何もできない貴方が大好き。

すみれ汁

登校〜Ibuki side〜


彼女の発言に少々疑問を感じたものの、千聖ちゃんの言う通りに、彼女の目線と同じくらいにしゃがむ。
_すると彼女の白くて細い指先が、包み込むように僕の頬を撫でた。
千聖ちゃんの髪の、シャンプーのようないい匂いが鼻をかすめる。
「なっ!?何してんの!?!」
千聖ちゃんの端正な顔が、少しでも動くとお互いの唇が当たってしまいそうなほど、近距離にあった。
動揺して、思わず彼女から距離をとると、僕の幼馴染の金城千聖ちゃんはきょとん、とした顔でこちらを見たまま、僕の質問に答えた。
「...なにって、伊吹の寝癖直してる」
「そ、そうじゃなくて!!近すぎない!?!」
そう。本来なら高校生にもなって、異性の幼馴染にするべき行動じゃない。
普通の男女の幼馴染はこんなに距離が近くはないはずだ。
なのに彼女は幼稚園児の時からの幼馴染の距離を今でも保ち続けている。
いや、僕としては嬉しいけど...!!
すると彼女はくすくす笑って言う。
「どしたの伊吹、顔真っ赤だよ?もしかして恥ずかしい?」
自分がした行動に全く恥じた様子がない彼女に、僕は思わずため息を吐いた。
恥ずかしいに決まってる。 

好きな子がこんな近くに来たら、誰だって...。




僕の幼馴染である“金城 千聖かねしろ ちさと”は、吃驚するほど完璧な人間だ。
人形のように整った顔立ちにスレンダーな身体の、完璧な容姿。
成績優秀、なのに嫌味に感じない。
優しくて、男女分け隔てなく平等に接する。
彼女にとって唯一苦手なものは爬虫類くらい。
しかし、正直それすら欠点と呼べない。
欠点が全く見当たらないような、完璧な美少女。
そんな彼女を誰もが尊敬し、誰もが愛した。
告白された回数は数知れず。
中学では密かに彼女のファンクラブができていた。
なのに彼女は一度も告白を了承したことがない。
意外と硬派なところがまた、人気を呼ぶ。
無論、僕も千聖ちゃんに密かに想いを馳せている身である。
でも僕には、一緒に登校するだけで精一杯だ。
こんなに意気地なしなら、高校生になってもきっと幼馴染のままだろう。

抵抗するのを諦めてしゃがんでいると、寝癖で跳ねていた髪は、千聖ちゃんによっていつの間にか整っていた。
そして千聖ちゃんは、子供の時と変わらない無邪気な笑みを向けてくる。
きっと完璧な彼女は僕みたいに小さなことで悩むことなんてないのだろう。
また僕は溜息をついた。

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コメント

  • ミラル ムカデ

    早く続きが読みたいです!

    0
  • すみれ汁

    ご指摘ありがとうございます!!(>人<;)

    1
  • 刹那@土日19:00投稿

    登校漢字間違ってますよ。一応・指摘しときます。

    1
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