あえて鈍感のふりをしてみた

山田太郎

第3話



〈春視点〉

母さんのいじりからようやく解放されて、私は今母さんの車で兄さんの行く高校に行きました。
兄さんの行く高校は札幌高校といい、結構最近にできた私立の学校です。
すでに保護者は入れるようで、父さんが席を確保してくれていました。

にしても、ほんとこの学校広いです。廊下とかも迷路みたいでした。それにすごくきれいです。

「この学校広いですね。体育館もバスケのコートが3つ作れますし。」

「まあ私立だしね。私立なら珍しくもないよ。俺も高校の時これくらいだったしな。それにしても綺麗だなここ。」

父さんの通ってた学校もこんな広いんですね。私の中学校はこんな広くないしここまで綺麗でもないので、少し羨ましいです。

「ほら、もうそろそろ始まるよ。携帯マナーモードにした?」

「はい。大丈夫です。」

ここで携帯なってしまったらすごい恥ずかしいですね。一応確認して、また前を向きました。

「新入生、入場。新入生が入場します。みなさま、拍手でお迎え下さい。」

そうこうしてるうちに入学式が始まりました。

「兄さんって何組ですか?」

「B組よ。」

この学校ってクラスは1.2.3...じゃなくて、A.B.C....なんですね。

「続いて、B組、担任は佐藤彩先生。」

おっ、兄さんのクラスですね。あと、担任の先生かわいいですね。なんか、ゆるふわ系です。身長私と同じくらいでしょうか。新人の先生って感じです。

あ、兄さんが通りました!あ!目が合いました!思わず手を振ってしまいました。

「春、はしゃぎすぎよ。」

「は、はしゃいでなんかないです!ただ背筋伸ばしただけです!」

ええ、はしゃいでなんかないです。だからそんな生温かい目で見ないで下さい!
兄さんも苦笑いしないで下さい!







入学式も終わりの方に近づいてきました。
意外と校長先生やPTA会長のお話は面白く、結構暇だとか、そんなことは思わなかったです。

「新入生挨拶。新入生主席、水野裕太。」

え!兄さんって主席だったんですか!聞いてませんよそんなの!

「サプライズ成功ね。春には黙ってたの。その方が面白そうだったからね。」

そんな…もし私がこの入学式来てなかったらこれ見れなかったってことですよね!?
あ、母さんのことだから言ってなかったら連れてきたのかもしれません。いや、この人のことだから来るってわかってたのかもですが。

「…この学校は生徒の自由と自主性を大切にしているので、私たち新入生一同、ここでの3年間をしっかりと過ごし、自分で考えて行動するということを当たり前のようにできるように努めます。これから3年間よろしくお願いします。新入生代表、水野裕太。」

パチパチパチ

兄さんの話は長すぎず短すぎずで、すごい無難なことを言ってましたが、それでもカッコよく見えました。

「すごいですね、兄さん。」

なんか、言葉がでてきませんでした。

「そうね。まあこんなに大人数の中で主席だしね。それにこんなかわいい妹から好意をもらってるって、裕太すごいね。」

「な!ちが!…違くないですけど…はぁ、どれもこれもあの人が鈍感すぎるのが悪いんです。…」

あの人は鈍すぎます。どこの小説の主人公ですか。あとなんで母さんも父さんもそんなニヤついてるんですか。

「新入生が退場します。拍手でお送り下さい。」

あ、もう終わってしまいましたか。結構早かったですね。
またこの後いじられるのでしょうか…しかも兄さんも一緒に混ざって…
なんかもう…諦めました。







〈裕太視点〉

「んーと、俺のクラスは…あった。B組か。」

この学校はA〜Hの8クラスある。ABは特進クラス、他は進学クラスだ。

特進クラスは国公立や難関私大を目指すところで、去年も東大などの偏差値高めの国公立に現役で20人、慶応などの難関私大に45人ほど入ってる。
この2つのクラス合わせて80人だからかなりすごいと思う。もちろん残念ながら落ちてしまった人もいるが、その人たちも浪人して次の年に必ず合格してるという実績がある。

進学クラスも国公立を目指してる人が多い。特進クラス並みに高くはないが、それでも国公立にはかなり合格している。まああれだ、自称進学校的な…ね?

