白昼夢の終演、僕が見たエトセトラ
あとがき
あとがきまで見てくださっている心優しい読者様。
改めまして、『探し物探偵シリーズ』全六作をお読みいただき、誠にありがとうございます。
作者と主人公が、並んで深く深く感謝致します。もう本当に、土下座の域で。
総括と言っても大したことはないんですが、六作も書いたぜ! という喜びをだらだらと書きたい欲が出ただけなので、斜め読みしてくださいまし。
遡ること2015年2月。
『真夜中の約束、君からのオブコニカ』でこのシリーズは始まりました。
推理小説が大好きで、なろうに登録してからいつかは書いてみたいなと思っていたのを形にしたのが、この一作目です。
と言いつつ、出来上がったものは被害者「自殺」という、推理小説にあるまじき結果なんですが……。もう今更気にしない(笑)
まずは主人公の話でもしましょうか。
〈主人公・神咲歩について〉
彼は元々別の作品の主人公になる筈でした。
設定や冒頭は出来ていたんですが、完結させられる自信がなかったので潔くボツに。その時の「神咲歩」はもっと頭の切れる子でした。
今だってメカには強いけど、感情面で少し弱い所があります。
それは特別なものではなくて、誰でもあるものとして歩の中に込めたつもりです。
どこにでも居るような弱さを持つ青年が、イレギュラーな「死」とそこにある「真実」を前に、単純な善と悪で分けられない物事をどう見るか何を思うか、そしてどう変化するかを軸にして、このシリーズを書いてきました。
(文字にすると意外にスケールが大きくてびっくり笑)
探し物探偵、になったのはどうしてだったかな?笑
確か、探偵ではないけれど探偵を名乗る存在にしたくて、それならどんな仕事かと考えた時に出てきたのが、探し物だったような。
割りとそんなぬるっとした感じで主人公は出来上がり、書いていく内に軸が固まっていった感じがします。
〈高橋季久代について〉
シリーズヒロインといえばこの方、高橋さん!
両親のことは書かずにあえての、高橋さん!!
五作目でやっとフルネームが明らかになったのに本編で一回しか使ってないので、書いておきました。キクヨさんです。
彼女も作数を追う毎にどんどん大者感が出てしまいました。交友関係広すぎ。その内、知り合いが総理大臣とかになりそう。
人が寄ってくるというよりは、どこにでも首を突っ込むタイプで、でもああいう人柄なので何だかんだ愛されちゃうマダムなんです。
内容に直接関わらないけど、どこか主人公に寄り添ってくれるキャラクターが好きで、高橋さんはまさにそんな存在になってくれました。
一作目から歩を支えてくれた方なので、最後はしっかり出ていただきました。きっとこれからも探し物探偵を支えてくれることでしょう。
そろそろ作品に移ります。記憶のある範囲で……。
①『真夜中の約束、君からのオブコニカ』
当時はこの一作で終わる予定だったので、好きな設定を詰め込みました。
館、儚げな美女、執事、花言葉……。好きなんですよねぇ。
テーマは「信じるものの違い」ってところでしょうか。
夫婦も執事も婚約者も、自分の“愛”を信じていました。その愛情があり続ける限り未来があると信じていた訳です。
でもその愛を受けていた彼女だけは、“今”を信じていました。
愛してくれる両親が居て、いつも支えてくれる恋人が居て、応えられないけれど愛してくれた兄のような存在が居て。そのどれもが勿体ないくらい溢れている今が幸せだからこそ、もう終わりにするべきだと思ったんです。
ある意味、無責任で自分勝手な決定ですが、孤児だった彼女の心根は自分が幸せではいけないと考えてしまうほど深い傷を負っていたということです。
皆様はどのように受け取られたでしょうか?
②『瀬戸際の証明、囚われたジャンキー』
悩みに悩んで二作目に選んだのがこちらです。
「諦めた人と諦めきれなかった人」というのが軸だったかなと思います。
画家を諦めて友情を取ろうとした男と、画家を諦めきれずに友情を切り捨てた男。
友情も難しいものですよね。前作が愛に重きを置いていたので二作目では友情を書きたくて、こういった内容になりました。
「網膜色素変性症」については結構ちゃんと調べましたね。今までで一番調べて書いたかもしれません。
でもこの作品に関してはあまり書くことがありません(笑)
③『雨模様の終礼、隠されたスピリット』
高校を舞台にしてみたく、このお話ができました。
被害者が最低男だったので、皆の発言を書きながら熱が篭りましたよ……。自分で決めた設定だけどね。
この作品のテーマはそのままずばり「スピリット(精神・情熱)」です。
“守りたい”というスピリットによって、ある人は罪を犯し、ある人は罪を被ろうとし、ある人はなかったことにしようとする。
死を前にすればどれも良しとはできないですが、人の行動には様々なスピリットが隠れていることを、歩に見せたかったんです。
「貴女の代わりは居るのですか?」
この言葉は、後々ブーメランのように歩自身がぶつかる問いでもありました(言及はありませんが)。
④『一等星の再来、始まりのラビリンス』
歩の初恋相手の登場です。回想など、いかがだったでしょうか?
