどこにもない。

「どうしようかな…あ!そうだ!」

「ねえ、少し外に出よっか。」

隣の男の子が急に閃いたように私に言った。でも、家にまた帰っても戻るのにも時間かかる…

「でも、時間的に家には帰れない…」

「いいからいいから!」

そういい私を連れ校門の外に出た。

「さて、ここなら大丈夫だろう。」

「…何するの?時間ない。」

私は少し焦りと苛立ちが募りつい冷たく言ってしまった。

「ルールではさ、貸し借りはダメなんだよね。」

「そんなの当たり前。バレたら一発不合格。」

今更何言ってるの。そんなの当たり前。

「うん、詰んでるよね。じゃあさ、自分のだったらいいんだよね?」

「?当たり前じゃないの?」

「うん、当たり前だね。だからさこれ。」

そう言って男の子は私にシャープペンと消しゴムと替え芯を渡した。

「今貸し借りダメだって言ったばかり。」

「貸したんじゃないよそれ。あげたの。もう今受け取ってる時点でそれは俺のものじゃなく君のもの。だから君は自分の筆記用具を使って受験することになる。なんも問題ないしょ。」

なにそれ、そんなのダメに決まってる。

「!!そんなの詭弁だよ!ダメだって!」

「じゃあ君は落ちたいの?ここまで頑張ってきて、俺の隣ってことは特進クラスに入ろうとしてて、諦められるの?それに、詭弁だとしても一応違反はしてないよ?こういう時はありがとうって言って素直に受け取るべきだよー。」

その言葉に私はハッと気づかされた。今まで色んな人に迷惑をかけ、ここの学校もずっと反対されていた中お母さんが折れてくれて受験させてくれた。
今この男の子の厚意を無駄にしたら今までの努力が全て水の泡になる。

「……ありがとうございます。助かりました。絶対に入学後にお礼しますので!」

「うん、楽しみに待ってるよ。一緒のクラスだといいね。」

男の子はとても綺麗な笑顔でそう言ってくれた。

「はい!」

この時から私はこの男の子にベタ惚れだったのかな?





「えーと、私のクラスは…Aクラスか。あの人いるかな?」

あの人のおかげで無事合格でき、今でももらった筆記用具は大切に使わせてもらっている。お迎えテストでも使うつもりだ。

そしてそのままあの人に会うことなく入学式が始まった。

落ちた…とかないよね?大丈夫だよね?
隣のクラスのだけだよね?
こんなこと考えていて、入学式の話はちっとも頭に入らなかった。

「……新入生代表、水野裕太。」

!!今の声!

ふと顔を上げるとあの時の男の子が壇上に立っていた。
よかった!この学校に通ってる!

これからの学校生活期待できそう。





〈桜視点〉

まさか、まさかまたこんな場所で会えるとは…
初めて自分の迷子癖に感謝した。

しかも!しかも!!名字覚えててくれてたし名前呼びされた!!あとお昼一緒に食べれる!!あれ、名字言ったことあったっけ?まあいいや!
えへへー…裕太君かぁ…//






「入部届け今から配るぞー。昨日部活色々見ていったと思うが自分が3年間しっかり続けれそうだって思った部活を考えて入れよー。春休みから部活に来ていたやつや、もう部活決めたってやつもいるだろうが、あと1週間は仮入部期間なんだから他の部活を見てもいいんだぞー。」

部活か…裕太君はなにか部活入るのかな…
私はピアノ弾けるだけでスポーツとか他の楽器だったりとかできないしなぁ。
でもでも!裕太君がいるなら頑張れそう!

「ねえねえ!軽音部とか楽しそうじゃない!?」

「えー、むずかしそうー。」

「あ、知ってる?入試の首席君と次席ちゃん軽音部なんだってー。首席君なんかでかいギターケース持ってたし多分本当だと思うー。」

「へー…」

なんですと!!
軽音部か…お昼に聞いてみるかな。
でも私キーボードくらいしかできない気がする。ピアノはすごく好きで頑張ったし自信はあるけど、他の楽器できるのかなぁ。





ついにお昼!食堂に行こう!!

「あ、桜。ごめんね待った?」

「いいい、いいえ!全然!」

「あはは、じゃあ行こっか。」

「あえて鈍感のふりをしてみた」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

  • re:蟻

    桜視点が遥視点になってますよ

    2
コメントを書く