【佳作受賞作品】おっさんの異世界建国記
リムルの暗躍する!
「どうして…・・・ここに問題迷惑女がいるんだ?」
俺は、小さく言葉を口ずさむ。
もちろん、ある程度距離があることを確認して呟いている。
いくらなんでも、どうしようもなく救いようの無い身勝手な女というイメージしかないゴミでも、一応は女性であることに違いはない。
男には辛辣な俺であっても、女性に対してだけ表面上は紳士に対応することにしているのだ。
なにせ、陰で何を言われるか分かったものではないからな。
俺の内心を他所に、迷惑女リムルが目の前まで近寄ってくると、「カンダさん、申し訳ありません!」と頭を下げてきた。
いきなりの態度に俺は驚いた。
「魔王でも復活したのか? それとも邪神でも蘇ったのか?」
俺は生活魔法の一つである探索の魔法を発動させて周囲を警戒する。
これは由々しき事態だ!
冒険者になって10年、どんなことがあろうと頭を下げたことがないリムルが出会い頭に頭を下げてきた。
それは世界の終わりか天変地異の前触れに違いない!
「違います……、私、カンダさんに酷いことをしてしまって……」
「酷いこと?」
ますます頭の中が混乱してくる。
こいつが自分の非を認めてくるなんて、そんなことはありえない。
裏があるとしか思えない。
「はい。実は私も後から知ったのですが開拓村エルはかなり危険な場所だったらしいのです。開拓村の仕事を受けていた冒険者からの報告が遅かったこともあり、対応が遅れてしまって……」
「ふむ…・・・」
俺は顎に手を当てながら考える。
つまり、リムルが頭を下げてきたのはあくまでも自分の非ではなく冒険者ギルドがだめだったからという理由で謝罪を口にしたのだろう。
そうでなければ、この女が謝るわけがない。
口を開けば、「謝ったら負けだと思う」とか言う奴だからな……。
「あの、カンダさん――」
「何だ?」
「少し込み入った話もありますので、どこかに移動して話をしませんか?」
なるほど……。
つまり、冒険者ギルドの不祥事を人目がつく往来でするわけがいかないという訳か……。
冒険者ギルドも仕事をクライアントから委託してもらって居る訳だし、信用商売であると同時に信頼は商売をする上での担保みたいなものだからな。
「まぁ、いいが……」
「それでは、そこの宿でどうでしょうか!」
「いや、そこは……」
「何か不味いのですか?」
不味いというかラブホテルなんだが……。
まぁ、機密性というか声が外部に漏れないというか、そういう観点から見る分には問題ないと……思う……たぶん、きっと……。
「いや、ちょっと、そこはな……」
「分かっています! 男女が交わったりする場所ですよね? そのくらいは知っています。そこの宿は、港町カルーダが本店ですから。内密な話をするには打ってつけないんです。そうよね? クレミア」
リムルに話かけられた冒険者ギルドの新人の受付嬢は体をビクッ! と揺らすと上目遣いで俺の方へ視線を向けてくると「カンダ様、お願いします……リムル先輩の話を聞いてください」と涙声で訴えかけてきた。
「リムル……、お前は無理矢理と言わせているわけじゃないよな?」
「違います! リムル先輩は、悪くないのです。ただ、私の要領が悪くて……」
俺の言葉に必死な表情で両手を大きな胸の前で組んだまま、クレミアという女性は瞳に涙を貯めて俺に懇願してきた。
「はぁー……、それなら仕方ないな」
俺は溜息をつきながらリムルの提案を受け入れることにした。
さすがに、リムルはどうでもいいが、新人の女性には優しくしておいたほうがいいからな。
仕方なく、俺はリムルとクレミアという女性――美人というよりもかわいい系のロングヘアーの赤茶髪の女性を共だって、リルカやエルナと泊まった宿屋へと入る。
「一部屋借りたいのだけど? 機密性の高い部屋がいいわ」
「どのくらい宿泊される予定ですか?」
「そうね……」
リムルがカウンターの女性と話をしている途中に俺の方へと顔を向けてきた。
すると、俺の手に抱きついてくると「彼が満足するまででお願いできますか?」と、宿の女性話しかけていた。
そこで、ようやく俺の存在に気がついたのか、先ほど笑顔で対応してくれた女性は一瞬、驚いた表情を見せたあと、眉間に皺を寄せて俺を睨んできた。
どうして、俺が睨まれないといけないのか……。
借りたのはリムルなのに、酷い言いがかりだ。
鍵を借りたリムルは、俺の手を掴んだまま階段を上がっていく。
そして部屋に入ったところで腕を解いてくれた。
リムルは思ったよりも着痩せするらしく、おそらく俺が出会った中で一番、胸が大きい女性かも知れない。
「部屋番号は202号室か……」
「202号室が何かあるの?」
「いや、特には……」
まずいな……。
となりの201号室には、リルカやエルナが寝ているはずだ。