初恋と今も残る感情を思い返し、罪の理由が愛であることから「愛情とは?」という問いについて考える作品となりました。
彼女は純粋に愛されることができない女性でした。自分の愛も不確かで。
ただ実際のところ、歩のことは真剣に好きだったのでしょう。あれが最初で最後、彼女の本当の恋だったのだと思います。
⑤『玉虫色の依頼、少女達のストライド』
少女が殺人を犯す。とてもヘビーな内容となりました。双子ゆえの真実を皆様はどのようにご覧になったでしょう?
テーマとして挙げるとすれば「家族について」。
毎日を共にする関係。そこに大切に思う気持ちがあれば、血の繋がりはなくとも家族なのだと思います。
一作目と絡む部分もありましたが、彼女達も確かに家族でした。
唯一の血の繋がった家族を隔ててしまったのは作者として心苦しいですが……歩が家族について考える大切な機会だったと思います。
⑥『白昼夢の終演、僕が見たエトセトラ』
そして今作。これまで歩が見てきたことを全て詰め込んだつもりです。
離れていた家族が集まり、過去の真実が明らかになります。
明るい母が抱えていた病気。寡黙な父親の隠した心情。
どちらも息子を思うが故でしたが、やはり歩の両親、少し不器用でその思いの表し方を間違えていました。父親はまだまだ直りそうにないですが。
また、歩自身も気付いていなかった感情が飛び出します。これまで他人には見せなかった激情。きっと色んな経験をする前であれば、ふたりに会ってもこんなことは言わなかっただろうと思います。
成長してないじゃないかって?
それは皆様のご想像にお任せします。
と言いつつ、当初はもっと綺麗な感じでまとまる予定だったんですよ?
それこそ作中で歩が“綺麗事”と称している方向に。
でも違うなって思って。だって、出来すぎたシナリオはうんざりするから。
という感じで作り直したのがこの結末です。
どうだったでしょう、がっかりしました?
でも人生なんてこんなもんですよ(綺麗にまとめた風)。
さて、長々と書いてしまいました。退屈だったでしょう?(笑)
繰り返しますが、二年一ヶ月という長きに渡ってお付き合いいただきましたこと、本当にありがとうございました。
探し物探偵シリーズはここで終わりますが、この中に切り取った人々の人生は今もどこかで息づいているのだと思います。
ある時ふと思い出していただけるような存在に成長できていれば嬉しいです。
それではまた、どこかでお会いできますことを願って。
改めまして、『探し物探偵シリーズ』全六作をお読みいただき、誠にありがとうございます。
作者と主人公が、並んで深く深く感謝致します。もう本当に、土下座の域で。
総括と言っても大したことはないんですが、六作も書いたぜ! という喜びをだらだらと書きたい欲が出ただけなので、斜め読みしてくださいまし。
遡ること2015年2月。
『真夜中の約束、君からのオブコニカ』でこのシリーズは始まりました。
推理小説が大好きで、なろうに登録してからいつかは書いてみたいなと思っていたのを形にしたのが、この一作目です。
と言いつつ、出来上がったものは被害者「自殺」という、推理小説にあるまじき結果なんですが……。もう今更気にしない(笑)
まずは主人公の話でもしましょうか。
〈主人公・神咲歩について〉
彼は元々別の作品の主人公になる筈でした。
設定や冒頭は出来ていたんですが、完結させられる自信がなかったので潔くボツに。その時の「神咲歩」はもっと頭の切れる子でした。
今だってメカには強いけど、感情面で少し弱い所があります。
それは特別なものではなくて、誰でもあるものとして歩の中に込めたつもりです。
どこにでも居るような弱さを持つ青年が、イレギュラーな「死」とそこにある「真実」を前に、単純な善と悪で分けられない物事をどう見るか何を思うか、そしてどう変化するかを軸にして、このシリーズを書いてきました。
(文字にすると意外にスケールが大きくてびっくり笑)
探し物探偵、になったのはどうしてだったかな?笑
確か、探偵ではないけれど探偵を名乗る存在にしたくて、それならどんな仕事かと考えた時に出てきたのが、探し物だったような。
割りとそんなぬるっとした感じで主人公は出来上がり、書いていく内に軸が固まっていった感じがします。
〈高橋季久代について〉
シリーズヒロインといえばこの方、高橋さん!
両親のことは書かずにあえての、高橋さん!!
