【佳作受賞作品】おっさんの異世界建国記

なつめ猫

中年紳士エイジ




 日本刀を腰に差してから開拓村エルの北に生える木々のほうへと歩いていく。
 後ろからはリルカを先頭に山猫族の女性が5人ほどがついてくる。
そこには、狼族の女性たちの姿が見えない。
 彼女達は、どこに行ったのだろうか?

「リルカ」
「エイジさん、何でしょうか?」
 
 リルカが、わざわざ俺の名前を読んで近づいてくると、腕を組んできた。
 彼女の胸の谷間に腕が挟まれる。
 とてもやわらかく、ブラジャーという文化がないことから、豊かな双丘がダイレクトに俺の腕に伝わって、とてもすばらしい。
 ――だが! 少し、大胆ではないだろうか?
 俺は頭の片隅で、そう思いながらも最初に思ったことを口にすることした。

「狼族はどこへ行ったんだ?」
「水浴びに行かせました。かなりの塩を体に付着させてしまいましたので……」

 なるほど、多量の塩は肌の炎症を引き起こすからな。
 疑問の一つは解決したが、まだ最大の問題が残っている。
 それはリルカの胸の合間に、俺の右腕が挟まれていることだ。

 ほら、後ろについて来ていた山猫族の16歳前後の女性3人だけじゃなく10歳くらいの2人の幼女も、顔を 赤くしてこっちを見てきているじゃないか……。
 さすがに結婚前提の付き合いをしているとは言え、外でこういうのはよくないような気がするぞ?
 幼女もいるんだから教育上な……。
 ここは、きちんと言っておくべきだろう。
 この柔らかさから手を離すのは、正直もったいないが! もったいないが! 仕方ない! 我慢しよう……。
 
 ――俺の名は、神田栄治! 我慢ができる男だ。

「リルカ、ちょっと……」
「どうかしたのですか?」
「どうかしたというか……どうかしたんだというか……」
「何ですか? どうかしたのですか? どうかしたんですね?」

 リルカが、ニコリと微笑んでくると俺の手を掴むと、その胸に俺の手の平を当ててきた。
 ――くっ!? すごく柔らかい。
 これが……、男のロマン。
 夢が詰まっていると言う奴なのか?
 女性の胸には、男の夢が詰まっているとネットで見たことがあるが女性との経験が無い俺には理解が出来なかった。
 そして異世界に転移してきてからも気がつくことはなかった。
 つまり……フロンティアはここにあったんだ!

「いいんですよ? いっぱい揉んでも!」
「……なん……だと……!?」

 いっぱい揉んでもいい?
 それは、なんとすばらしい言葉なのだろうか?
 さすが異世界。
 さすが獣人と言ったところだろうか?
 だが……考えろ!
 リルカの後ろには幼女が2人もいるのだ。
 その幼女に、こんな爛れた関係を見せていいのだろうか?

「……」

 そこで、俺はハッ! と気がつく。
 リルカが、腕を胸の合間に挟んでくる理由に!
 昔、ネットで流行った言葉がある。
 それは、「わざとやっているのよ!」という迷言語だ。
 つまり、リルカはわざとやっているのだろう。
 そうだ! そうに違いない! エルナの話を聞く限り他の獣人も俺のことを狙っているような事を言っていたような気がするからな……。

「つまりそういうことか?」
「はい! そういうことです!」
「なるほど……」

 俺はリルカの胸を揉みしだきながら考える。
 つまり、これはリルカと俺は付き合っているというのを公然と教えるものなのあろう。
 ――と、いうことは揉むのは合法なわけであって何も問題な――、やっぱり問題あるな。

 俺は幼女たちの手前、体感的に3分ほど胸を揉んで止めた。
 ふう……、人生初の胸揉みであった。
 それは、とても素晴らしいものであった。
 きっと俺で無かったら自制心が飛んで大変なことだったろう。
 
 ――俺の名は、神田栄治! 自分の欲望を理性で抑制することが出来る立派な中年紳士だ。



 北の森に到着した俺は、生活魔法を使いながら刀で木々を伐採する。
 倒れた木々の枝を刀で払い、組み立て時に必要な分だけ簡単な加工を施していく。
 あとは、山猫族の獣人が加工した木材を運んでいくが、その時に「ちぇー、私も雄の居る空間で一緒に寝たかったのに」と呟いていたが聞こえないふりをしておいた。
 おそらく、雄がいないから俺みたいな男でも発情している獣人には毒なのだろう。
 どうやら、本当にエルナが言った言葉が信憑性を帯びてきたな。
 これは、早めのうちに男を何人か連れてこないと内部でゴタゴタが起きそうだ。

 今回、ログハウスを建築する指示はリルカが担当することになっていた。
 おかげで俺は伐採と加工に専念することが出来、さらには運び手も5人いる。
 さらには途中から、狼族も合流してきた。
 これは思ったよりも早くログハウスが出来るかもしれないな……。

 ――と思っていたら夕方前にはログハウスが一軒建築できていた。
 人海戦術というのは素晴らしいものだ。




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