俺はその中で特進で主席をとったのだ!おそらく、点数自体はあまりみんなと差はないが、英語のスピーキングで他の人と差をつけたのだろう。

「教室ここだよな。綺麗すぎないか?なんか入る前から圧倒されてるんだが。」

綺麗。綺麗すぎる。やっぱここ数年でできたからか?教室に行くまでもとても綺麗だったし。よし、入るか。

「中もすごいな。エアコンもついてるし、これはタブレット?タブレット学習するのか。」

ハイスペックすぎないか?ここ。

にしてもやはり初日だからか、誰も何も喋らない…俺1人でなんか独り言言ってるだけじゃん。



このまま誰にも話されないままホームルームの時間となった。
小説のような謎の親友ポジのキャラ的な人は現実にはいないのだ。

「みなさん、入学おめでとうございます。今日からここの担任の佐藤彩です。気軽にあやっちって呼んでね。私も初めて担任をもつのでミスがあると思うけど、みんなフォローしてね。」

佐藤先生、いきなり入学したての俺らにフォロー求めるって…あと、先生って別に髪染めてもいいの?金髪だけど。

「ここの学校は校則があってないようなものなので、常識的に考えてよければ大丈夫です。私のように髪染めても大丈夫です!」

あ、いいんだ。すごいな。

そのあと、入学式の流れなどを確認した。
あと俺は新入生代表なのでその話もされた。
ついでにあやっちと呼ぶことになり、趣味が合ってそこそこ仲良くなったのは別の話。
え?俺の趣味?ギター弾くこととか、歌うこととか。まあこの話はまた後で。





「新入生、入場。新入生が入場します。みなさま、拍手でお迎え下さい。」

ようやく入学式が始まるまずA組が呼ばれ、入場した。俺は確か父さんは右の通路側で前の方って言ってたな。

「続いて、B組、担任は佐藤彩先生。」

ん、ついにか。
俺は出席番号真ん中の方なので、結構早くくる。

おっ、みんないた。
春はなんか目を輝かせながら背を伸ばしたり、体を右に傾けたり左に傾けたり…
どんだけ俺のこと見たいのさ…
目が合った瞬間手降ってるし…
少し春に苦笑しながら自分の席のところに着いた。

「あれ、君の妹さん?」

「まぁ、そうです。」

「ふふっ、かわいいねあれ。すごい好かれてるんだね。」

「あそこまではしゃがれると困るんだけどね。」

隣に座ってた人にも笑われた。
初めての高校の女子の同級生からの第一印象ブラコンの妹を持つシスコン野郎に決定した瞬間。

「これより、第7回札幌高等学校入学式を開式します。」






すごいな。中学の時のお偉い人のお話とか、すごいつまらなかったのに、ここの人たちの話はとても面白かった。
結構あっという間に入学式は進み、ついに俺の挨拶の時になった。

「新入生挨拶。新入生主席、水野裕太。」

お、ついにか。噛まないようにしよう。



「…この学校は生徒の自由と自主性を大切にしているので、私たち新入生一同、ここでの3年間をしっかりと過ごし、自分で考えて行動するということを当たり前のようにできるように努めます。これから3年間よろしくお願いします。第7期新入生代表、水野裕太。」

パチパチパチ

ふぅ、なんとか言えたな。よし、上出来だろう。

「新入生が退場します。拍手でお送り下さい。」

入学式もあっという間に終わり、あとはホームルームで軽く明日からの説明をされて帰るだけとなった。
これからの高校生活が楽しみだ。

コメント

  • Mrata

    いいですね!

    4
  • YON

    誤字あります

    3
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