虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

企業戦士 後篇



「弱っ、こいつクソ弱ぇ!」

 どうも、調子に乗ってPvPを挑んだ父でございます。

「ステータス1で、調子に乗ってるからこうなるんだよ!」

 まあ、分かり切っていた結果だ……いくら観客の目を引く武器を持っていようと、持ち主が全然強くないので、ガラクタ同然だ。

「……カハッ!」

「おらおらぁっ! さっさと死ねよ!」

 不良たちは気づいていないが、観客たちはさすがに違和感を覚えている──HPがまったく減っていないことに。
 蹴飛ばされてゴロゴロと地面を転がり、壁まで移動する……それでも減っていない。

「ハァ、ハァ……おい、死なねぇぞ!」

「どういうことだ、アイツは魔力と器用さ以外全部1だろ?」

「魔力系の防御スキルでも使ってんのか?」

 まあ、(魔力障壁)とかいうスキルがあればできるらしい。
 俺の場合はスキル習得もできないので、死いつまで経っても普通の手段では獲得できないんだけどな。

「──さて、そろそろいいでしょうか?」

 そのことに気づき始めたところで、まるで今まで実力を隠していたかのような演技を行い、彼らに武器を向ける。
 ブォンッ、と音がなる光の柱──柄から先は粒子で構成された刃でできていた。

「私には魔力と器用ささえあれば、勝つことができるんですよ。この──『光粒剣』さえあればね」

 イメージはもちろん、ライトなセイバー。
 ブンブンと振り回すたびに、不良たちに恐怖の顔が見え隠れする。

「引き立て役、ご苦労様でした。少々準備に時間がかかりましたので──まず一人」

『ハアッ!?』

 結界で肉体を無理やり動かし、超高速で不良の一人に接触し──切断する。
 速さも力も要らない、ただ的確に斬るための器用ささえあればそれは可能だ。

「チ、チートだろ! ステータスが1のくせに、そんなことできるわけないだろぉ!」

「チート……ズルをして手に入れたと? あながち間違っていないかもしれませんが、すべてはシステムが認めたものですよ。私でなくとも、ここにいる皆さまが手に入れられる可能性を秘めています」

 委託販売で売る予定でおりますので。
 あとで劣化版、『光粒剣』を堂々と販売するのもいいかもな。

「……もういいですか? 貴方がたを倒さなければ、ここを出られませんので」

「ま、参った! だから、降参を……ッ!」

「おやおや、降参できないみたいですね」

「う、腕がぁ!」

 降参で終わると味気ないので、これまた新商品──『光粒銃』を撃って手首を飛ばす。
 いちおう、銃の販売はこの街でもすでにされているので、安心して販売できる。

「新作商品の紹介といきましょうか……安心してください、この世界では死にません」

『ヒィッ!!』

「か弱い女性を傷つけようとした罪……その身を以って味わってください」

 彼らの心が完全に折れた時……俺の勝利を告げるアナウンスが響き渡った。


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