五作目でやっとフルネームが明らかになったのに本編で一回しか使ってないので、書いておきました。キクヨさんです。
彼女も作数を追う毎にどんどん大者感が出てしまいました。交友関係広すぎ。その内、知り合いが総理大臣とかになりそう。
人が寄ってくるというよりは、どこにでも首を突っ込むタイプで、でもああいう人柄なので何だかんだ愛されちゃうマダムなんです。
内容に直接関わらないけど、どこか主人公に寄り添ってくれるキャラクターが好きで、高橋さんはまさにそんな存在になってくれました。
一作目から歩を支えてくれた方なので、最後はしっかり出ていただきました。きっとこれからも探し物探偵を支えてくれることでしょう。
そろそろ作品に移ります。記憶のある範囲で……。
①『真夜中の約束、君からのオブコニカ』
当時はこの一作で終わる予定だったので、好きな設定を詰め込みました。
館、儚げな美女、執事、花言葉……。好きなんですよねぇ。
テーマは「信じるものの違い」ってところでしょうか。
夫婦も執事も婚約者も、自分の“愛”を信じていました。その愛情があり続ける限り未来があると信じていた訳です。
でもその愛を受けていた彼女だけは、“今”を信じていました。
愛してくれる両親が居て、いつも支えてくれる恋人が居て、応えられないけれど愛してくれた兄のような存在が居て。そのどれもが勿体ないくらい溢れている今が幸せだからこそ、もう終わりにするべきだと思ったんです。
ある意味、無責任で自分勝手な決定ですが、孤児だった彼女の心根は自分が幸せではいけないと考えてしまうほど深い傷を負っていたということです。
皆様はどのように受け取られたでしょうか?
②『瀬戸際の証明、囚われたジャンキー』
悩みに悩んで二作目に選んだのがこちらです。
「諦めた人と諦めきれなかった人」というのが軸だったかなと思います。
画家を諦めて友情を取ろうとした男と、画家を諦めきれずに友情を切り捨てた男。
友情も難しいものですよね。前作が愛に重きを置いていたので二作目では友情を書きたくて、こういった内容になりました。
「網膜色素変性症」については結構ちゃんと調べましたね。今までで一番調べて書いたかもしれません。
でもこの作品に関してはあまり書くことがありません(笑)
③『雨模様の終礼、隠されたスピリット』
高校を舞台にしてみたく、このお話ができました。
被害者が最低男だったので、皆の発言を書きながら熱が篭りましたよ……。自分で決めた設定だけどね。
この作品のテーマはそのままずばり「スピリット(精神・情熱)」です。
“守りたい”というスピリットによって、ある人は罪を犯し、ある人は罪を被ろうとし、ある人はなかったことにしようとする。
死を前にすればどれも良しとはできないですが、人の行動には様々なスピリットが隠れていることを、歩に見せたかったんです。
「貴女の代わりは居るのですか?」
この言葉は、後々ブーメランのように歩自身がぶつかる問いでもありました(言及はありませんが)。
④『一等星の再来、始まりのラビリンス』
歩の初恋相手の登場です。回想など、いかがだったでしょうか?
初恋と今も残る感情を思い返し、罪の理由が愛であることから「愛情とは?」という問いについて考える作品となりました。
彼女は純粋に愛されることができない女性でした。自分の愛も不確かで。
ただ実際のところ、歩のことは真剣に好きだったのでしょう。あれが最初で最後、彼女の本当の恋だったのだと思います。
⑤『玉虫色の依頼、少女達のストライド』
少女が殺人を犯す。とてもヘビーな内容となりました。双子ゆえの真実を皆様はどのようにご覧になったでしょう?
テーマとして挙げるとすれば「家族について」。
毎日を共にする関係。そこに大切に思う気持ちがあれば、血の繋がりはなくとも家族なのだと思います。
一作目と絡む部分もありましたが、彼女達も確かに家族でした。
唯一の血の繋がった家族を隔ててしまったのは作者として心苦しいですが……歩が家族について考える大切な機会だったと思います。
⑥『白昼夢の終演、僕が見たエトセトラ』
そして今作。これまで歩が見てきたことを全て詰め込んだつもりです。
離れていた家族が集まり、過去の真実が明らかになります。
明るい母が抱えていた病気。寡黙な父親の隠した心情。
どちらも息子を思うが故でしたが、やはり歩の両親、少し不器用でその思いの表し方を間違えていました。父親はまだまだ直りそうにないですが。
また、歩自身も気付いていなかった感情が飛び出します。これまで他人には見せなかった激情。きっと色んな経験をする前であれば、ふたりに会ってもこんなことは言わなかっただろうと思います。
成長してないじゃないかって?
それは皆様のご想像にお任せします。
と言いつつ、当初はもっと綺麗な感じでまとまる予定だったんですよ?
それこそ作中で歩が“綺麗事”と称している方向に。
でも違うなって思って。だって、出来すぎたシナリオはうんざりするから。
という感じで作り直したのがこの結末です。
どうだったでしょう、がっかりしました?
でも人生なんてこんなもんですよ(綺麗にまとめた風)。
さて、長々と書いてしまいました。退屈だったでしょう?(笑)
繰り返しますが、二年一ヶ月という長きに渡ってお付き合いいただきましたこと、本当にありがとうございました。
探し物探偵シリーズはここで終わりますが、この中に切り取った人々の人生は今もどこかで息づいているのだと思います。
ある時ふと思い出していただけるような存在に成長できていれば嬉しいです。
それではまた、どこかでお会いできますことを願って。
「推理」の人気作品
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