まぁ機密性は問題ないと言っていたし、冒険者ギルドに関して問題のあるような話が漏れるようなことはないだろう。
「それじゃカンダさん、膝が痛いのよね? 椅子に座ったら?」
「――ん? あ、ああ……そういえば、そうだったな……」
俺は、リムルに薦められて椅子に座った。
そして何故か知らないがリムルと言えば、俺の横に椅子を置くと肩が触れ合うくらいの距離で椅子に腰を下ろしていた。
近いからテーブルを挟んだ場所に移動してほしい。
身長差で、ブラジャーが無い世界ということもあり彼女の胸が上からバッチリと見えてしまう。
……そんな俺の視線に気がついたかどうかは知らないが、リムルが申し訳なさそうな顔で俺の顔を見上げてきた。
リムルという女性は、決して容姿は悪くない。
むしろ、綺麗系なお姉さんと言った感じだろう。
ただ、彼女は色々と問題を起こしていたし、それをギルドマスターの権限を持つ祖父がもみ消していた。
だから冒険者ギルドの同姓の女性からは嫌われていたし、男性からも嫌煙されていた。
そんな彼女が俺に始めて見せる表情は、どこか頼りなさを感じさせるものであった。
言うなれば庇護欲をそそられるような……。
「私、ずっとカンダさんのことが好きだったの……」
「ええ!?」
俺は思わず驚きの言葉が口に出ていた。
今まで俺に突っ掛かってきていた女が、俺の事を好きだと言った言葉が信じられなかった。
ただ、自分が思っていたことを、そのまま相手に強要するのは早計というものだからな。
「私、ずっと貴方のことを見てきたの」
「そ、そうか……」
なんとも言えないな。
それよりもクレミアという女性は、部屋に入ってきてからというもの何も話さずに立ったままなのだが、放置しておいていいのだろうか?
「クレミア、貴女のことは私からカンダさんへ伝えておくから別の部屋を取って休んでなさい」
「ワカリマシタ」
クレミアという女性が、頷くと部屋から出ていく。
俺は、どこか彼女が機械的な話し方をしているなと思いつつ「なあ、あの子は、大丈夫か?」と、リムルに確認する。
「えっとね……、彼女もカンダさんという素晴らしい男性を罠にかけた人たちの片棒を結果的に担いだから疲れているのよ」
「どういうことだ?」
「カンダさんが、膝を怪我したのはグローブという冒険者のせいだということは知っています」
「いや、別にグローブが悪いわけでは……」
「いいえ! 私は怒っているのです! 私が好きなカンダさんに怪我をさせたのですから……」
「そ、そうか……」
何というか、リムルぽくないというか何というか……。
こいつは、こんな女だったか? と思ってしまう。
「ええ――、ですが安心してください! 貴女を陥れようとしたグローブという男は、もうこの世には居ませんので!」
「それは、どういう……」
「彼は、主犯格が捕まったと同時に隣国へ逃げようとしたのです。そのときに魔物に襲われて死んだのです」
「死んだのか――、それで主犯格というのは?」
「はい! 主犯格はソフィアとリアという女性冒険者です。彼女達は、自分の利益のために嘘をついてカンダさんに擦り寄った最低の人だったのです!」
リムルの言葉に俺は、頭の中が真っ白になった。
まさか…・・・、あの二人がそんなことをするわけが……。
ショックのあまり椅子に座り込んでいると「カンダさん、ショックなのは分かります。私だって、貴方が傷つくのは見たくなかったのです。でも、隠しておくことは……」と、俺の服裾を掴むと涙を見せてきた。
どうやら、リムルの言っていることは本当のような気がしてくる。
「それで、ソフィアとリアは、どうしたんだ?」
「彼女達は、同じ冒険者を手に掛けようとした罪で奴隷落ちになりました。今頃は船で別大陸に……」
「そうか……」
こういう場合は、どうすればいいんだろうか――。
何とも言えない気持ちになってしまう。
「カンダさん、少しお休みになりませんか? ショックなのは分かりますから私でよければ……」
「お、おい!?」
放心しているとリムルが洋服を抜ぐと俺の手を取りベッドに押し倒してきた。
俺は、小さく言葉を口ずさむ。
もちろん、ある程度距離があることを確認して呟いている。
いくらなんでも、どうしようもなく救いようの無い身勝手な女というイメージしかないゴミでも、一応は女性であることに違いはない。
男には辛辣な俺であっても、女性に対してだけ表面上は紳士に対応することにしているのだ。
なにせ、陰で何を言われるか分かったものではないからな。
俺の内心を他所に、迷惑女リムルが目の前まで近寄ってくると、「カンダさん、申し訳ありません!」と頭を下げてきた。
いきなりの態度に俺は驚いた。
「魔王でも復活したのか? それとも邪神でも蘇ったのか?」
俺は生活魔法の一つである探索の魔法を発動させて周囲を警戒する。
これは由々しき事態だ!
冒険者になって10年、どんなことがあろうと頭を下げたことがないリムルが出会い頭に頭を下げてきた。
それは世界の終わりか天変地異の前触れに違いない!
「違います……、私、カンダさんに酷いことをしてしまって……」
「酷いこと?」
ますます頭の中が混乱してくる。
こいつが自分の非を認めてくるなんて、そんなことはありえない。
裏があるとしか思えない。
「はい。実は私も後から知ったのですが開拓村エルはかなり危険な場所だったらしいのです。開拓村の仕事を受けていた冒険者からの報告が遅かったこともあり、対応が遅れてしまって……」
「ふむ…・・・」
俺は顎に手を当てながら考える。
つまり、リムルが頭を下げてきたのはあくまでも自分の非ではなく冒険者ギルドがだめだったからという理由で謝罪を口にしたのだろう。
そうでなければ、この女が謝るわけがない。
口を開けば、「謝ったら負けだと思う」とか言う奴だからな……。
「あの、カンダさん――」
「何だ?」
「少し込み入った話もありますので、どこかに移動して話をしませんか?」
なるほど……。
つまり、冒険者ギルドの不祥事を人目がつく往来でするわけがいかないという訳か……。
冒険者ギルドも仕事をクライアントから委託してもらって居る訳だし、信用商売であると同時に信頼は商売をする上での担保みたいなものだからな。
「まぁ、いいが……」
「それでは、そこの宿でどうでしょうか!」
「いや、そこは……」
「何か不味いのですか?」
不味いというかラブホテルなんだが……。
まぁ、機密性というか声が外部に漏れないというか、そういう観点から見る分には問題ないと……思う……たぶん、きっと……。
「いや、ちょっと、そこはな……」
「分かっています! 男女が交わったりする場所ですよね? そのくらいは知っています。そこの宿は、港町カルーダが本店ですから。内密な話をするには打ってつけないんです。そうよね? クレミア」
リムルに話かけられた冒険者ギルドの新人の受付嬢は体をビクッ! と揺らすと上目遣いで俺の方へ視線を向けてくると「カンダ様、お願いします……リムル先輩の話を聞いてください」と涙声で訴えかけてきた。
「リムル……、お前は無理矢理と言わせているわけじゃないよな?」
「違います! リムル先輩は、悪くないのです。ただ、私の要領が悪くて……」
俺の言葉に必死な表情で両手を大きな胸の前で組んだまま、クレミアという女性は瞳に涙を貯めて俺に懇願してきた。
「はぁー……、それなら仕方ないな」
俺は溜息をつきながらリムルの提案を受け入れることにした。
さすがに、リムルはどうでもいいが、新人の女性には優しくしておいたほうがいいからな。
仕方なく、俺はリムルとクレミアという女性――美人というよりもかわいい系のロングヘアーの赤茶髪の女性を共だって、リルカやエルナと泊まった宿屋へと入る。
「一部屋借りたいのだけど? 機密性の高い部屋がいいわ」
「どのくらい宿泊される予定ですか?」
「そうね……」
リムルがカウンターの女性と話をしている途中に俺の方へと顔を向けてきた。
すると、俺の手に抱きついてくると「彼が満足するまででお願いできますか?」と、宿の女性話しかけていた。
そこで、ようやく俺の存在に気がついたのか、先ほど笑顔で対応してくれた女性は一瞬、驚いた表情を見せたあと、眉間に皺を寄せて俺を睨んできた。
どうして、俺が睨まれないといけないのか……。
借りたのはリムルなのに、酷い言いがかりだ。
鍵を借りたリムルは、俺の手を掴んだまま階段を上がっていく。
そして部屋に入ったところで腕を解いてくれた。
リムルは思ったよりも着痩せするらしく、おそらく俺が出会った中で一番、胸が大きい女性かも知れない。
「部屋番号は202号室か……」
「202号室が何かあるの?」
「いや、特には……」
まずいな……。
となりの201号室には、リルカやエルナが寝ているはずだ。
まぁ機密性は問題ないと言っていたし、冒険者ギルドに関して問題のあるような話が漏れるようなことはないだろう。
「それじゃカンダさん、膝が痛いのよね? 椅子に座ったら?」
「――ん? あ、ああ……そういえば、そうだったな……」
俺は、リムルに薦められて椅子に座った。
そして何故か知らないがリムルと言えば、俺の横に椅子を置くと肩が触れ合うくらいの距離で椅子に腰を下ろしていた。
近いからテーブルを挟んだ場所に移動してほしい。
身長差で、ブラジャーが無い世界ということもあり彼女の胸が上からバッチリと見えてしまう。
……そんな俺の視線に気がついたかどうかは知らないが、リムルが申し訳なさそうな顔で俺の顔を見上げてきた。
リムルという女性は、決して容姿は悪くない。
むしろ、綺麗系なお姉さんと言った感じだろう。
ただ、彼女は色々と問題を起こしていたし、それをギルドマスターの権限を持つ祖父がもみ消していた。
だから冒険者ギルドの同姓の女性からは嫌われていたし、男性からも嫌煙されていた。
そんな彼女が俺に始めて見せる表情は、どこか頼りなさを感じさせるものであった。
言うなれば庇護欲をそそられるような……。
「私、ずっとカンダさんのことが好きだったの……」
「ええ!?」
俺は思わず驚きの言葉が口に出ていた。
今まで俺に突っ掛かってきていた女が、俺の事を好きだと言った言葉が信じられなかった。
ただ、自分が思っていたことを、そのまま相手に強要するのは早計というものだからな。
「私、ずっと貴方のことを見てきたの」
「そ、そうか……」
なんとも言えないな。
それよりもクレミアという女性は、部屋に入ってきてからというもの何も話さずに立ったままなのだが、放置しておいていいのだろうか?
「クレミア、貴女のことは私からカンダさんへ伝えておくから別の部屋を取って休んでなさい」
「ワカリマシタ」
クレミアという女性が、頷くと部屋から出ていく。
俺は、どこか彼女が機械的な話し方をしているなと思いつつ「なあ、あの子は、大丈夫か?」と、リムルに確認する。
「えっとね……、彼女もカンダさんという素晴らしい男性を罠にかけた人たちの片棒を結果的に担いだから疲れているのよ」
「どういうことだ?」
「カンダさんが、膝を怪我したのはグローブという冒険者のせいだということは知っています」
「いや、別にグローブが悪いわけでは……」
「いいえ! 私は怒っているのです! 私が好きなカンダさんに怪我をさせたのですから……」
「そ、そうか……」
何というか、リムルぽくないというか何というか……。
こいつは、こんな女だったか? と思ってしまう。
「ええ――、ですが安心してください! 貴女を陥れようとしたグローブという男は、もうこの世には居ませんので!」
「それは、どういう……」
「彼は、主犯格が捕まったと同時に隣国へ逃げようとしたのです。そのときに魔物に襲われて死んだのです」
「死んだのか――、それで主犯格というのは?」
「はい! 主犯格はソフィアとリアという女性冒険者です。彼女達は、自分の利益のために嘘をついてカンダさんに擦り寄った最低の人だったのです!」
リムルの言葉に俺は、頭の中が真っ白になった。
まさか…・・・、あの二人がそんなことをするわけが……。
ショックのあまり椅子に座り込んでいると「カンダさん、ショックなのは分かります。私だって、貴方が傷つくのは見たくなかったのです。でも、隠しておくことは……」と、俺の服裾を掴むと涙を見せてきた。
どうやら、リムルの言っていることは本当のような気がしてくる。
「それで、ソフィアとリアは、どうしたんだ?」
「彼女達は、同じ冒険者を手に掛けようとした罪で奴隷落ちになりました。今頃は船で別大陸に……」
「そうか……」
こういう場合は、どうすればいいんだろうか――。
何とも言えない気持ちになってしまう。
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